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ある日、テツは大口を開けてニノと並び毎日の訓練のおかげで使い慣れた剣を鞘に収め登校していく、もういい加減登校中の視線にはなれ教室に向かい一番窓際の席で肘をつき空を眺める。


異世界にきて一か月が経過してPCが無い生活にもなれ魔法も使いこなしつつありテツはこの生活を満喫していた、相変わらずチラチラ見てくるフェルを少しいじり遊ぶが未だに言葉を交わした事はない謎の少女、最初に厳しさを教えてくれたニノ、憎めないエリオ……テツに友達と呼べる者はほとんどいなく溜め息まじりの毎日だが。



「失礼します」



マリアの授業中に他の先生が入ってきて耳打ちすると教室を出ていく、残された生徒達はザワつきながら待っていると一人の髭が立派な老人が入ってきて生徒達を教室に出して誘導する、この時既にいつもの空気とは違うとテツは感じた。


重く圧し掛かるような喉が締め付けられるような空気で嫌な予感がする、いつも訓練している砂地の広場に集められてる全生徒達――ざっと見て500はいる、いつも表情豊かなマリアも引き締めた顔になりどこか緊張感が広場を支配し生徒達は黙る。




「悪いな集まってもらって」



短髪の白髪の大男……学園長が台に乗り声を張り上げる、声はよく通り後ろの生徒まで聞こえたが次の言葉で生徒達に混乱を隠せなくなってしまった。



「現在魔王軍がこのベルカに向かい進行中だ、諸君らには後方で拠点防衛に回ってもらう」



魔王軍? 拠点防衛? テツの頭に二つの文字が浮かび上がり雷が落ちたかのように衝撃が走りある答えが導き出された――戦闘だ、殺し合いが始まると気づきテツは自分の口を手で抑え震えてしまう。


ただ言われただけなのにここまで恐怖する自分に脅え今から攻めてくる敵に脅えてしまう、ウィルから話は聞いていたが覚悟が足りなかった、実戦を経験してないのに覚悟なんてあるわけがない。



「安心しろ、ベルカ騎士が街の外で戦い敵を消耗させ諸君にはその消耗しきった敵が街に入ってきた時に戦ってもらう、しかしあくまで防衛戦だ極力戦闘は避けろ」



生徒達の中で小さな声を上げる者もいてテツももう何を聞いてるのかすらわからなくなっていく、鞘に乗せている手は震えカタカタと音を鳴らし息がだんだん激しくなる、一瞬が永遠のように感じ永遠が一瞬のように感じ時間すらも恐怖で忘れかけていく。


気づけば何組かにわかれテツはエリオと並んでいた、後ろには小さな門がありベルカ城の警護を任さられ最後にマリアが任務の内容を確認する。



「いいですか敵がきたら迷わず殺してください、こんな所までこないと思いますが一応覚悟はしといてください」



「あ……のババじゃなくてマリアさん、なぜ突然魔王軍が」



「細かい説明は出来ませんがベルカと魔王は敵対関係にあります、攻めてくる理由なんていくらでもあります」



最後に軽く肩を叩かれるとテツは顔落とし瞳を閉じて奥歯を噛み締めて脅えてしまう、そんなテツを察したのかマリアは耳元で囁く、脅える新兵に向かい励ましではなく希望の言葉でもなく恐怖を加速させるような魔法の言葉を。



「殺さなきゃ殺されますよ」



「確かに怖いが~まぁやるしかねぇなテツよぉ」



隣から肩を組んできたエリオの腕も震えていたが空元気で誤魔化すように拳を振り上げる、この時ばかりはいつもの笑顔は消えており強がるのが精一杯だった、マリアは二人に背中を向けて片手をヒラヒラさせ去っていく姿はあまりにも非情な姿に見えた。


テツの考えは甘かった、学園で何のために訓練し何のために戦術を学んだ? 全ては人間を殺すためだ、この一カ月で平和な時間を過ごしていたテツには突然の魔王軍の奇襲は体を地面に突き刺されたように動かなくしてしまう。



「……おいテツ始まったぞ」



遠くの方から大量の雄たけびと悲鳴が同時に響いてきた、それは殺し合いの始まりの合図だとテツは嫌でもわかってしまう。



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