三
ルドルフを締め落とした瞬間に傭兵達は言葉を失い誰もが現実から目を背けていた。長年無敗と言われその強さを見せつけてきた長が見た事もない戦い方で意識を失い倒れていく。
集中力を使い果たしたユウヤはその場に座り込んだが武器は離さず警戒した。ルドルフが何といおうが世界一とまで言われた傭兵部隊の長を倒したからには部下達が黙っているわけがない、そんな当たり前の事を考えていると一人の傭兵が手を叩く。
一人の拍手は次第に広がりその場にいた傭兵達が拍手や口笛を鳴らし勝利を飾っていく。人殺しで食っている連中だが筋を通す気のいい奴ら――そんな単純ではないが、そんな気がしユウヤは「あぁ~疲れた」と大の字に寝た。
「傷の具合はどうだ。治ったか」
傭兵の村から少し離れた平原でユウヤは星空を眺めていた。元いた世界では見る事の出来ない息を飲むような眩しい星空に魅了されていると上下青のアベンジの服のイリアが少し顔を赤くしながら肩を叩いてくる。
「俺は生身の人間だから治るまで時間かかんだよ。酒が入ってるなイリア」
「ぬ、ルドルフと飲み比べをしててな。あそこまで完全に負けると逆に爽快だと笑っていたぞ」
「あのおっさん腹と胸斬られたのに酒なんて飲んでのか!!」
なんとなくユウヤの隣に座るとイリアは二ヘラと子供のように笑い、よほど今日のユウヤが気に入ったのか両手をバタバタさせて質問攻めをすると子供をなだめるようにユウヤは答えていく。
しばらく口を動かしっぱなしのイリアが一息つくと懐から出されたビンをユウヤから受け取り喉を潤す。イリアは生まれてから他人に興味に持つなど強さ以外なかったがユウヤは違う。
知らない技しか使わなく自分達が積みあげた技術を一切使わずして強い。そしてそんなに強いのに傲慢にはならずいつもアベンジの頭である自分の一歩後ろに下がるユウヤにおかしな感情が芽生え始めていた事にイリアは気づく。
「私はベルカの奴隷の出身でな、私以外の家族は死んだ」
「おいおい俺にそんな事話してどうすんだぁ? 俺は大量殺人してきたろくでなしだぞ」
「それを言うなら私だって負けてないぞ!! お前の何倍も屍に変えてきたぞ!!」
ユウヤは殺しは数ではなく質だと言い、イリアはそんなの負け犬の遠吠えといい子供のような口喧嘩が始まり最後には熱くなったユウヤが傷口の痛みの声で中断された。
「フフ馬鹿め私の勝ちだな!!」
「この~~っ!! はぁ……何してんだが俺は、生まれて武術を学んだがいいが社会に出てみるとそんな物に価値はなく落ちこぼれ、気づけば裏稼業で生計を立てて、今では異世界にまで来て怪力女と口喧嘩……はぁ」
「誰が怪力女だ!! 私も女なんだぞ、その……女らしく扱え」
「ハハハ無理だ……わぁああああああ!!」
首根っこを掴まれ体ごと持ち上げられイリアが上目使いで照れた表情しながら文句を言うが行動が可愛くなく、ユウヤはじたばたするが怪力の前では無力でイリアの気のすむまで地面から離れていく。
「つまり何が言いたいかっていうとだな!! お前には私の復讐を手伝わせる事になってだな~……そのユウヤお前はそれでいいのか」
「うぇ~ガハッ!! ささっと言えってんだよ!! いいかイリア俺は好きで戦ってんだ、お前の復讐とかそんなもんはどうでもいいんだよ!! まぁ乗りかけた船だ、お前一人くらい守ってやらんでもない」
「そそそうか!! まままぁお前がそこまで言うならば守らせてたろうじゃないハハハッ」
やけにモジモジと照れるイリアに嫌な予感がしユウヤは思い切って聞いてみる。恋愛経験はそこまで多い方でもなく聞きにくいが戦友のために確認しとかないといけない事実を。
「あのよ勘違いだったらスゲェ恥ずかしいんだが~……そのぉ~お前さ俺に気があんのか?」
「ぬ、…………ばばばば馬鹿者が!! ななな何を言うか!! 私は男の好みはうるさいんだぞ!! お前のような貧弱で不細工でわけのわからん奴など……」
「そそそうか!! そうだよな!! お前にはもっと巨漢で包容力があるナイスガイが似合うしな!! でかい武器使う奴とかな」
どうも互いに調子が狂いついつい視線から外してしまうと妙な空気が流れる。ユウヤがとても苦手な空気で息苦しさを覚え始めた頃に助け舟がくる。笑顔で振り向くと無表情の大男ハンクがダボッとしたズボンとジャケットで腕組みしながら二人を見下ろしていた。
「ユウヤ。ウィルから呼び出しがあったぞ、明日にでもきてほしいそうだ」
「お、おおぅわかった。じゃイリア早めに寝るんだぞ」
「ぬ、うむ。お前もな」