三
「友達ってのは頼んでなるもんじゃないだろ?]
「うっ確かに……」
椅子に座り肩を落とすフェルの鼻の穴に強引にティッシュ詰め込み頭を数回叩くと視線を落とし落ち込んでいる、深い溜息をつきテツはなんだが自分が悪者になったような気分になり疑問を聞いてみる。
「はぁ~なんで俺なんだよ? お前美人だし友達なんかいっぱい出来るだろ」
「……死んだ父の面影が重なるんです、こんな理由じゃ駄目ですか?」
「あのなぁ~これから友達になる相手にそんな理由ないだろ~」
上半身裸のままベッドから起き上がり痛む体で背伸びすると窓というには大きすぎるガラス張りの扉を開けてテラスにいくと夕方の黄金色の光がテツを包む。
そこでフェルの家は豪邸どころか城だという事に気づく、庭は広くサッカーの試合も出来そうで城の門は重圧的で兵士が数人配置されている、とんでもない人物に気に入られたと思われ腰に手を当てて空を眺めていく。
「名門のお嬢様だから皆遠巻きに見て内気な性格もありクラスではいつも一人ぼっち、そこに俺がきて興味を持ったってとこか」
振り返ると夕暮れの光に反射した銀髪を揺らし人形のように整った顔で不安そうに見つめられるとどうも調子が狂ってしまう、テツはガリガリと頭をかきながら眉を吊り上げて諦めたように言う、その言葉は親もいなくなり兄妹もいない少女に希望の光を与える。
「わ~たよ!! こんなおっさんがいいなんて言う物好きに付き合ってやらぁ」
「本当ですか!! 本当に本当!! 今更嘘とか言うと泣きますよ」
「だぁああ!! ひっつくな!! おっさんがお前みたいな女の子とくっつくと世間に勘違いされんだよ」
フェルが両手を叩くと絵に描いたようなメイドが次々に部屋に入ってきてテーブルの上に御馳走が並べられていく、肉が綺麗に切り整えられた皿に食欲をそそる匂いが漂うスープ、バナナやブドウとフルーツもあり昼から何も食べてないテツは喉を鳴らし席に座り肉にかぶりつく。
フェルはナイフとフォークを使い器用に肉を小さく切り口に運ぶという育ちのよさがでるが……テツはそんなものお構いなしに肉汁を飛ばし食べスープは何も使わず皿ごど持ち上げ飲む、ブドウに至っては皮も剥かずそのまま口に放り込み見ていたメイドが開いた口を閉じれなくしている。
「それでテツさん折角友達になれたので相談なんですが、明日ピクニックに行きませんか?」
「明日学校だろうが、俺の外見みてピクニックって顔してるか?」
「あぁ平気です二人分の休みは入れておきました、学園長はいい人ですね」
たまの休みもいいかと欠伸をしながら食後に爪楊枝変わりに細い肉についてた骨で歯の隙間を掃除する、フェルはよほど嬉しいのか両手を頬に乗せてニコニコしながを見てくると最初に見たフェルの印象はもうテツの中から消えていた。
メイドさんに礼を言い立ち上がり帰りの支度をすると予想はしてたがまさかくるとは思わなかった展開にテツは動きを止めて振り返る、フェルの言葉にメイドは出口を塞ぎ不気味に笑う。
「今日は私の家に泊まってもらいます」
「なん……だと」
日は落ち深い闇に包まれていく。