六
横一閃の振り抜かれた一太刀は前方の騎士数人に腹を裂き装着していた鎧も斬られていた。振り抜いたユウヤは斬った感触がない、巨大な野太刀のはずだが小枝を振るように軽く水でも斬ってるように重みがない。
人間の体と鋼鉄の鎧を両断した感覚はなく驚いていると次の騎士が襲いかかってくるが、ユウヤは呼吸をするように野太刀を操り間合いに入った瞬間に斬って捨てていく。津波のように押し寄せる騎士達の勢いを一振りで止め恐怖を伝染させていく。
「ヒヒヒッヒ!! 旦那ぁ~さすがですわ!! 刃物はやはりこう使わないといけねぇ」
「化け物刀だな。お前の名は何にしようか悩むな」
薙ぎ払い、突き、振り下ろしとユウヤが振り抜くたびに騎士達は倒れていく。防御不可……重装甲の鎧もバターのように切られ簡単に貫通し中身の肉が切り裂かれる。騎士達が扱う剣と野太刀では間合いの広さが違い圧倒的に先手を奪える上に見た事のない武器に騎士達に迷いが生まれる。
「オォオオオオオオオ!!」
怒涛の叫びが響くと騎士数人が空中に放り出され周辺にいた騎士も吹き飛ぶ。技術より力で圧倒する黒騎士ハンクが戦斧で暴れ回りながらユウヤにようやく追い付いてきた。
「城門はこの先だが、さすがに守りが堅いな」
「お前のその馬鹿でかい武器はこーゆ時のためだろ。ん? おいイリアどうした」
少しくらい離れていてもイリアの巨大な魔剣ですぐわかる。天高く上げられていた魔剣が見え叩き落とされると地面が揺れ騎士達の悲鳴と叫び声が響いていく。風が吹くように重装備の白銀騎士が飛び雨のように血が降ってくる。
「ハハッハッハ!! どうした少しは骨のある奴はいないか!! 私はアベンジの頭イリアだ、大将首が自ら出てきてやったぞ」
「イリア!! 遊んでないで……おいイリア!!」
突然イリアの体が弾け飛ぶように空に上がり空中で何回も跳ね上げられていく。最後には見えないハンマーで叩き落とされたように地面に叩き落とされ隙を突くように騎士達が群がっていく。
「魔法か!! おいハンクなんだありゃ!!」
「いちいちこちらがわかる魔法なんて使ってくるか……あそこか」
離れた丘の上で杖をかざしてる魔導師を見つけるとハンクは地面に手をつけて散らばっていた血液を集め出す。やがては血液は無数の刃になり丘の魔導師に襲いかかり一人の胸を貫く。
「おいイリアなに寝てんだよ!!」
群がる騎士達の剣がイリアの背中に突きたてられた瞬間に地面が爆発するように弾け、気分よく戦っていた所を邪魔されたイリアが起き上がり魔剣を存分に振り回す。人間の手足が飛び交い全てイリアが生み出した竜巻のような攻撃の中で騎士達が巻き込まれていく。
「遠くからとは情けない奴め。終わりだ」
血液の刃を操り開いていた手を握り潰すと最後の魔導師が悲鳴を上げて全身から血を吹き出し倒れていく。
「おいスゲーなハンク。相手の血も操れるのかよ」
「相手が長時間無能のように止まっていたらな。こちらも不可がかかるから使いたくないものだ」
「恐ろしい魔法だな……おぉおおい!! イリアぁああああ!!」
まだ怒りが冷めないイリアは不満そうだがようやくユウヤと合流すると、周辺の騎士はすり潰されてるか体の一部を失い泣き喚いてるかと地獄絵図になっている。情けかハンクが死に切れない騎士に止めを刺していた。
「城門までの道は開いたぞ。ハンクいけるな、イリア傷の具合はどうだ」
「あんなもの傷の内に入らん!! ハンクいくぞ」
「うむ、ではベルカ落としと行くか」
三人が一気に城門まで走り出し近付くにつれ邪魔者が現れるが物の数に入らない。視界に入った瞬間にイリアが真っ先に叩き潰し痛みの悲鳴も上げる間もなく人間の形が壊されていく。
城門に着くと天を突くようにそびえ立ち鋼鉄の扉が出迎える。ユウヤが手を出す前にイリアとハンクが同時に武器で叩き割ろうとするが跳ね返させれてしまう。
「ぬ、腕が痺れた」
「む、固いな」
「鉄に鉄をぶつけれれば大きな方が勝つんだよ……さて化け物刀。こいつは斬れるかい」
一振り目で城門に縦の線が入り二振り目で横の線。亀裂ではなくただの線が入り野太刀の凄まじい切れ味を表していた。踊るように何振りもしていくと城門が崩壊の悲鳴を上げていき一気に崩れてしまう。
「ヒヒヒッ旦那ぁ~形ある物ならなんでも斬れる。この言葉に嘘はありませんぜ」
「ぬ、ユウヤの武器は凄いな。今度貸してくれ」
「あぁベルカ落としてからな。行くぞ!!」