一
【王国パロ奪還作戦】
数年前武器の輸入や開発で栄えていた王国は魔王の手に落ち今は魔王軍の支配下になり大量の武器や技術が奪われてしまっている、王国の王はパロを奪われた瞬間に殺され王妃やその親族も容赦なく殺された、民はその事実を反逆の声を上げたが烏合の衆にすぎない彼らでは戦いにもならなかった。
何よりまずいのがパロの優れた武器や魔法が魔王の手に渡る事、最先端の魔法がこの泥沼化した戦いを終わらせるといっても言い過ぎではない。
各国はベルカを中心に互いに手を組み奪還作戦を開始する、中には反対意見が出たがもはや議論するレベルではなく普段は睨み合っている国同士でも納得するしかない。
「落ちないようにしっかり捕まるんだぞ」
そしてその話は学園まで伸びてきて優秀な生徒と教師が派遣させる事になった、数十の生徒の中にはニノが含まれもう一人は運悪く任命されてしまう……先日の楽しいピクニックの結果がよほど気に入ったのかテツは学園長に笑顔で背中を押しだされ馬を力強く乗りこなすニノの背中にしがみつく。
「まったく馬にも乗れないのかテツは」
「だぁあうるせぇうるせぇ!! 俺がいた世界では馬なんて上流階級の乗り物だったんだよ」
見渡す限り全てが騎馬兵……鎧の擦れる音と地面を踏みつける音が地響きのようにテツの心臓に届いてくる、何千という兵が馬を操りパロに一直線に向かう光景は圧巻で心が震えてしまう、何もない草地がどこかの芸術家が描いた美しく力強い絵画に変わっていく。
そして地平線のむこうに微かに見えてくる城壁、自分で喉を鳴らす音が聞こえテツは一度大きく息を吐き吸うと何かが光り出す。
「テツ掴まれ!!」
急にニノが馬を大きく左に寄せるとついさっきまで隣にいた兵士が光の中に消えていく、その光は地平線の向こうから放たれベルカが作り上げた連合軍の出鼻を焼き尽くした。
大群の中心に巨大な槍が突き刺さるように謎の光は撃ち込まれ多くの兵士が一瞬で蒸発してしまう、人の肉が焼ける匂いでテツは何をされたのか見当がつく、ゲームばかりやっていたテツに思い浮かんだ物は超長距離射撃用の光学兵器……まさに漫画のような武器である。
「ニノさん集団から抜け出してください」
誘導するように前の一騎の馬が動き出すと長い茶髪の髪で誰か特定できテツは普段とあまりにも違う姿に目を疑ってしまう。
白銀の甲冑に身を包み馬までもが頭に銀の装飾をつけて雄々しい姿でニノの前に現れる、兜だけ取っていたおかげで誰かわかりニノが笑う。
「マリア!!」
「あのぉ出来れば先生と……じゃなくて今は集団は危険です、ついてきてください」
マリアの馬についていくと地平線から光り出し破壊の光が連合軍に突き刺さっていく、その攻撃はテツがゲームや漫画で見た物より遥かに強力で生々しく一瞬で大勢の命を焼き尽くしていく。
血すらも蒸発させ光が通過した後は地面が綺麗にエグられた後しか残らず全てが消えていく、マリアが大きく大群から離れ腰から剣を抜くと頭を低くし風のように草地を駆け抜けていく。
二人乗りのニノがギリギリついて行くと城壁が大きくなっていき近づいていく、パロから放たれた光は2発目以降はなく犠牲は大きかったが連合軍も城壁前につく。
「ニノさん懐に潜り込みますよ!!」
「了解した、テツ振り落とされるなよ!!」
空が矢で埋まっていく……進化した光学兵器の次は原始的な武器だが効果は絶大、切っ先を鋭く削り大きく上に向けて撃ち重力の力が加わり甲冑を簡単に貫いてしまう、魔王軍は攻めはなく城の中で立て篭もり守りの戦いを挑んできた。
城門は固く閉ざされ上からは矢の雨が降ってくる形は連合軍の足を止めてしまう、魔法を使い突破したい所だが所詮は対人戦を想定した魔法は城攻略戦には向いてない上に使うと陣が崩れ指揮系統も失いかけない。
「だぁあああ!! おいマリアという名のババアどうすんだよ」
「テツ君黙らないとその舌斬り落としますよ」
なんとか懐に潜り込み固く閉ざされて城門前でテツはこれから向かってくる連合軍が矢の犠牲になっていく所を見ていた。