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脚の傷が塞がり前髪が少し目に届くくらいまで伸びた頃にユウヤは青空の下で大きく深呼吸していた。こんなにも晴れやかな気分も珍しく空気を腹いっぱいに吸い込み後ろ髪を纏める。肩まで伸びた後ろ髪を一くくりし野太刀を掴む。


通常の刀より遥かに長い野太刀の扱いには苦労したがなんとか形になりお喋りな相棒も御機嫌。江戸時代のような喋り方の野太刀は自ら斬れぬ物無しというだけあって、試す物全て両断する化け物刀であった。



「ぬ、この糞暑いのにお前は相変わらず黒ずくめだな」



胴体、下半身、腕と軽装の鎧をつけ現れたイリアは黒を馬鹿にしながらも自信の装備も黒ずくめだった。二人が並んでいるともう一人黒い大男が現れいつもの三人が揃う。



「む、ウィルに依頼して作ってもらったが黒いのはあいつの趣味か」



「あの爺さん黒はカッコいいと思ってんじゃねぇか」



「ぬ、しかし本当に大きいな。それで動けるのか」



胴体もそうだが腕や腰回りの装甲も分厚く兜は円形の目元だけ空いてる単純な作りなっていた。ハンク以外扱えそうにない超重量装備にイリアが軽く叩くと音を吸収していき分厚い装甲に驚く。



「さぁ~てイリア、ハンク。ここまで連れてきたお前たちに感謝するぞ」



遠くに城が見える風景にユウヤは震え、これから始まる戦いに歓喜の鳥肌を浮かばせると三人の後ろから声が響く。振り向くとそこには見渡す限りの傭兵軍団が規則正しく整列していた。



「あぁ~お前ら、俺はユウヤに負けたが頭を続けろって命令されたわ。まぁんな事どうでもいいか……準備はいいか糞野郎共」



ルドルフの言葉の後には総勢何人いるかわからないほどの傭兵達が武器で地面を叩き返事をする。地響きのように音が響くとイリアは耳を塞ぐがユウヤは心躍らせ遠足前の子供のように興奮していく。



「何百年という時間ベルカは世界を支配しつづけたが~いい加減引退してもいいと思うわけよ。いいか負ければ歴史に大馬鹿者と刻まれるが、勝てば歴史を作るのは俺達になる」



装備も人種もバラバラだが傭兵達は一つの目標に向かい心を一つにし長であるルドルフの言葉に身を任せる。一度は負けたが長としてはルドルフの方がユウヤより数枚上手で丁度いい。自分は誰かの上に立つなど向いておらず好き勝手動くのがいいとユウヤは決めた。



「さて諸君。ここ数百年でこんな馬鹿をやってのけるお前らに戦いという餌を与えよう……見ろ、餌が出てきたぞ」



遙か前方に砂煙が上がるとベルカの象徴でもある白銀の鎧の騎士達が出てくる。遠目からでもわかるがベルカの数も見る限り数えるのもアホらしく思えた。



「作戦はねぇ、頭が悪いお前らには丁度いいだろ。ただ敵を食らい尽くせ!! いいか勝った方が支配者だ!! 負けたら犬の餌だ!!」



ルドルフが大きく剣を天に掲げると傭兵達の雄たけびが響き地震のように空気が揺れていく。演説が終わるとユウヤに近づき言葉を出す。



「ユウヤ俺を殺さなかった事を後悔させてやる。だから死ぬんじゃねぇぞ」



「俺はベルカ内部に行き竜とやらを殺してくる。ハンク、イリアを連れて存分に荒らしてくるから……あ~まぁルドルフ悔しかった生き残って俺を殺しにこい」



「ふん腹の立つ野郎だが腕も立ち更に気にくわねぇ奴だ。しかし感謝もしてる。こんな大馬鹿に誘ってくれた事を……さて行くか!!」




ベルカ軍の騎士達も動き出し突撃をしてくる光景に我先にとユウヤが走り出すとイリア、ハンクも引っ張られるように行く。その後ろで傭兵達が雄しい叫び声を上げて入る――作戦も何もなく単純な力押し。世界最強とまで言われたベルカに傭兵達が挑む。


引き分けなどありはしない。どちらが滅びるまで終わらない戦いは始まり、その中でユウヤは存分に自らの力で暴れ最強という幻想に追い付くように走っていく。



「フハハハハ!! 一番殺しは私だぁああああああ!!」



「む、待て。さすがにこの装備だとついていくだけで」



「遅いぞハンク!! なぁユウヤ……あぁもう殺してるのか!!」



ベルカ手前五百メートルの平原はやがて色を変えていき、地面を鮮血に染め上げていく。






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