三
ボクシングが人の手により生まれてから約150年……【打たせずに打つ】という目標で人は技術を磨き上げ、ある者は強くなるために、ある者はその強くなった者に憧れ、そしてたまたま近所を通りかかった無職の男にもボクシングはその偉大な力を授けた。
打たせずに打つという行為は相手が手を出した瞬間にこちらの拳を叩きこむというカウンターもある、他には相手が手を出せない程に先手を奪い一方的に殴りまくる。
しかしそんなのは夢物語だと一度でもリングに立てばそれはわかる、それが天才でも何でもないただの凡人なら尚更だ。
「シッ!!」
しかしそれは相手がボクサーでの話で素人なら間違いなく拳は当たる――何振り目だろうか、剣を振るのがまるでジャブを出すような感覚になりフックを打つように剣を横殴りに走らせる、テツとて剣術を舐めているわけではなく警戒しながら脚を使い隙をつく。
何人かで囲んできても広い城門前には逃げ場などいくらでもある、敵のほとんどは力任せに武器を振るってきてテツから言わせれば剣術でもなんでもないただのチャンバラ。
仮にも命賭けの殺し合いをしてるはずなのに実力差がありずぎて恐怖は消え失せテツは血を浴びながら踊り、殺しまくっていく。
「テツ無事か!!」
声の先を見ると視線は目前の敵を睨みつけての流れるような一閃……爪先から頭の先までニノはある事のために動いていた、人を斬るという行動に全ての動きを理に叶え地面の上を滑るように駆け抜けていく。
テツは目を奪われ美しいとさえ思ってしまう、敵の攻撃を紙一重で避け一太刀で葬るその姿が、囲まれないように常に動き確実に数を減らし気づけば屍の山を作り刀を鞘に戻し一息つく。
「城門前は確保できたな、やれやれ随分と遅い到着だな」
連合軍が城門前に到着すると言葉を失う、成人にもなってない女の子が屍の山の中で腰を下ろしている姿は何人かの騎士の脚を止めて隊長らしき男がニノに近づき話をする。
城門を潜っても城下町があり城まではまだ道のりが遠いと確認するとテツは足元に転がっている死体に気づき自分の行った行為を再認識する。
罪悪感は薄れ何も感じない……これが慣れるという事なのだろうか、テツは学生服と剣についた血を払い腰を下ろしていると騎士から水筒を渡され喉を潤す。
「テツいくぞ、どうやら私達は単独で好きにしていいそうだ」
「遊撃部隊って事か?」
「城下町に入れば後は数で押せるそうだから一気に制圧するらしい、マリアが上手く砲台を潰したらしい」
たった数秒でも腰を下ろし一息つくと鉛がついたように重くなりテツは大きく息を吐き腰を上げていく、武器は戦闘中で冷えて再び魔法が使える事を軽快な機械音が知らせてきた。
ニノは走り出しテツが後を追うと迷う事なく一直線に向かっていく、街中に各国の騎士達が散らばり狩りが始まる、守りの戦い方を選んで城門を突破された時点でパロ軍に勝ち目はほぼ無くなっている。
「おいニノどこ行くんだよ」
「城だ!! おそらく魔王軍の幹部がいるはずだからな」
「いや待てニノ、なんでわざわざそんな化け物と戦いたがるん……」
言葉を途中で切りテツはなんとなくだがわかる、ニノも同じ化け物と言われるまでの戦闘力を持ち戦いが好きで仕方ないんだろうと。
道中で出てくる敵は容赦なくニノに斬り殺され一気に城までいく、巨大な扉は既に開いてあり何の迷い無しに城内に飛び込んでいく。