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「こら押すな!!」

「貴女の体無駄に大きいんです!!」



黒と銀の頭が数回ぶつかり揺れていると背中を押されたように二人の体は出てしまい、テツとエリオの前で派手に転んでしまう。たった数日会えなかっただけなのにテツは二人を見ると嬉しくなり声を出さそうとすると、それより先に二人が口を開く。



「なんだ元気そうじゃないかテツ。フェルなど小動物のように震えて心配して――オブッ!!」



「ホホホこの脳ミソが足りてない女が誤解を招く――アブァ!!」



照れ隠しか二人はテツの動きを見習い互いの顔を殴ると空気が変わり、ニノは首をコキコキ鳴らしフェルは指をバキバキ鳴らせて正面に立つ。いつの間にか仲良くなった二人を見てテツ笑顔になりようやく言葉を出した。



「久しぶりってのも変だが、少し見ない間にお前ら仲良しだな~おじさん嬉しいぞ」



「ほれどうした没落貴族。自慢の剣がないのに強気とは珍しいな」

「いつか貴女のその自信満々の顔を絶望に染めてみたいと思ってました」



「……ハハ。おい可愛い女の子二人が久々の再開だが、照れるのが恥ずかしいんで隠した結果どうして殴り合いになるんだ。おいわかったから振り上げてる拳を下ろせ」



二人の拳を掴みあげ無理矢理座らせるとフェルがどうにも気まづい顔をしている事に気づく、記憶の中を探るとある事を思い出し手を叩く。エリオは欠伸をしながら胡座をかいているがフェルの前で無理に緊張を隠しているのが見てわかる。



「あぁフェル、お前とは少し喧嘩してたんだよな。悪かったな」



「え!! そうでしたっけ? あぁ私は海より深い心なんで忘れました。まぁ許してあげますテツさん」



「そそそうかフェル、お前結構気にしてたろ。授業中とか爪噛んでたまに髪をかきむしり」

「黙ってくださいエリオ」



感情はなくブリザードのような冷たい一言でエリオを凍りつかせ乱れた髪を整えテツに二コリと笑いかける。どうにもテツにはエリオが不憫に見えてしまう。初恋の男子が頑張る姿は応援したくなるのは歳のせいだろうか? と考えていると屋上の扉が再び開かれた。



「ここにいました学園長」



「お~揃ってるな丁度いい。お前らは無事このベルカ騎士学園を卒業だ」



現れたのはマリアと学園長だが、いきなりの言葉に四人は呆然とする。まだ学園に通って一年も立っていないというのに卒業……この世界の教育システムを疑ってるテツを尻目に学園長の言葉が続いていく。



「お前達はもう騎士学園などの収まる強さじゃない。今のベルカ軍は有能な人間を遊ばせる余裕などない。おめでとう諸君!! 今この瞬間君達は正式にベルカ騎士団への入隊が許可された」



「この書類にサインしてください」



マリアから渡された書類を見ると何箇所かサインをする項目があり、四人が座りながら混乱しているとエリオが一人手を上げて喋り出す。



「あの~こいつらが強いのはわかるんですが、俺なんかまだまだのはずでは」



「エリオお前はおまけだ。一応は部隊で動いてもうから人数合わせだ。しかし出世のチャンスだぞ、どうする?」



迷うまでもない選択肢。このまま学園生活の後に正式に騎士団入団待つより少しでも早く入団出来るなら願ってもない機会だった。学園長に無言で頷き腕が震えてしまう。とうとう魔王軍との戦いに本格的に参加できる事に期待と恐怖で鳥肌が浮かぶ。



「お前らは部隊に所属してもらうんだが、当然隊長ってのが必要なわけだ……おめでとう諸君!! 貴様達ヒヨッ子を叩き直してくれる隊長殿は何を隠そうマリア先生だ!!」



「ええええええええええええええ!! 学園長!!」



「マリア先生は騎士団員だがどうにも日が浅く経験不足。この機会に隊長役をやらせ経験を重ねお前らも育成する計画だ」




学園長に向かいマリアが両手をブンブンと振り回し抗議する光景を見ながら、テツはいきなり言い渡された事実をまだ整理できずに開いた口が閉じれない。


夢見た学園生活は終わり、これから生きている限り何百と命を奪うであろう戦いに身を投げ込む事になった。





――テツ三十三歳。最終学歴中卒。ろくに勉強もしなく人生の半分以上を放置し絶望していた……しかし変わる。強制的に変えられてしまう。


もし履歴書を書くならば今までとは違い特技の欄に一つだけ書く事が出来た。【殺人】と。



生き残る道は……殺すしかない――

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