四
城内は外と変わらなかった、あるのは死体と死にきれない苦痛の声が響き味方も敵も全て床に倒れ二人を出迎える、玄関ホールは何本もの柱がありそこで大量に死体を生みだした者達が命を削り合っていた。
白い鎧の騎士はテツよりも少し大きいバスターソードを両手で持ち鈍器のように力任せに叩きつけていく。
黒い騎士は背丈も鎧も巨大だがそれ以上に戦斧が大きい、背丈以上の戦斧を振り被りこちらも力で圧す。
互いの武器が火花を散らすたびに地鳴りが鳴るようにホールを揺らし、テツはその光景から目を離せなくなる、今までの敵とは格が違うと知らしめる攻防。
「白騎士か」
「なんだそりゃ」
「ベルカが保有する騎士団だ、これはとんでもない奴が出てきたな」
ニノがとんでもないと認めた相手は白騎士ではなく相手……黒騎士が戦斧を一振りすれば白騎士は吹き飛ばされ力の差がはっきりとわかる、白騎士の鎧に亀裂が入り肩の装甲が吹き飛び中身の肩からえぐれた肉が見える。
たった一振りで鎧を砕き中の肉まで切り裂いた黒騎士は頭上で戦斧を回し床に大きく叩きつけ威圧する、肩腕を庇いながら白騎士が立ち上がり片手には重すぎる剣を持ち上げてゆっくりと進む。
白騎士が弱くないのはテツにはすぐわかったがそれ以上に黒騎士の絶望的なまでの強さ、無言のまま白騎士が走り出すとテツはつい叫んでしまう、結末が見えてくるようだった。
「やめろ!!」
テツが叫んだ時には……白銀の破片は散り手に持つ剣は真っ二つに折られ白騎士の体は上半身だけが宙を浮いた、まるで竜巻のように戦斧を振り回し黒騎士は勝利の余韻に浸るように残った下半身を薙ぎ払いニノに戦斧を向ける。
「久しぶりだなハンク、まさかアベンジが出てくるとはな」
「裏切り者か、確かに久しいがこれでお前の顔も見るのも最後だろう」
声は太く重圧的で黒騎士によく似合っていたがテツは二人の関係に気づき一瞬止まってしまう、その一瞬でニノは黒騎士……ハンクと呼ばれる男に牙を向く。
戦斧が再び竜巻のように回り始めニノを巻き込むように振り下ろされると空振り、学園の制服を破りながらニノは避けて大振りの後のハンクの懐に潜り鞘から刀は抜き放つ。
狙いは腹と決め腰を落とし流れるようにその一太刀で勝負に出るが刃は届きはしない、気づけば空中にニノは放り出され壁に激突した、ハンクは単純に手で押すというだけでニノを吹き飛ばす。
「相変わらずの遅い剣だ、そんな事ではお前に技を授けた者たちが泣くぞ」
「だ――まれぇ!!」
テツは初めてニノが怒った顔を見た、眉間にシワを寄せ歯を獣のように剥きだしにし短髪の黒髪が一瞬風もないのに浮かぶと壁にめり込んだ体を無理矢理引き剥がす。
今にも襲いかかりそうなニノに駆けよりテツは肩を掴み顔を近付ける、ニノの瞳は目の前のテツではなくハンクを見ていたが気にしてる暇はない。
「一人じゃ無茶だニノ!! いいか俺が引きつけるから隙をつけ」
「テツお前は前に出るな、私が倒す」
力づくで前に出ようとするニノを無理矢理抑えつけテツは踏ん張る、ここで一人でいかしては白騎士のようにバラバラにされてしまうと確信があった。
「お前やフェルが認めてくれた回避能力で何とかあいつを引きつけるから!!」
「……」
「いいか攻撃は無理でしかも長くは回避できないだろう、情けないがこれが俺の精一杯だ」
ニノの返事を待たずにテツは黒騎士の前に立つ、目の前にしてその圧力や迫力で膝が震えだすがなぜかテツは口元を緩め笑ってしまう、理由はわからないが恐怖しすぎたせいかおかしくなったと思い両手を広げヘラヘラ笑いだす。
「よぉニノと知り合いかあんた」
「それがどうした」
「いい歳して若い女の子いじめてんじゃねぇよ、このロリコン野郎」
挑発――テツの数少ない武器でハンクを罵ると見事に乗ってくれる、言葉を出す前に戦斧を出すが……ここでハンクは混乱していく、何回振り抜こうともテツにはかすりもしなくフラフラとハンクを小馬鹿にしたように回り続けていく。
縦に振り落とせば軽々避けられ横に薙ぎ払えば素早く後退し嘲笑うように華麗に離脱していく、実際テツは笑いながら風のように踊る。
「ハァハァ……っ」
表情とは反面テツは心の底では神経をすり減らし冷たい汗を全身の毛穴から吹き出していた、一瞬でも遅れれば間違いなく殺される状況で恐怖を抑え込み動きを鈍らせなくする事は体力の消耗が激しい、一振り避けるごとに心臓を素手で掴まれる感触がし生きた心地がしない。