三
1000年前……人類は科学を極め他の星までその勢力を伸ばしていた、人の欲は深く宇宙では飽き足らず踏み込んではならない領域までに手を出してしまう。
多次元世界への干渉、未来過去ではなく他の世界への扉を作り狂った科学者達は歓喜していたが、扉を開いてみるとそこは地獄だった、神話や絵本でしか見た事がない竜やドワーフやエルフ――扉を開けた瞬間に襲いかかってこられ次々に喰われていく。
人類と竜が率いた軍勢との戦いが始まり各国は次々に竜の炎に燃やされていく、人類の兵器は空を自在に駆ける竜に当たるが防壁で阻まれ科学を極めたはずの人類は自らの欲が招いた結果で半数が死滅する、エルフやドワーフには勝てても竜だけには勝てない。
竜は自分達の世界に干渉した者を滅ぼし役目を終えると眠りにつく、再び人類が他世界への扉を作る時に竜は怒りと共に現れるだろう……
「こんな所だユウヤ」
テーブルには食欲を誘う匂いと肉汁が皿いっぱいに広がる肉が盛られ野菜までもが大量、イリアは喉を鳴らし話終わると勢いよくかぶりつき肉汁を正面にいたユウヤに飛ばすが本人は気にもせず顔を落とし眉間にシワを寄せる。
信じるのが無理な話、どこかの出来の悪い三流映画の脚本だと思い溜息を漏らす、自分の事情を説明するよイリアは子供のように目を輝かせ美しい外見の割に幼さがまだ残っていた。
「つまり他世界から無理矢理こちらに引っ張ってこられたわけかユウヤは、ふがっ」
「らしいな、おい少しは上品に喰えないのか」
奥歯で肉を噛み勢いよく引っ張り肉汁を出して肉を喰らい尽くす、下品だがイリアの美貌がおかげで見ていて気持ちのいい食べっぷりに見えるが今のユウヤには飛んでくる肉汁すら気にしてる余裕もない。
今の話が本当ならば元の世界に帰る手段は見つかりそうにない、こちらにきたきっかけが死だったからには死ぬしかないがリスクが大き過ぎる……答えのでない議論を頭の中でしているとイリアは全てを食べ終えてゲップを出しコップを持ち水を胃に流し込む。
「どうだユウヤ私達に協力しないか? そうすれば当分の世話をしてやる」
「お前ら自警団の集まりにか、正義の味方にでもなるつもりか」
「今ベルカという国家が世界を支配している、竜がいなくなって残った人類は争い今に至るといわけだ」
咳払いを一つ鳴らし胸に片手を乗せて自慢げに語る、どこかの教育者になったつもりなのかイリアは瞳を閉じて堂々と口を開く。
「ベルカの後ろには教団という宗教組織がありそいつらが民を苦しめているんだ、最近では奴隷商売とかふざけた商法までやっているんだぞ、許せるか!!」
「つまりその教団とかいう連中を倒すために俺の力を利用か、ククッ笑ってしまう」
元の世界でも殺しだが他の世界にまできても殺し屋家業を続ける自分に笑ってしまう、ユウヤは古武術の家に生まれ幼い頃から殺人とも言える技術を叩き込まれた、両親が死ぬと道場にはユウヤ一人しか残らず門下生なぞくるわけがなく土地も道場も売り払いユウヤは社会に出た。
しかし生まれて武術にしか時間を使ってないユウヤには社会はあまりにも遠かった、安いボロアパートで一人暮らし毎日を空しく過ごしていたある日……路地裏で喧嘩を売られ相手は3人、人生の全てを武術を費やしたユウヤは素人3人を瞬く間な倒すと男と出会う。
男は言った「その力存分に使いたくはないか」と、そこからは砂時計の中の砂が落ちるようにユウヤは裏社会に染まっていく、学んだ殺人術は絶大な威力を発揮しユウヤは殺しに酔いしれた。
「おい何ニヤニヤしてるんだ気持ちの悪い奴め」
「ううるさい!!」
「まぁいい出るぞ、入団試験だ」
外に出てしばらく歩くと森の中までいく、鎧を脱いで汗を拭う男達が何人か座り喋っているがユウヤを見て表情を硬くし身構える、イリアが前に出て男達を止めると声を高らかに言う。
「おいこいつに勝てる奴いるか? こいつがお前達なんて子供の遊びと言ったぞ」