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剣術を始めもう七年になろう少女フェルは小さく呼吸し構えるとマリアを澄んだ瞳で睨む。回りからは天才と言われ実際フェルを驚かす敵はテツとニノぐらいだった。


目の前のマリアはどうにも頼りないイメージだったが先程のテツとの戦闘で認識を変え、木刀の切っ先を地面につけゆっくりと間合いを詰めていき……爪先に力を込めて地面を蹴る。



「甘いです」



地面から跳ね上がった木刀はマリアの顔を通過。空を切る、見事な空振り。剣術を始めてからここまで空振りした事のないフェルは止まってしまい現実から目を背けたくなった。



「グッ――ギャ!!」



初めて出す悲鳴が耳に届くと脇腹を打ち抜かれフェルの小さな体は横に流されていく。なんとか片足を踏ん張り倒れる事を回避できた瞬間には二発目でフェルの顔から血が吹き出る。


容赦のない横殴りのマリアの一撃はフェルの頬に叩きつけられ倒れてしまう。


口の中に砂を入れて咳き込むように出すとフェルは考える。一撃目は完全に見切られた……足りない。速さが圧倒的に足りない。



「復讐するらしいですねフェルさん」



「マリア隊長。それが何か」



「貴女は最初私みたいな学園でドジな先生には負けない。そう思っていたんでしょ? そんな私に負けてて復讐出来るんですか」



頭の中で何かが切れる音がするとフェルは飛び出す。それがマリアがわざと仕掛けた挑発と知っても許すわけにはいかない。


復讐のために剣を握り。

復讐のために血を汗を流し積み重ねてきて。

復讐のために殺してきた。


その復讐を軽々口にし薄笑いで言うマリアの顔面めがけ木刀を振り抜く……しかし聞こえるのは空しい空振り音。その数秒後にはフェルの悲鳴が響く。



「フェルさん、貴女剣術を何年してますか? 私は二十年以上。この意味わかりますか? 貴女が生まれる前から私は戦ってるんですよ」



「だから……なんだぁああああああああ!!」



テツもエリオもニノも驚いてしまう。今まで表情や感情に貧しかったフェルが醜いほどの顔を歪めマリアに襲いかかるが、闘牛士のように避けて冷酷に打ち抜く。


全体重を乗せた突きは軽々マリアに避けられ、大きく振り被った振り下ろしの一撃がフェルの無褒美の背中に切って落とされ悲鳴すら出なくなり呼吸が止まってしまう。



「やれやれフェルさん、感情が表に出しすぎですよ。まぁ普通にしても私には勝てないですけどね」



嫌味たらしく片手をヒラヒラと振りながら言った後にフェルの小さな体めがけ木刀を振ると……フェルは宙に投げ出されてしまう。地面につくと転がり全身砂まみれでニノの足元につく。



「隊長殿。いささかやりすぎではないのか」



「これが戦場なら死んでますよ。私が隊長になったからには誰も死なせはしません。そのためにはこうした厳しさも必要です」



「ならば仮にここで隊長殿が死んでも恨みっこ無しでお願いするぞ」



呼吸が苦しい中フェルはニノの脚を掴み一言だけ言い残す。表情には悔しさがまだ出てて痛みのせいか目尻に涙まで浮かべ涎だらけの口を動かす。



「カッ……あの糞隊長の……顔……を叩きわってくだ……さい」



「任せろ」





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