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十二

「死にたくねぇぇええええええ!!」



腹を槍で突かれ臓物を垂らしながら泣き言を言いながら崩れいく者が一人。



「行かないでく……れ」



勇者を夢見て村を飛び出したが強者の前に倒れ、それでもテツの示した希望にすがったが勝利への道から蹴落とされる者が一人。



「振り向くな!! 生き残りたきゃついてこい!!」



ギンジの背中にしがみつくように囚人達は走る。追っ手は時間が立つにつれ数が増え次々に仲間を殺していく。三十いた仲間はもう半分以上いなくなりテツの顔に焦りと不安が張り付く。



「ギンジさんまだかよ!!」



「おいやべーぞ!!」



テツとマックスが愚痴を溢すとギンジも舌打ちを鳴らし振り向かず叫び散らす。



「うるせぇ!! 後少し……少しなんだよ!!」



何枚もの扉を破り落ちている武器を拾い戦い、何人もの犠牲を出し出口まで後少し。頭の中に描かれた地図を頼りに最後の扉を開くと一本道の先に光が見えてきた。



「あそこだ!! 見ろ、あそこだ!!」



「ライアン!! マックス!! 皆いるか!!」



希望にようやく手が届きそうになり笑顔に振り返ると絶望があった。生存者はマックスとライアンだけ。他の囚人達は全て殺されたか取り残された現実がそこにある。


考えが甘かった。半分なんてもんじゃない、生存確率はそんな高くないと人数が教えてきた。奥歯を噛み締め拳を握りテツは叫び散らしたい気持ちで胸がいっぱいになった。



「いくぞアホ!!」



マックスが勢いよく背中を叩き無理矢理手を引く。



「今更ヘタレるなよ大将!!」



尻に蹴りをいれて気合を入れなおすライアン。



「あぁ――…あぁ!!」



走る。石段の壁に挟まれるような一本道を四人は走り出す。出口の光は太陽とわかる距離まで近づくと通路に異変が起こる。天井から石の欠片が落ち、次第に一つの鉄格子がゆっくり落ちてきてしまう。



「閉じ込める気だ!! おい早く走りやがれ」



ギンジはそう言うが一番遅れ到底間に合いそうにない。テツが一番気になりギンジの手を引くが勢いよく振りほどく。



「いいから行け!! 自分の事だけ考えろ!!」



「でもギンジさん!!」



鉄格子が閉まる瞬間を想像すると今まで人生が全て終わる。そんな事を考え喉が焼け付こうと走り抜く。しかし全力以上の力を出しても出口は遠のき「やめてくれ」そんな言葉が出てしまう。



「うぉおおおらぁあああああ」



絶望という現実をまさに力技で捻じ伏せた男がいた。鉄格子と地面の隙間に体を潜らせ肩で支えていたマックス……巨体のおかけで支えているがみるみる内に鉄格子が下がってくる。



「はやぁああくしろぉおおおお!!」



膝をつき肩の骨が悲鳴を上げてる最中にようやくテツとギンジが目の前にくる。二人が潜り抜けるまで耐えねばと気合を入れると負担が少し和らぐ。



「だぁああああ見た目以上に重いなこれ!!」



「ライアンてめぇえええ!! 腹黒男が無理してんじゃねぇええ」



息を切らしテツとギンジが潜り抜けると同時に鉄格子が勢いよく地面に突き刺さり、一瞬二人が潰されたと思い見ると――無事だったがテツは鉄格子を蹴った。



「糞がぁあ!! マックス、ライアン!! 今こんなの開けてやるから待ってろ!!」



マックスとライアンがいたのは鉄格子の内側だった。



「ヘッざまぁみろ。格好つけるからこんな事になるんだぜ腹黒男が」



「そっちこそ我先にと格好つけといてよく言うぜ」



殴っても引っ張っても鉄格子はビクともしない。テツはそれでも諦めない。また失う、出会った頃は最悪の印象だったが今では大切な仲間を……失ってしまう。



「あ~もういいわテツ。ささっといけや」



「最悪だぜ。なんでこんな筋肉馬鹿と一緒なんだよ」



背中越しに手を振るマックス。

愚痴を吐きながらテツが教わった構えをとるライアン。



「ふざげるなぁああ!! 惚れた女のために頑張るだろ!! 世界中の女抱くんだろ!!」



「ギンジ頼むわ」

「その大将をよろしくな」



後ろで見ていたギンジがテツを無理矢理引きずりだすと我慢していた涙が溢れ出してしまう。片手を極められ身動き取れないが空いてる片手をバタつかせて叫び散らす。



「ギンジさん!! やめろぉおおお!! 見捨てんのかよ!! 今まで頑張ってきたあの二人を!!」



ギンジは何も言わずテツを出口まで引きずり出す。二人は日光の下にきて脱獄は成功したがテツは地面を何回も叩き、泣いているのか叫んでるのかわからない声を出していく。


牢獄の奥からはマックスとライアンの叫び声が聞こえ鎧の擦り合う音と共に悲鳴が響く。うなだれるテツを引き起こしギンジは走り出す。



「行くぞ」



膝が笑うように震え、汗で視界が塞がり、体を振り回すようにテツは走った。もう叫ぶ気力も泣く力も泣くしただただ走り続けていく。


生き残ったのはたった二人。テツの復讐への一歩は希望ではなく絶望で踏まれていった。  

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