第二章
「遅刻だぁああああああ」
別に遅刻といほどの時間ではないがテツは元気よく鉄格子を開けて走り出す、朝飯にニノが用意してくれた食パンを口に加え少し乱れた制服を揺らし走る、太陽の光を受けて気持ちのいい朝を駆け抜けていく……こんな事をテツは一度はしてみたかった、漫画とかでよく見た光景だが一度もやってる奴を見た事がない。
ならばせっかくの機会だと自分で実行したのだ、ニノはまだシャツと下は下着とテツには刺激が強すぎる姿で大欠伸をしながら何事かと思うが一応は送り出す。
「やべぇ転校初日に遅刻なんて、こいつはやべぇ」
転校初日は昨日だったがテツの中で設定が決められ台本を読むかのように走りながら喋る、次のベタな展開は曲がり角で後に同じクラスになる女子生徒とぶつかるはずだが、何回曲がろうともぶつからない、もう同じ場所を5周はしたと思うがぶつかるはずがない。
いい加減走るのが疲れトボトボと歩きだす、誰かとぶつかるなんて神の仕業に違いないと思う、しかも奇跡でぶつかったとしても制服を着る謎のおっさんだ。
まぁこーゆのは本人が楽しんだ勝ちだが時間が立つにつれ空しさが込み上げてきて歩く速さも落ちる、気づくと校門前できていて黙って教室に向かう。
「おはよ~すっ」
教室に入ると誰も目を合わせずに数人の女子と男子が道を開ける、予想はしていた事だが実際やられるとキツイもんだ、後ろの窓際という絶好の席につきボッ~と空を眺めてしまう、行動だけ見たら学園物の主人公そのものだがテツには到底似合わない。
鐘の音が鳴りそろそろあの怖がりな担任かと思っていると校門前で教師が門を閉めようとしていると現れる。
食パンを加え。
少し寝癖でハネた髪で。
「遅刻だぁああ」と今にも言いだしそうな表情ではなく無表情で。
ニノは全力疾走で門を飛び抜けた。
「おおおはようございます」
教室に担任が入ってきて今日の出席をとると50音順に読み上げられていく、テツが元気よく返事をすると担任は肩をビクッと一度震え苦笑いで返してきた、生徒どころか教師にまで怖がられる始末にテツの溜め息が増える一方だ。
「おはよう!! 先生おはよう」
「ニニニノさん!! わかりましたから顔をいきなり近付けないでください」
変わり者――ニノは間違いなく変わり者だった、何を考えているのかわからず行動すら読めない、しかし人を殺したはずのニノが今日はいつにも増してテツには可愛くみえた。
ある一定以上に進化した科学は神話に出てくるような魔法とは大差がない、武器には必ず一つの魔法が備わりその役目は星の数ほどある、魔王との戦争の中で武器は更に進化し人が踏み込んではならない領域まで行こうとしてる……炎や水はもちろん中には光や風まで操る最新機種の武器まで出てくるようになっている。
全ては科学技術で構成されているが、魔法と変わりない事からいつしか科学は魔法と呼ばれ人の手に大きな力を宿していた。
「え、これ凄くね」
授業中についつい呟く、武器に魔法? それは剣に炎属性がついてるという事か? まるでゲームだ……改めてとんでもない世界に踏み込んでしまったと好奇心と恐怖を同時にテツが感じていると気になる存在がいる。
隣で寝息を立てるニノではなく前の席だ、色鮮やかなクラスメイト達の髪色の中でも目立つ銀髪だが髪色だけなら特に気にはしないんだが、最初の授業からときたま振り返り目が合うと素早く前を向くという行動を繰り返す。
「ん」
まただ一瞬目が合うと前を向いてしまう、銀髪が眩しい少し小さめの女の子、顔は後ろからだとよく見えないが可愛らしいと勝手に妄想中のテツ、声をかけづらいので言葉ではなく行動でテツは対話を望んでみる。
昔流行ったヴジュアル系のポーズ。
「……」
女子高生がプリクラを撮る時のポーズ。
「……」
上着を脱いでみる。
「……」
全て空振り、とゆうかこんな怪しいおっさんが気味の悪いポーズしてるのに女の子はこりもせず何回も見てくる、ますますわけがわからんと思っているとゴミが飛んできた。
こんな事をするのは一人しかいない、テツの初めての友達であり学園の救世主とも思えた薄い赤毛に眼鏡男エリオ、紙には「もうクラスの女の子に目をつけたかテツぅ~でもそいつはやめとけ」
なんかやめろと言われると反抗したくなるテツは授業終わり寸前で振り返ってきた銀髪少女に頬を膨らませ指を指して……
「ドゥーン」
「……」
昔友達にした一発芸をかますが空振り、自信があった分スベった時の恥ずかしさは生き地獄になる。