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大蛇が地を這う、雑草や植物を切り裂き傭兵達の足元を這い回り不気味な音を鳴らし……獲物を食らう、エリオとテツの目の前にいた傭兵の片足が千切れ絶叫で幕は上がる、すぐ近くにいた傭兵の体に大蛇は巻き付き言葉を言わせないまま喉を切り裂く。


突然の奇襲――傭兵達は辺りを見渡すと木の上から影が舞い降りる、腰まである銀髪を泳がせ二人の前に降り立つ、手には剣を持つが形が異様だった。


刀身はなくワイヤーが伸びている、ワイヤーの先を辿ると傭兵達の足元に続き刃が備わりそれこそが大蛇の正体だと気づいた時には傭兵がまた一人体の一部を切り裂かれ赤ん坊のように泣き散らす。



「囲んで一斉にいくぞ!!」



その策は間違っていた、一人に対し囲んで一斉に攻撃を仕掛けるのは必勝の策だが少女……フェル・ランカスターの手に持つ武器は特別、地に撒いた刃つきのワイヤーを手繰り寄せるように振り抜くと剣の結界が出来る。


一度全ての刃を空中に浮かせると数秒時間が停止したように傭兵達の目が上に向く、フェルが体ごと地面に剣を振り抜くと雨が降る、剣の雨と変わった攻撃は容赦なく傭兵の体を貫き大蛇が人間を食らうように喰い殺した。



「フェル・ランカ、ウェッ!!」



人間の死臭と手足が散乱する光景にエリオもテツと同じく吐いてしまう、眉一つ動かさず人形のように整った大きな瞳と小さな唇を動かさずフェルは剣を元の形に戻す、ワイヤーが剣に戻っていき鉄と刃が噛み合い刀身の形になりバスターソードに戻る。


倒れているテツに駆けよると鼻と口から血を流し意識が朦朧としていてフェルが首を持ち上げ呼吸を何とか整えようとした時に現れる。



「蛇腹剣か、剣を鞭のように伸ばし中距離遠距離の攻撃を得意とすると聞いたか事はあるが実物は初めて見たな」



全身を鎧で包み重装甲の敵、おそらく魔王軍の隊長クラスである敵が現れる、背中から抜く大剣は男の身の丈と同じ2メートルはあり大男が扱うに相応しい。


小さな溜め息を漏らしフェルは蛇腹剣を軽く振り鞭のような一撃を男にぶつけるが金属音と共に火花を散らし弾かれてしまう。



「面白い武器だが装甲を貫くには攻撃力に乏しいな、まだ若いから見逃そうと遠くから見ていれば……悪魔のような子供だな、魔王様の部下として見逃せない」



重装甲に似合わず男の動きは速く真っ直ぐフェルに弾丸のように飛び出していく、巨大な鉄の塊の剣を有無言わさず振り抜くと風切り音が耳に響き目の前の空間が弾けるようだった。


手ごたえは無く舌打ちを鳴らし男は再び腰の位置に大剣を構え、テツの襟を掴み後方に離脱したフェルを睨む、兜の下から目が合った瞬間に全身の毛が逆立ち男は油断を消しさる、子供と思うな化け物と思えと。



「……」



睨み殺すように視線を投げつけてくる男に対してフェルは涼しげな顔で無言、男の言う通り蛇腹剣ではあの装甲は貫けず探す、鎧の隅々まで見てフェルは探し当てる装甲が届いてない個所を。


後は待つだけ、男が自分の装甲を信じ無防備に突っ込んでくるのを……そしてフェルの思惑通りに男は走り出す、一回目と同じく体を前に出し大剣を横から薙ぎ払う形だ、フェルは蛇腹剣の刀身を伸ばし地を這わせる。



「所詮子供だな、何度同じ事を――グッ!!」



強烈な痛みと共に大剣を落としてしまう、握力には自信がある男はありえないと思い手元を見ると両手の親指が根元から綺麗に無くなっている、両手を顔の目の前で見たわずか数秒で男の運命が決まってしまう。


槍のように鋭く矢のように速くフェルは懐に潜り込み針の穴程度の隙間に滑り込ませた、刀身を戻し兜と首の隙間に突き入れ一突きにて勝負を決めた、刀身を勢いよく抜くと切っ先から血が垂れ男は倒れる。



「すげぇフェル……おいテツ見たかよ今の神技!! おいテツ、おい起きろ!!」



何度も頭を揺ら頬を叩くが光を失った目で開けたままの口から涎を垂らしテツは返事をしない――テツの初の実戦は散々な物になり、いかに自分が今まで甘い世界で生きてきたのかと痛感する結果となった。

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