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瓦礫になり城門の役目を果たしてない門を潜り抜けると傭兵達の数は増え、街中にいた奴らよりも明らかに雰囲気違う。元は城へと続く庭だった場所は傭兵達に荒され廃墟に変えられていた。


街で見た傭兵達とはまず匂いが違う。悪臭やアルコールではなく血の匂いが体に纏わりついている。表情もどこかを見てるようで何にも関心を持てない……そんな顔をしていた。



「おかしいですね。こいつら私達が来ても見向きもしないなんて」



「皆どこかに逝ってるぜ!! まだ威嚇された方がいい、怖すぎるだろ」



ビクビクと怯えながらフェルの後に続くエリオに対しフェルは堂々と目の前の扉を開けると何本もの柱が倒れ埃臭い空間に出る。元は城の顔とも言えるホールだったのか広い。



「なんだこりゃ」



エリオが驚いたのは破壊つくされたホールではなく、そこに寝っ転がっている傭兵達。小さな瓦礫を大事そうに抱え喜ぶ者。何もない空間に向かいブツブツ喋る者。



「エリオいきますよ。簡単に進入でき敵は無警戒、これを逃すわけにはいきません」



まだ辛うじて上階に続く階段があり、一歩上がるたびに崩壊への音を鳴らすが二人はなんとか辿りつく。二階三階は崩壊が酷くほぼ全ての部屋は潰れ最上階へと行く。



「気になってたんですが、城に入った時から何か匂いませんか」



「へ? 確かに~なんて言えばいいか~独特な匂いだな」



シャツに汗が染み込み、それが時間かけて乾いたような匂いを連想させたフェルは進む。最上階は王室へと繋がる一本道だが瓦礫が邪魔で慎重に進んでいき最後の扉を開ける。



「グッ!! なんだこりゃ!!」



王室に入った瞬間に強烈な匂いが鼻を刺激し顔を歪めてしまう。王室には十人の傭兵が雑談を楽しんでいたが、どこかおかしい。笑っているが目には殺意や苛立ちが目立ち、時折手に持つ葉っぱをかじっていた。



「ゲマル葉……ですか?」



匂いを我慢しながら目を凝らしフェルは昔読んだ教本の記憶を引き出す。ゲマル葉――独特の味と匂いで食している人間に幻想を見せたり、急に苛立ち怒りだす副作用が発見されている。中毒性は一級品で一度ハマれば抜け出す事は不可能とまで言われた悪魔のような葉。



「おい!!」



エリオが声を張り上げると座っていた傭兵の一人が顔を上げヘラヘラと笑い出す。手に持っているゲマル葉を差し出し挑発するように。



「なんだ新入りかぁ~お前も葉っぱ欲しいのか? なら金をだな」



「この街を支配したがってる奴は誰だ?」



「へへ……ハハッハハ!! 坊主面白い事言うな~なんだてめぇもここのボスでも狙ってるのかぁ」



どこかチャカされてるような口調に勘に触りエリオが一歩前に出る。



「いいから答えろよおっさん」



「面白いガキだな~まぁ俺が一番の有力候補じゃねぇかなぁ~」



王室にいる傭兵達に首を傾けると皆おなじくヘラヘラ笑いながら答える。腰に下げた袋からゲマル葉を取り出しかじりながらエリオに指を指す。



「わかったかい坊主」



「あぁわかった。とりあえず後ろ見てみな」



王室の崩れた壁の隙間から街が見下ろす事が出て傭兵は言われた通りに見ると笑いが急に止まる。街の中央から煙が上がり微かに声が聞こえてくる。雄雄しい戦う傭兵達の声だ。



「俺達ベルカは死んじゃいねぇ」



たった一言で傭兵は目の前の成人してない子供の正体がわかり剣を抜く。それを合図に回りも殺気立ち二人を囲むようにジワジワ広がっていく。



「驚いたな。まさかベルカの騎士がまだ残っていたとは……坊主。あの煙はなんだ」



「決まってるだろ。お前ら傭兵達を皆殺しにしてんだよ。手始めにまずこの街を頂く」



「今更魔王に逆らう気か、傭兵にでもなればいいものを」



少し黙っていたフェルが溜息をつきエリオの前に出る。



「まったくです。昨日まで騎士はこれから未来がないだの、将来が不安だのと弱音を吐いてた輩が急に偉そうな事を言うなんて」



「いいいいじゃねぇか!! 俺だって言う時は言うんだよ!!」



「なら言葉だけではなく腕も見せてくださいエリオ」



二人は武器を抜き十人はいるであろう傭兵達と戦う。数では不利は圧倒的だが、ベルカが陥落して数々の実戦を積んできた二人には迷いがなくなりただ目の前の敵を殺すだけ、そんな考えしかなかった。 

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