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「おいパンドラ今のなんだ。頭がどーにかなって見えてる景色や体感時間やらおかしくなったぞ」



勢いづきたいが体に異変が起こる。鳥肌が止まらず体が熱を出したように熱い。それだけ異常を感じてるのに頭はスッキリし体は軽く調子はいい、今まで気にしてなかったテツもさすがに不気味に思えパンドラに聞く。



「ようやく気付くなんて遅いわね人間。いいわ、いい機会だから説明してあげる。私達特別な武器がどーゆ物か」



「急いで頼む。イリアがいつ復活するかわからねぇ」



平行感覚を失い地面に這いつくばり転がるイリアを魔王軍の兵が取り囲み守られているが攻めてくる様子はない。テツの暴君のような殺傷能力を見て恐れ守るだけで精一杯だろうが今はそれで助かる。



「人間達は私達を使って強くなるって認識してるけど間違いなのよ。真実は逆。私達が人間を支配しその体を使って戦う……それが正しい」



「その理屈だと俺達人間はお前らの戦う部品の一部になるな」



「理解が早くて助かるわね。その通り、人間。貴方は今もこうして人外の力を使用できるのは私達の部品の一部だからこそ」



数人の魔王軍の兵が剣を振り上げ襲ってくるが、テツはまるで足に羽が生えたように軽く飛び跳ね攻撃を全て避け拳と蹴りを叩き込むと兵士達は腕を削ぎ落とされ、腹に大穴を空けられ絶命していく。手足でその解体作業を行ったテツを見て数では圧倒している魔王軍が震え上がっていく。



「まず人間の体に私達の力を入れるのは弱すぎる。だったら……体の構造自体を私達好みの作り変えてしまえばいい。わかる人間? 今この瞬間もお前の体は私に侵食されているのよ」



「怖い事言いやがるな。ならお前自身の勝手で俺の体を改造してこの馬鹿げた能力に耐え得る体を作り出してるってわけかよ……はぁなんだそりゃ」



「あれ? 驚きも怖がりもしないわね。大抵この事を知った人間共は自分が人間でなくなり化け物になっていく事に狂いそうになっていくけど、お前はなんとも思わないの」



構えを解きテツは数秒考える。確かに人間でなくなる事はショックだが代償で力が手に入ると思うと仕方ないと自分でも驚くくらいに合理的な考えに行き着く。



「昔の俺なら狂ってただろうが、今じゃこんなんだしな。パンドラ俺の体は今どれくらいお前の勝手で侵食されてんだ」



「まだ半分も侵食してないから安心しなさい。さっきの景色が遅かったりしたのは予兆よ。覚悟はいい人間? これから私の手足となりその力で戦い続ける事。人間の姿をした化け物になる覚悟は済ましたかしら」



雨でも降ってきそうな曇空を見上げ大きく息を吐く。これまでいろいろあったがとうとう来る所まできた感じだ。まさか人間やめる事になるとはと考えると確かに恐怖はある。しかしそれ以上にテツは自分の奇妙な人生に笑えてきた。



「……ハハ!! 最高だぜパンドラよぉ!! 異世界に飛ばされ魔王を倒すために特訓し、今度は悪魔にでもなるってか!! ハハハハハ!! 厨二病ここに極まりって感じだなおい」



もう人生なんてどうにでもなれと諦めていたが、更にパンドラの事で完全に吹っ切れた気がした。わかりやすい構図を思い浮かべる。自分はパンドラという武器を動かすネジになり稼動させる対価に力を貰える。



「いいぜパンドラ!! お前に俺の体をくれてやる、好きに改造でもなんでもしてみろ!!」



「理解のある人間で助かるわ。さぁ人間!! そうと決まれば目の前の無力で無様な蟻共を薙ぎ払いましょう」



イリアを囲む魔王軍に突撃しナイトメアを振り抜くと数人の兵士が飛び散る。体の一部を削り取られ悲鳴を上げる者を踏み潰しテツは何人もの兵を殴り、蹴り、竜巻のように大量虐殺を続けていく。鎧など簡単に砕かれ中の体まで拳は貫通していく。



「後少し」



地面に這いつくばるイリアまで後少しだが数で圧倒する魔王軍の壁が進路を塞ぐ。いくらテツ個人の力が飛び抜けてても相手も当然槍やら剣で応戦してくる。防御や回避をしなければ致命傷もある。一瞬一瞬の攻防に勝ちながら突き進むとイリアの前に足を踏み入れる。



「さすがに……体力消費は回復できないか」



息が切れ肩を揺らす。傷は回復しても体力まで回復してくれない微妙なバランスのパンドラに舌打ちをしながらイリアに近づく。


一人の魔王軍の兵士がイリアの前に立つ。膝は震え目に涙を抱えながら剣の切っ先をテツに向けてくる。外見は成人もしてない若い少年に見えテツはその勇気に驚く。



「他の大人がビビッてる中でよく前にでたな小僧」



「イリア様は我ら魔王軍の王妃なんだ!! お前みたいな化け物なんか――…に」



少年の体が一瞬歪んだように見えると腹が爆発するように弾け、上半身と下半身が別々に宙に飛ばされていく。若き命が派手に爆破した後方から這いつくばっていたイリアが地面に魔剣を突き刺し立ち上がる。



「誰が邪魔しろといった!! 手出しするような奴はこの小僧の二の舞になると知れ!!」



同胞を後ろから容赦なく切り裂いたイリアの顔は怒りに震えいう事をきかない足に気合を入れ直す。



「人間。私達と契約者人間はね。共に過ごした時間が長ければその分侵食は進み強くなるのよ……あの銀髪の女は」



パンドラは珍しく声を低く冷たくしイリアを見たままの感想を言う。



「あの女、もう半分以上体を食われているわ」

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