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マリアが知る中でも見るのは二回目の構え、腰の位置に柄をもっていき刀身を体を割るように中心に真っ直ぐ立てる。一見この構えはなんの変哲もなく見えるが過去一度だけ戦った男に惨敗をしていた。


その男は単純に速かった。剣速もそうだが体の使い方も見た事のないような動きで奇妙な形の剣を操り化け物のような男だった、それを思いだしたのかマリアは笑って先手を奪う。



「不用意だぞ隊長殿!!」



間合いに入った瞬間に切っ先だけ叩きつけるように最小限の動きでの一撃を放つ。それは剣道の面そのままの動きでマリアには対応できないと思っていたが現実は違う。


ニノの最速に近い攻撃を木刀で待ってましたと言わんばかりに弾き腰の回転をつけた一撃を腹に叩きつける。言葉と呼吸が止まり後退していくとマリアの猛攻は波のように押し寄せてきた。



「やはりまだまだ技術が足りないですねニノさん」



「グッ――ッ!! 私が技術で劣っているだと」



今までの学園生活では敵なしで通ってきたニノには屈辱的な言葉だった。ハンクには敗北したが、マリア相手ならと心のどこかで思ってた部分があり怒りが込み上げてくるが……その怒りすら覚ますような実力差だった。


マリアの一撃は重く受けると手が痺れ、もらい続けると感覚が遠のいていく。頭を一度冷やして距離を開けようとするが許してはくれない。上下左右から連続で叩きつけられ防御しか出来ない。



「ぬぅううがぁあああああ!!」



そんな状況を打開したのが蹴り。脚を蹴り上げて爪先に乗せていた砂をマリアの顔面に浴びせると動きが止まり隙が生まれ返しの一撃が見事に通り立ち場が逆転する。


ここで勢いに乗りいきたいが先程の猛攻のダメージがまだ手首から抜けず体が本能的に止まってしまう。



「驚きました。こんな技があったなんて」



「ぬははは!! 見たか!! 私もテツにやられ苦戦した技よ」



「……なるほど、あの汚い雄豚の入れ知恵ですか。ニノさん少々本気出しますよ」



木刀を逆手に持ち変えて横からの一撃をニノは冷静に受け止め反撃に転じた瞬間……受け止めたマリアの木刀は消え肩に叩きつけられていた。防具も着けずまともにくらい膝をついてしまうが即座に間合いを開ける。


感触でわかってしまう。腕一本が使い物にならなくなった。


腕が糸が切れたようにフラフラと垂れ体のバランスがおかしくなっていく。立っているのも難しい状態でニノは一度止まり追撃をしてこないマリアを睨む。



「やってくれたなぁ隊長殿~なんだ今のは驚いたぞ」



「ニノさん、貴女は父親に遠く及びません。剣を交えて確認できました。化け物の子もまだまだ成長途中ですか」



「どうりでこちらの剣術が通用しないと思ったら……今の言葉吐いた事を後悔させてやる!!」



二人の木刀は混じり合い木製の乾いた音が中庭に響く。

















ようやく立ち上がれるまで回復したフェルを座らせ背中をさするエリオとテツがマリアの動きを見ていると周辺には騎士達が集まってくる。腕を組みニヤニヤしながら三人を見下ろしてきた。



「よう新人、お前ら噂になってんだぜ。若手の隊長に新人とおっさんってのがな」



「いやぁそりゃ光栄だな。俺はテツってんだよろしく」



手を差し出し握手をすると騎士は拍子抜けしテツの人なつっこさに驚く。



「聞きたいんですがマリア隊長って騎士団の中じゃ強い方なんすか」



「ん~まぁ強いんじゃねぇか、歳は隊長にしては若いが昔からいろいろやってたらしいからな」



「あ、俺エリオって言います先輩。これからよろしくっす」



エリオも明るく挨拶すると騎士は木の水筒を渡し水分補給をさせる。最初に口にしたエリオは大きく息をつき脚を一度叩き「美味い!」次のテツも大きく息をつき「はぁ~」となんともおっさん臭い仕草だがフェルだけは手をつけない。



「そっちの小さいのはよほど悔しいんだなハハ」



「……うるさぃです」



何人かの先輩騎士達に囲まれテツとエリオは楽しげに会話する中フェルだけはマリアの動きを一つも見逃さないように観察していると言われた事がよくわかる。単純に実力差がありすぎる……おそらくマリアの強さは才能ではなく詰み重ねてきた努力によるものだろう。



「あ」



危ないと声に出しかけた時にはニノの顔は自分と同じように跳ね上げられ地面に倒れていく。少し息を切らせマリアが歩いてくるとフェルはむくれた顔で下を向き悔しさを隠す。



「今日は解散です、各自体を休めてください」



学園騎士から強いから騎士団に入れと言われた四人は初日で敗北。テツは異世界の現実を知りエリオは鍛え直すと誓い……フェルとニノは屈辱的な敗北を噛み締める日となった。









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