二
魔装研究施設。
ルドルフは特別な武器を装備する事を魔装と言い。それを研究する施設の場所に行くと森の中から顔を出しテツとニノは目を丸くした。施設と言うからには立派な建物が何個もあると思ってたが、そこはどこにでもありそうな田舎村。
村人は皆白衣をきながら忙しそうに走ったり資料を互いに見ながら興奮し合うと村には似つかわしい。何人かの傭兵が歩いてるのが見え一応の警備がいるが薄い。
「まさか村丸々一個施設に使ってるとはな。おいニノ、お前の父親のセンスおかしいぜ」
「しかし木を隠すなら森。こんな田舎が研究施設など誰も思わないだろうな」
「村人があんなのばっかりじゃバレバレだろう!! まぁここが重要な施設とわかっていても攻める馬鹿は俺達ぐらいなもんか」
テツは長髪を額にバンダナを巻き纏め、目元を隠し汚らしいボロボロの服を選び変色しているズボンの腰に剣を一本ぶら下げている。ニノは頭に同じくバンダナで包み目立つ黒髪を隠し茶色の古びた軽装の鎧。二人もいかにも外見を気にしない汚らしい傭兵に変装し村に近づく。
「さて上手くいくかねニノ。俺らは警備を依頼された傭兵だ。いいな?」
「フハハハ!! 私はこう見えても演技派なんだぞ」
村に近づくたびに緊張が高まり一歩村に踏み込んだ瞬間に汗が吹き出す。回りは研究者ばかりだが間違いなく敵のど真ん中。バレれば契約者でも武器がないテツは数の暴力で殺されるであろう。
「ん、なんだお前らは」
一人の研究者が資料を片手に二人に話しかけてくるとニノが前に出る。
「今日ここで警備を依頼された者だ。すまないがどこで魔装武器を研究しているのか教えてくれないか」
「この村にある家のだいたいは何らかの武器を研究しているぞ。しかしくるなら少しは清潔感のある服を着てほしいものだ」
まるで汚い物を追い払うように手を振ると不機嫌に研究者は去っていく。ニノの声色はいつものふざけた声ではなく低くしまるで男のような声を聞きテツは驚く。
「驚いたなニノ。そんな声出せるのか!!」
「フフその気になれば娼婦のような男を誘う声も出せるぞ」
「マジかよ!! 意外すぎる能力だな……さてと」
研究者ではなくもっと口の軽そうな連中に目をつけ、テツは警備の仕事を座りながら喋りサボッている傭兵達に近づく。
「ようお疲れ」
「あん? なんだお前」
「今日からここで警備する傭兵さ。つまり同業者、よろしくな」
そんな話聞いてないという顔をする傭兵の隣に強引に座り話を続けていく。
「聞きたいんだが……ここの給料どうなんだ?」
「なんだお前そんな事も知らずここに来たのか!! ハハついてないな」
金の話になると傭兵は食いついてくる読みは当たりテツの話に乗ってくる。
「ここの給料は依頼主を殴りたいくらい低いぞ。まぁこんな場所の警備だし、毎日何もせず金貰えるのはいいが」
「上から目線の研究者共が腹が立つだろ?」
「わかってるじゃないか新人!! お前名前は」
軽く自己紹介した後にこれまでの戦の話で盛り上がり、一人の傭兵がニノに興味を示す。
「あぁこいつか。傭兵としての腕はかなりだが……夜の相手じゃ女神どころか、虜にされてしまう悪魔だぜ」
テツの煽りに傭兵達が一斉に立ち上がり沸き立つ。こんな田舎では女なんてろくにいないだろう隙をつき傭兵達の興味を一気に加速させていく。
「ヘヘマジかよ」
一人の傭兵がニノに手を伸ばすと軽く叩かれ、ニノは人が変わったように下唇を舐め片目を閉じて声色を変えた。
「焦るなよ。我慢した方が果実は美味しくなるぞ、夜に会いにくるがいい」
目を血走らせた傭兵を強引に座らせるとテツは本題に入る。ここまで挑発すれば必ず口は軽くなると。
「噂で聞いたんだがパンドラってとんでもない武器ここで研究してるって本当か」
「あぁ~あの箱か。一度厳重そうに村の奥に運ばれてるの見たぜ。おそらくあの屋敷だろう」
傭兵が顎をクイっと向けた先には二階建ての屋敷があった。村には似合わない豪邸で庭も広い。回りには研究者も数多く出入りし、いかにもって場所だった。
「ありがとな。俺らパンドラの警備担当なんだよ」
「なんだそりゃ!! あの箱専属警備つくほどのもんだったのか……それより夜は頼むぜぇ」
傭兵達が性欲の目で尻を見てるのを感じニノは軽く手を振ると声が上がる。情報を得た二人は屋敷に向かう。
「言った通り色っぽかったぞニノ。本当に演技派なんだなぁ」
「だだ黙れ!! 何をやらせるんだ馬鹿者が!! 突然で驚いたぞ」
「何照れながら怒ってんだよ。お前の男を誘う演技で情報手に入れたんだ胸を張れ」
どこか不機嫌なニノを連れて屋敷に近づく。そこでテツは胸に少し違和感を覚える。痛みではなく逆に快楽のような違和感……まるで引き寄せられるような感じに笑う。
{どうやらまだ契約は続行してるらしいなパンドラ}