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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第13章 同じ死体を見ている

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管理されたはずのもの

宝珠の管理は、即日で始まった。


蒼衡そうこう名義。

世界機関の承認付き。


流通経路の洗い出し。

登録番号の照合。

回収対象の指定。


「遅いくらいだな」


セイン=ヴァルクスは、端末を操作しながら言った。


机上には、宝珠の一覧。

正規流通品。

回収済み。

封印済み。


――そのはずだった。


「……おかしい」


蒼衡そうこうの分析官が、声を落とす。


「回収番号、

一致しています」


「でも……」


「同一番号の宝珠が、

別地点で反応しています」


空気が、一段冷えた。


「複製か?」


「いえ」


首を振る。


「構造解析、完全一致」

「魔力指紋も同一」


「物理的に――

同じ個体です」


ガラン=ディオルが、腕を組む。


「回収した宝珠が、

勝手に歩いたってか?」


「……ありえません」


分析官の声が、震える。


「封印は破られていない」

「輸送記録も正常」


「でも――

“存在”だけが、

移動しています」


セインは、画面を睨んだ。


管理。

統制。

秩序。


どれも、前提が崩れる。


「……蒼衡そうこうの管轄外だな」


低く、言う。


その場にいた誰もが、同じ結論に至っていた。


人間のミスではない。


「《非裁定ノーリトリート》を呼べ」


セインの判断は、早かった。


少し後。


倉庫区画の臨時詰所に、

レインたちが現れる。


「管理、

始めたんだね」


レインの声は、静かだ。


「遅すぎるくらいだ」


セインは即答した。


「だが――

管理しても、

戻ってくる」


端末を、示す。


同一番号。

同一宝珠。

同時刻に、別地点。


レインは、画面を見た瞬間、眉をひそめた。


残命観測リミット・ヴィジョン》が、

微かに反応する。


寿命ではない。

因果の“向き”。


「……これ」


一拍、置く。


「移動じゃない」


「再配置だ」


セインが、目を細める。


「説明しろ」


「宝珠は、

物じゃない」


レインは、言葉を選ぶ。


「“契約点”だ」


「使われる場所に、

現れる」


「回収しても――

“必要とされる側”に、

引き寄せられる」


ガランが、低く笑った。


「最悪だな」


「管理すればするほど、

向こうの思う通りだ」


セインは、沈黙した。


そして、はっきりと言う。


「……人間の手では、

ないな」


レインは、頷いた。


「うん」


「しっぽは――

掴めそうだ」


倉庫の奥で、

回収済みの宝珠が、

淡く光った。


封印は、

確かに完璧だ。


それでも。


“誰か”が、

そこに触れている。


罠は、露骨だった。


回収済み宝珠の一部を、

あえて“必要とされやすい場所”に配置する。


治安が不安定。

願いが溜まりやすい。

しかし――

被害が出る前に押さえ込める地点。


蒼衡そうこうの判断は、速い。


「監視は二重」

「封印は三重」

「移送記録は即時共有」


「“動いた瞬間”を、

掴む」


セイン=ヴァルクスの指示に、

部隊が散る。


一方で。


非裁定ノーリトリート》は、

別の角度から同じ地点を見ていた。


「……来る」


レインが言う。


根拠は、ない。

だが――

残命観測リミット・ヴィジョン》が、

寿命ではない“歪み”を捉えている。


「宝珠は、

呼ばれてる」


「使われたい、

じゃない」


「“必要とされたい”」


リュカが、

地図を指す。


「需要の山が、

ここにできてる」


「数字じゃない」

「感情だ」


ミリアが、

一歩前に出る。


「……来るなら、

正面じゃない」


「横でも、

裏でもない」


「“間”だ」


その通りだった。


監視映像に、

異変はない。


封印は、

破られていない。


それでも――

宝珠の反応値が、

一瞬だけ跳ねた。


「今だ!」


蒼衡そうこうの部隊が、

一斉に動く。


だが――

そこには、誰もいない。


宝珠は、

元の位置にある。


完全だ。


「……違う」


レインが、

低く言う。


「“触った”んじゃない」


「“向きを変えた”」


空気が、

歪む。


誰かが、

笑った気配がした。


映像にも、

音声にも残らない。


ただ――

宝珠の反応ログに、

一行だけ増えた。


《接続確認:成功》


セインが、

歯を噛みしめる。


「……いるな」


「だが、

捕まえられん」


レインは、

静かに頷いた。


「うん」


「でも――

しっぽは見えた」


非裁定ノーリトリート》の全員が、

同じ感覚を共有する。


人間ではない。

宝珠でもない。


“必要”を餌に、

世界に触る何か。


その夜。


別の街で、

宝珠が“自発的に”出現した。


登録番号は、

回収済みのものと一致している。


蒼衡そうこうの罠は、

確かに踏まれた。


だが――

獲物は、まだ網の外だ。


現れたのは、

人だった。


少なくとも――

見た目は。


フードを被り、

背は低く、

動きに無駄がない。


露店の片付けを手伝う、

どこにでもいそうな男。


だが――

その足取りが、

一歩だけ“ずれて”いた。


「……あれだ」


ミリアが、

息だけで言う。


レインは、

目を細めた。


残命観測リミット・ヴィジョン》が、

寿命ではない部分に反応する。


存在の“重み”が、

違う。


宝珠の反応値が、

男の周囲で安定している。


揺れない。

跳ねない。


まるで――

管理しているかのように。


「人間じゃない」


リュカが、

断定する。


「でも、

魔族にしては……薄い」


「中間だな」


エルドが、

短く言う。


男は、

宝珠に触れない。


触れなくても、

“向き”だけを変えている。


次に使われる場所。

次に願われる人間。


淡々と。

事務的に。


「……やっぱり、

商売だ」


レインが、

低く呟く。


その瞬間。


男が、

こちらを見た。


視線が、

合う。


ほんの一瞬――

瞳の奥が、

縦に裂けた。


笑う。


「……気づかれましたか」


声は、

柔らかい。


「流石ですね」


蒼衡そうこうの部隊が、

一斉に踏み込む。


包囲。

拘束術式。


だが――

男は、逃げない。


「捕まる気は、

ないんです」


「でも――

証拠は、

残しましょう」


指を鳴らす。


宝珠が、

一斉に光る。


だが――

暴走はしない。


代わりに、

“接続経路”だけが露出する。


世界と、

どこか別の層。


「……なるほど」


セイン=ヴァルクスが、

低く言う。


「供給源は、

一つじゃない」


男は、

満足そうに頷く。


「ええ」


「需要がある限り、

供給は続く」


「それが――

人間社会でしょう?」


レインは、

一歩前に出た。


「名前は?」


男は、

首を振る。


「まだ、

名乗る段階じゃありません」


「私はただの――

仲介です」


その身体が、

揺らぐ。


輪郭が、

一瞬だけ“別の形”になる。


角でも、

翼でもない。


“人間ではあり得ない位相”。


「次は」


男の声が、

遠くなる。


「もっと、

分かりやすくなりますよ」


「知っていて使う願いは、

味がいい」


次の瞬間。


男は、

消えた。


術式は、

完全に残っている。


逃走ではない。

離脱だ。


沈黙。


蒼衡そうこうの兵が、

ゆっくり息を吐く。


「……魔族だな」


セインの声は、

確信に満ちていた。


「うん」


レインは、

頷く。


「しかも――

本命じゃない」


宝珠の光が、

徐々に収まる。


だが、

“道”は見えた。


細い。

だが、確実な――

しっぽだ。


非裁定ノーリトリート》は、

その場に立つ。


ここから先は、

もう“事故”じゃない。


狩りだ。


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