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「ん」


薄れていた意識は金属音で呼び戻され目蓋が開いていく。背中には柔らかい感触が伝わりまだ景色がボヤけてる最中に身を起こすとベッドの上だとわかる。そこでニノの意識ははっきりと覚醒して思い出す、最後に見た光景は父への反逆。


刀を手に炎の中で微笑む父に一太刀浴びせるが浅く反撃を食らった瞬間まで覚えている。次に目覚めた時は屋根つきのベッドの上……頭痛で頭揺らしながらベッドから出ると衣服はそのままでボロボロの皮シャツとズボン。


部屋を見渡し使える物がないかと探すが見覚えのある内装に気付き近場の窓の飛び込むように駆け寄ると見える。何百どころではない人間同士が戦い、終わりの見えない殺し合いが。



「父上!!」



回りを見ると漆黒の甲冑が一つだけ使えと言ってるようにあり魔王軍の装備とベッドの横に愛用の刀が置かれていた。父親に誘導されているようだったが気にしてる暇は無い。甲冑を纏い刀を持った瞬間に扉が破れる。


今つけた甲冑を着た大男が倒れこみ血まみれのエリオが息を切らせながらニノと顔を合わせる。白銀の鎧は砕け中身の体から深い傷も見える。



「ニノ!!」



「エリオその傷見せてみろ!!」



駆け寄るニノを止めると深手の傷を抑えながら深呼吸する。エリオの後ろには十人以上の死体が転がりニノが驚く。



「これお前が全部やったのか!!」



「あぁ……なんとかなるもんだな。正直自分の才能に驚きだわ、あ~痛いわ」



腹を抑える指の隙間から絶えず流れる血を見てニノの表情が強張る。エリオの顔から血の気が引いてるのが顔色でわかり嫌な予感がしてしまう。



「今テツとフェルがお前の親父と母親と戦ってんだ。早くこい」



「なんだと!! クソ、外は滅茶苦茶だしルーファスは何をしているんだ」



手を引かれ走り出すと簡単にエリオを追い抜いてしまう。無理に笑顔を作り手を振りながら行けといってくるが心配で足が止まる。



「いいから行けって、俺は後から行くからさぁ~ささっと行けってんだよ!!」



迷ってるニノの尻を蹴飛ばし怒鳴り散らし苦しい顔見せニノに笑いかけると迷いが消えていく。泣き出しそうな顔を見せた後に走り去るニノを見て座り込む。



「ハハ、我ながらよくもまぁあんな数の敵を蹴散らしたなぁ~あぁ……フェルちゃんよぉ~俺じゃ駄目なのかぁ~……たくっ情けねぇなぁ」



本当に格好つかず、命にも等しい血を流しながらエリオは重い腰を落としたまま動けなくなっていく。

















まるで待ってたかのように吹雪は止まり斜めに流れていた雪は静かに落ちてくる。城門前は雪が足首まで積もり一歩踏み出すと足元が悪い。待ちに待った再会だがテツは言葉が出ない。言いたい事は山ほどあるはずなのに言葉で表せない……それでも捻り出した言葉は。



「俺が昔読んでた漫画の主人公は復讐とか言って冒険するんだが、いろいろあって最後はいい人になって世界平和を勝ち取るんだ」



「まぁありがちな展開だな。俺はこんなんだが結構漫画読んでたぜ」



「どーやら俺には無理そうだ。いい人なんてなれそうにねぇ……魔王、てめぇを殺して極悪人確定だ。今までの恨みやいろいろ全部ぶつけてやる」



テツより先に飛び出したのはフェルだった。雪の上を滑るように飛び蛇腹剣を振り抜くと、横から光速で突撃きたイリアと共に消えていく。二人は雪の中に埋もれるように着地しイリアが頭を雪の中から出し笑う。



「ウハハハ!! 悪いな竜の子よ。我が夫の楽しみを邪魔するな」



「いいですよ。まず貴女から殺してあげます、楽に死ねると思うな!!」



見える景色は真っ白の雪景色の中で褐色のイリアが魔剣を掲げる。物心ついた時からこの瞬間のために生きてきた。この時のしか考えずに特訓し、敵を殺し、人生を鮮血に染めてきた。何万回と繰り返してきた動作で蛇腹剣を振るい魔剣に絡みつけていく。



「どーゆつもりだ。そんな小さな鎖を巻きつけて、力比べでもしようというのか」



二人は蛇腹剣の一本のワイヤーを挟み一斉に互いを引き寄せるように力を入れていく。イリアが自信満々に引っ張るが異変に気付く。小さな体のフェルを一歩も動かせない。



「力を契約で上げたとしても所詮は元は人間。イリア、貴女の目の前にいるのは竜ですよ、たかだが人間一匹にどうにか出来ると思うんですか」



生まれて力で負けた事のないイリアにとっては初体験だった。純粋な力で負けるという現実――…白銀の世界で魔王の片腕となった女と竜は互いを食らうように戦い出す。




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