四
扉を一枚開けると別世界に繋がっていた、床は大理石で王室に踏み込んだテツを映しだしガラスの柱が赤い絨毯になぞり一定の間隔で置かれ言葉も足も出ずに息だけを飲んでしまう。
ここまでくるまでに豪華な通路や部屋を見て驚いたが、それすらも霞んで見える、案内人のメイドが一例し去っていくと王室の奥から声が聞こえてくきた、声色は高く少年にも聞こえテツは耳を疑う。
「いやぁ待ってましたよ~会えるのを楽しみにしてました」
真っ赤な背もたれの玉座に座るのは金髪の優男……それがテツの第一印象だった、子供のように手を叩き喜び立ち上がるとテツまで近づき肩を押し王室中央にくる。
玉座の後ろには巨大なステンドガラスがあり何人もの聖人が描かれ日光と混じり輝いている、これが本当の金持ちかとテツは思い王室にきて数分で圧巻されてしまう。
「んで王様さんよ、こんなおっさん呼び出して何の用だ」
テツの言葉を聞くと一瞬固まったような顔になり笑い転げてしまう、体をくの字に曲げ口を開けて笑いまくり近くにいた家臣達が咳き込みする。
「ハハハッ!! これゃ失礼、皆さん聞きました? 私にこんな口聞いた人は生まれて初めてですよ~」
「ハッハッ俺もこんな子供のような王様は初めてですよぉ」
皮肉を口に出すと即座に玉座の横に配備されてした槍兵の切っ先が喉元の皮一枚を突いた、速さタイミング申し分なく気をを抜いていたテツは見事に動きを封じられると、王がその槍を自ら掴み下ろす。
「私はルーファス、よろしくテツ君」
「あぁよろしくルーファス君」
「さて本題に入りましょう、まずは貴方の力を見せてもらいたい」
一人の男が現れると部下達は道を譲りテツの前に立つ、髪は薄茶色の顎髭男……額から目蓋を通り頬まである縦傷が印象的で片目を閉じている、茶色のシャツとズボンと王室には少し汚れたように見えた。
「彼はヘクター我がベルカ騎士団一の騎士、つまり一番強い男です、彼と戦ってください」
「勝った褒美は何かな? 金は当たり前としてプレゼントがあるんだよな?」
おそらくテツ以外は誰もが口を開けて呆れただろう、王に対し失礼な言葉を言いベルカでは英雄とまで言われてるヘクターと戦える栄誉に褒美までよこせと言うその態度に。
手に持つ木刀を震わせヘクターはここまでの侮辱に耐えられず切っ先をテツに突きつける。
「ルーファス様、いくら契約者でも礼儀を知らない輩は私は気に入りません」
「礼儀を知らないのはどっちだ? 人を呼び出していきなり戦えだぁ? 王様よぉ人の上に立つ立ち場ならもう少し考えようぜ」
表情が凍りついていたルーファスは人生で初めてこんなにも傍若無人な男と出会い興奮を抑えられないでいた、見てみたい……こんなにも強気に出られる理由を、強さをと思う。
「勝てば1年は遊んでくらせるだけの金貨を用意しましょう、負けても失う物はないテツ君にはいい話だと思いませんか?」
言われてみれば確かにと納得したテツが頷くとルーファスが一応のルールを説明する。
勝負はヘクターは木刀、テツは拳と契約者としての力を使わず倒さなければならない、不利に思えるがテツはベルカ最強の男と戦ってみたい欲求に勝てず要求を飲み……ヘクターとテツは戦う。




