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第五章

リズムよく吐き出される息と鼻には草木の心地よい匂いが重なりテツの脚は動き出す、まだ気温が暑い中何枚も重ね着し汗を溜めるようにテツは走る。


呼吸は短く一定のリズムで走り続ける……早朝5キロのランニングをテツは1カ月続けてきた、33歳とロートルな体に鞭を入れてボクサー時代のトレーニングを基礎から始める、各種筋トレからシャドーとジムで習った事を思い出し積み重ねていく。



「だぁあああああっと!!」



ランニングが終わりニノと二人にしては大き過ぎる屋敷に帰ってくると庭に向かう、庭には大きな木が一つだけあり太い枝に手作りのサンドバックが吊るされていた、皮袋に砂をつめただけだが十分に役割を果たしている。


脚を使い回りながら鋭いパンチを突き刺すように出す、一発当てると動く癖を体に染み込ませ後はひたすら繰り返し制度を練り上げていく。



「シッ!!」



パンドラはあらゆる武器を出してくれるが使い手のテツは武器など使いきれるはずはない、ならば出来る事を伸ばして行こうと決断しテツはこの戦いに溢れる世界で拳で生き抜く事に決め毎日努力を重ねる。


敵を倒すために。

敵を殴り倒すために。

敵を撲殺するために。


どんなに綺麗事を言ってもテツは殺人の練習をしている、迷いがないわけではない……しかし殺さなければ殺されてしまう世界ではやるしかない、人間の慣れとは恐ろしいものでテツも慣れてきていた。



「おぉいテツご飯だぞ」



エプロン姿でフライパンを上げて呼んでくるニノを見ると新婚さんのような風景だと何もしらない人は思うだろう、可愛らしい瞳をクリクリさせているニノはとんでもない殺人者でテツはその同居人と元いた世界では考えられない状況になっていた。



「まずは風呂に入れ汗臭い」



「あいよ」



脱衣所で服を脱ぎ鏡の前に立つとテツは自分の顔に変わりように気づく、目も鼻も口も形は変化していないがどこかが違うと思い鏡の中の自分の顔に手を重ねているとなんとなくわかった、これが人を殺した奴の顔なんだと。



「おいテツ聞いてるのか」



風呂に入りニノの手作り朝ご飯を食べた後の登校中にはテツはどこかぼんやりしている、元いた世界では生きてるという実感がしなかった、毎日交通誘導と家の往復の繰り返しで亡霊のように人生をフラフラと生きていたのだから。


しかし今は嫌でも実感してしまう、人を殺し生き残っているのだから……



「テツお前は環境の変化に対応したつもりで少しシリアスぶってるんだな、自分が不幸ですよって顔に書いてあるぞ」



「うううるせぇよ!! 無理矢理連れてきたお前が言うな!!」



「そーやって小馬鹿にされて怒る方が似合ってるぞ、お前にシリアスは似合わない」



図星を突かれぐぅの音も出なくなりテツは顔を背けてささっと学園の門を潜る、廊下を歩くと何人かの生徒がテツを見てヒソヒソと話出すがいい加減慣れてきてしまう、いちいち気にしても疲れるだけなので無視し教室の扉に手をかけて開けてると。



「うぃ~す」



いつもの挨拶で当然返事は帰ってこない、もう学園に通い数カ月立つのにクラスメイトさえも返事をくれないとイジメのような状況だった、唯一の友達のエリオは窓際に立ち何やらチラチラと横を見ている。


不思議と思い視線の先を追ってみると人形のように姿勢を固め座っているフェルがいた、あまりにも滑稽な姿にニヤニヤしながら腕を組んだテツがエリオに近づく。



「いよぉ恋する少年!! 声くらいかけろよ」



「はっ!! 誰が誰を好きだって!! 冗談はよしてくれよテツぅ、いいか俺はな」



わかりやすすぎるエリオをほっとき席につくと固まっていたフェルの首が少しだけ動き横顔だけ見えてくる。



「おはようございます」



透き通るような声色を聞きテツはフェルの頭を掴みクシャクシャっとし無理矢理顔を自分の方に向かせていく、驚いた表情で振り向いたフェルは目を猫のように見開き微動だにしない。



「朝から相変わらずだなフェル、もう少し明るくしてれば友達も出来るぞ~なぁエリオ」



「ヘッ!! あ……あぁ確かになぁハハッ」



片手をわざとらしく後頭部に持っていき引きつった笑顔でテツの強烈なパスを受け取り何とか合わせてみるがどうにも調子が狂ってしまう。



「おぉ私だけではなくフェルにもテツというパイプを使い仲良くなろうというのかエリオ、いや天晴れ」



「黙れニノ!! いいじゃねぇかよ!! 友達の友達と仲良くなるなんてよくある事で別に今のパターンも決してやましい事は微塵も何一つないと言っても」



「ほうほう、やましくなければ近づき交友関係を作れば問題ないと、いやはやさすが私達と同じでクラスから変人扱いされてるだけあるな]



テツは自分が巻いた種でエリオとニノが言い争いしてるが頭を掴んだままで猫のような大きな瞳を揺らしているフェルの顔を覗きこみジーと見ている。



「笑え」



「はいわかりました」



感情の無い笑顔は怖いとフェルに教えてもう事になった、目は見開き口だけ歪むと昔見た日本のホラー映画のようだった、4人で馬鹿な事をやっていると教室にマリアが入ってきて学園の一日が始まっていく。

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