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「ヒッくるなぁ!! くるんじゃねぇええええ」



地面の土を拾い上げてニノに投げる、土の攻撃なんて無意味なんて考えてる余裕はなくひたすら投げていく、こんなにも恐怖したのは人生の中で初めての体験でテツはもはや何を言ってるのかわからなくなる、とうとう目尻に涙を浮かべ口からは涎を垂らし最後にはニノに背中を向けて地面を這っていく。


目の前で人が殺されたのだ、しかも普通ではない――首を斬り落とすなんてゲームでしかテツは見た事がない、ゲームではなんとも思わなかったが現実で見たら体の自由を奪われるくらいの恐怖が支配した。



「テツ!! どこに逃げる? この大平原で私から逃げてもお前一人で生き残れるか」



「ううううるせぇ!! くそなんなんだよ!! くそくそくそくそぉおおお!!」



背後からニノが近づきテツの行動を一瞬で止める、刀を伸ばしテツの頬に軽く撫でてやるとそれだけでテツは一回体をビクりと震わせ凍りついたように停止してしまう。



「安心しろ殺す気はない、お前をこの世界に連れてきた責任ぐらいはとるつもりだ」



「わけわかんねぇよ!!」



「いつまでも子供のように言う事を聞かないと腕の一本くらいは斬り落とし無理矢理連れていくぞ、腕を斬られ無理矢理ついてくるか大人しくついてくるか選べ」



選択の余地などない、ニノの言葉が胸に突き刺さりテツは従うように立ち上がろうとするが動かない、早く動かないと腕が危ないというのに微動だに動かず固まってしまう、全力でやっと首だけ動かせニノに振り返り涙と鼻水でグシャグシャの顔で言う。



「ニノぉ~てめぇのせいで体動かなくなっちまった……ついてくから腕はやめろよぉ~」



「そうか!!よかったぁ、いや私も素直なテツが大好きだぞ」



ほんの数分前なら可愛らしく笑うニノに胸をときめかせのだが今この笑顔を見ると怖くてしかたない、固まるテツを担ぎ馬に乗せると手綱を握ったニノが大きく叩き馬は勢いよく走りだす、馬上は思ったほど揺れが激しくニノに捕まり落ちないようにテツは必死だった。



「さっきはすまなかったなテツ、あぁでもしないと落ち着かなかっただろうから」



「今でも落ち着いてねぇんだよ!! 殺すなよ、言う事聞いてんだから殺すなよニノ!!」



「……なぁテツさっきも見てわかったと思うが、この世界は本当に人間同士が殺し合ってるんだ、お前がいた世界とは違う、死がものすごく身近にあるという事をわかってほしい」



後ろからしがみついてるテツが顔を上げるとニノの横顔が見え不覚にも可愛いと思ってしまう、先ほどあんな事をしたとは思えない少女の顔があり同時にそんな少女が首を斬り落としたと思うと恐ろしさもある。


見ている景色でここは日本じゃないとわかる、日本どころかアジアかさえも怪しい……一昨日やったRPGによく似た光景があった、おそらくはヨーロッパと思い周辺を見渡すと平原だけだった景色に小さな街が見えてくる。


だが近づくにつれ街とは言えなくなってくる、家はほとんどが鉄製というより鉄でそのまま立てたようなテツの知るどの建築にも当たらない、馬を下りてニノに手を引っ張られる頃には多少は恐怖は静まってくれてた。




「あまり目を合わせるな、お前の服装は目立ちすぎる」




確かにツルツルのナイロンの生地で黒いパジャマは浮いている、街中は作業着をきた屈強な男達だらけで工場にも似た建物が何個もあり通りすがるたびにテツは睨まれていた、隣には学生服のニノだから場違いにもほどがる。


人目を避けるように進んでいくと一軒の家に辿り着く、屋根に巨大なクレーンがあり壁はいろいろな鉄板を繋ぎ合わせた家というにはあまりにも無骨、ニノが扉らしき鉄を押すが開かない……何度押しても開かない、やがては額に血管を浮かばせ一回転し扉を蹴り開けてしまう。



「おいジジイ戻ったぞぉ~ジジイ~」



正直ここで逃げるべきかとテツは迷ったが行く場所も金も持ってない状態では無理、渋々家に入るとやはり逃げるべきかもう一度考えてしまう光景が広がる、壁にかけてある人の手足が不気味すぎる、よく見ると全て鉄で作られてあり中には武器らしき物も混ざっている。


ニノは部屋の奥にいってしまいテツは近くにあった木製の椅子に座り大きく息を吐く、ようやく落ち着いたのか状況を生理してみる。


交通誘導で入ってきた新人に謎の場所に連れてこられる。

新人が目の前で人一人の首を斬り落とす。

人の手足だらけの部屋に連れてこられてしまう。



「やっぱ逃げよ」



椅子を立ち上がり即座に出口に向かうとニノが背後から腕を伸ばしガッシリと掴む、今度こそ終わったとテツは思い振り向くと笑顔でデコピンされた額に、痛い……半端なく痛くその場で座り込んでいるとギシギシと床が軋む音がしようやく家の主が現れた。



「よ~うニノぉ生きて帰ってこれたか、んでそいつか――…ただのおっさんじゃねぇか!!」



テツは家の主に第一印象最悪だと思われた事だけはわかった。




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