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十三

ガラス越しに響いてくる体を叩きつけるような豪音。見下ろせばコロシアムで互いに武器を持ち相手の血を金に変える戦いに観客は理性を投げ捨て本能で叫ぶ。テツを叩き伏せてからルドルフは細胞が喜ぶように震え鳥肌が止まらない。


今見下ろしいる戦士達など比べ物にならない。強さもそうだが覚悟が桁違い……何かも捨てて強くなっていた。自分の命すら勝つための道具にしている戦い方が他を圧倒している。胡坐をかきながら嬉しい気持ちを酒盛りで表し飲み続けていく。



「いつつ……なんだよルーファス」



「よぉお前も飲むか。て、おい!! また怪我増えてんじゃねぇか!!」



「あぁ少しニノ遊んでな。考えてみればこっちの世界きてから始めて飲む酒だな、くれ」



一口で一気に飲むと傷に染みるのか顔を歪め数秒後に酒臭い息を吐き、数日前まで戦っていたコロシアムを見下ろす。



「テツお前に聞いておきたい事があってな」



紫に腫れ痣だらけのテツの背中や肩を見ながらルドルフは聞く。



「仮に魔王を倒せたらお前どうする? おそらくは英雄になれるぞ、それとも世界の王を倒した反逆者か……いずれにしても今みたいな復讐だけでは生きられないぞ」



「――俺な前の世界にいた時は金なくてよ。金のために必死こいて働いても他の奴の給料より少なくて、その癖馬鹿みたいにキツイ仕事だったんだ」



ガラス越しに手のひらをつけながら写る自分自身を見てテツは語る。もう忘れかけていた過去を。



「金のない生活は地獄だったよ。毎日仕事と家の往復が生きてる限り続くと思うと怖かったよ。楽しみなんてネットか給料日に買う少し贅沢した焼き鳥とビールくらいなもんだった」



「意外だな。そんな過去があるとは」



「でもこっちの世界きて変わったよ。こっちでは金より強さが価値があった……なぁルドルフ。元は駄目人間で頑張って会得した技術が人殺しの俺に世界をどうするかなんて聞くのか?」



テツは両手を広げ上を向くと目を閉じる。観客の声援と光が演出しルドルフから見たら一枚の絵のように見えた。



「魔王を倒した後なんて知るか。どうにでもなればいいさ、俺はあの糞野郎を倒せればいいんだ。悪いな英雄なんて器じゃねぇんだよ俺は」



「確かにテツ。お前ほど英雄って言葉が似合わない奴もめったにいないだろうな」



「まぁどうせ魔王が死ねば次に待っているのは各国の争いだろうな。永遠に終わらないだろうな戦いの連鎖は……昔を思い出したら落ち込んできた!! 酒くれ」



グラスは取らずボトルをで飲んでいるとルドルフは目の前のテツがどこか可哀想に思えてきてしまう。偶然とはいえ運命に人生を破壊されたが、もし異世界にこなかった運命だったら先程語ったように生きる地獄の人生だったのであろう。



「コロシアムじゃ化け物と恐れられたお前がこんな奴とは観客は思わないだろうな。ハハ可愛い所もあるじゃねぇか」



「んで何の用だよ。まさかこんなおっさん同士の酒盛りが目当てか?」



ルドルフが懐から数枚の神を出すとテツの前に出す。文字と地図があり何かの資料かとテツが目を通すと酔いが一気に醒める。



「驚いたろ? ようやく見つけられたんだぞ。今のお前じゃ魔王に勝てない……取り戻して来い相棒を」




「ここにあいつがいるのかよ……パンドラが」

 

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