二
何もない砂地で見渡す限り枯れ果てた植物や動物の腐った死体や骨しかない、幾多の戦いがこの無名の地で繰り広げられ次第に人は離れていき植物や動物までも死滅させていった。
そして今日この時も変わらず戦いは続いている、真っ白の鎧に身を包んだ騎士達と装備はバラバラの野盗集団……騎士達は連携や陣を使い野党集団を圧倒するはずだったが誤算が生まれる。
寄せ集めのはずの野盗集団の連携は騎士達にも匹敵し統率が取れている、数で勝っている騎士達だったが野党集団の団結力に押されていく。
「射抜け!!」
今まで真正面から戦っていた野盗集団が急に左右に展開すると奥から弓兵――本来近距離で弓は使う武器ではないが野盗集団は逆手にとり騎士達を一瞬驚かせその一瞬こそが狙い目だった。
一人が3本の矢を持ち当てることではなく数を飛ばす事を想定している、弓兵は役50人で一人3本……それは近距離でショットガンを食らうようだった、騎士達の鎧は貫かれ中で悲鳴を上げて倒れていく。
この一回の攻撃で流れは傾き完全に野盗集団が勢いに乗る、騎士の一人が脅えれば隣の騎士も脅えと恐怖は浸食していき隊全体にまで広がってしまう。
「野盗を率いている者どこだ」
隊を任された騎士団団長ヘクター……40歳、数々の戦場を渡り歩きベルカの中では英雄と言う者も少なくない猛者が最前線に立つ、背中を向けて逃げる部下を一括するように野党数人を愛剣であるカスタマイズしたバスターソードで沈めていく。
「引くな!! 引けば死しか待ってないぞ!!」
切っ先に三つの穴があり柄にはトリガーがつけられた変わったバスターソードだった、次々に向かってくる野党を切り裂いていくと次第に流れは止まり野盗集団が二つに分かれていく。
砂煙の中を一人の影が現れヘクターは目を凝らし見ると――大きい、影は巨大な何かを片手に握り肩に乗せている、野盗達が周辺を開けると砂煙が吹き飛び影の正体が現れた。
「ぬ、少しは出来そうだなお前」
褐色の肌に冴える銀髪に高い鼻に切れ長の瞳……一目見て美人とわかる、しかしそんな美人などどうでもよくなる物が片手に握られている。
人間の2倍はあろうか大剣というには大きすぎる剣、太さは通常の剣とは比較にならなく馬鹿げた大きさ、とにかく巨大で太い剣を片手で支えてる女にヘクターは顎に手を乗せ焦りを隠す。
「私はイリアだ、お前は? 一応名ぐらい聞いておこう」
「白騎士団団長が一人ヘクターだ、お前がこの集団を纏めているのか」
「まぁ見た目はこんなんだが話せばわかる奴らだぞ」
ヘクターはどの顔を見ても話せばわかる奴ではない事に気づく、ならば野盗らしくイリアは力で彼らを従え組織した事になる、実力もそうだがイリアに生まれついてのカリスマ性を感じ大きく息を吐く。
この女は生かしておけばいずれ大群を率いてベルカを脅かす存在になると予感し剣を構える、半身になり顔の横に柄を持っていくベルカ独特の構えでイリアを迎えうつ。
「ぬ、やる気満々だな!! ではヘクター遊んでくれ」