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最初は学園に転校してきて名前も知らない金髪に負け、次は学園長に負け、次は魔王軍の汚らしい傭兵に負けて……勝った記憶よりも負けた記憶の方が多い。テツの経験は負けの歴史だったがその歴史こそが力を与えてくれる。


魔王と対峙しテツは思考を止め頭を空にしていく。意識してやって事ではない。そもそもテツは馬鹿だ、考えながら戦う事は向いてない。



「テツ、貴様!!」



魔王が野太刀を振り抜くとがテツには触れられない。完全に野太刀の距離だがテツは体を動かし最小限の動きだけで避け続ける。まるで酔っ払いのようにフラフラしているが魔王の攻撃を全て捌きスカし回避し続けていく。



「人間!! あんた何の魔法使ってるのよ!!」



パンドラが異変に気付き声を上げるとテツは避けながら答えていく。



「今いい気分なんだ。脳よりも体が語りかけてくるよなぁ気がしてなぁ」



ただ見るままに。ただ感じるままに。テツは考える事をやめ体が行きたい方向に行くだけ……それはまるで魔法。魔王の人生を捧げた技術を嘲笑うかように避け踊る。



「さて何時までもこんな事しててもしょうがねぇな」



魔王が野太刀を振り被る姿を見て攻撃に転じる。脳内でこれから起こる攻防を想像し考える前に動く。想像さえ出来れば考える必要はない。後はこれまで付き合ってくれた体が動いてくれるだけ。



「すげぇなテツ!! まるで物語の中でしかいない達人みたいだぞ」



魔王が喜ぶ。テツは命を天秤に賭けた戦いの果てに手に入れた強さに歓喜する。野太刀を斜め上から叩き下ろす、剣速の速さには自信があり空気を切り裂くような見事な一太刀だったが切れたのは空気と地面だけ。



「ハハこいつは面白いな!! なぁパンドラ!!」



想像した通りに魔王が動きテツは笑う。野太刀を避け懐に飛び込み拳を固めていくと蹴りが目の前に現れ鼻先をかすめていく。次は想像通りだと魔王は掴んでくるはずだと警戒した時に視界が急に暗くなり動きが止まり……テツは斬られてしまう。



「二手三手先を読まれたのは爺ちゃん以来だぞテツ」



斬られたのは浅くはあるが胸。コートに血が滲み確認すると手足が動くか確かめ、突然被された魔王のロングコートを掴み紫炎で燃やす。



「ヒヒ旦那ぁこれじゃどっちか悪役かわかんねぇな~見ろよあの姿」



紫炎の中から現れたのは着ているコートすら燃やし上半身裸になったテツ。腕まで侵食し悪魔のような腕だったが脇の下から胸まで侵食が進み、見るも無残な化け物になっていた。人間の原型を留めているのは顔、胸、腹。魔王はそんな姿を見て震える。



「なぁパンドラ。俺は強いか? 俺は強さが欲しかったんだ、自分の命も仲間も時間も全てを差し出してここまできたんだ……俺は強いか」



坊主頭のおっさんは悪魔になり相棒に問いかけていく。



「はぁ~何いってんのよ人間。あんたなんてまだまだよ、そんなに強さが欲しかったらまず勝つことね~強さってのはね勝つ事」



「人の体ここまでいじって言う事がそれかよ。たまには褒めろよ~……さて魔王。今まで失ってきた大切な仲間達の無念、ここでお前の死で償ってもらうぞ」



怒りでもなく悲しみでない。テツの瞳は澄んだ瞳で純粋だった。子供のように無邪気な気持ちでテツは魔王を殺しにかかる。出会った瞬間に飛びかかると思っていたが違う。頭を空にして魔王を殺す事だけに集中する、感情なんていらない。



「父上!!」



肩を揺らし息を切らしたニノが魔王とテツの戦いに追いついてた。


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