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口の中の砂を吐いて呼吸を整える、脚は肩幅より少し広い位置に爪先は立て踵は少しだけ浮かせる、肩の力を抜き拳を上げてテツが数年間鏡で見てきた構えで拳を上げていく。


金髪はそんなテツを見て笑いをやめて眉間にシワを寄せる、木刀を捨てて拳を上げたテツの構えを見てなぜ戦うという意志を自分にぶつけてくるのかわからない。



「おいおっさん何のつもりだ、降参なら地べたに頭擦りつけろよ」



「続きだ餓鬼、構えろ」



本来素手と木刀なら基本的は木刀有利だがテツは学園に来る前にニノから聞いていた、この世界に素手で戦うという概念はない。正確には素手の技術がまだ開発されてなく武器を持った事を前提にした戦い方になる、これがどーゆ事か……テツはこの世界で唯一のボクシングを知る男なのだ。


いくらプロの世界で平凡な成績だったとはいえテツは元プロボクサーだ、毎日毎日サンドバックを叩き勝つために汗を流し積み重ねた技術がある、しかし相手も剣術を得意とするので油断など出来ない。


金髪は再び大笑いし体をくの字の曲げてしまう、もはや馬鹿というレベルではないと思い腹がよじれるほど笑っている、つられてクラスの何人かも笑うがテツの顔は無表情のまま。



「ヒャハハハハハおっさん俺を笑いころす作戦か、勘弁してくれ」



「おい、もう始まってるんだぞ」



大笑いしてる金髪に脚を使い全身をバネのように伸ばし間合いを詰めてのジャブ、鼻を軽く叩く程度だったが金髪は尻から地面に倒れ驚きの表情でテツを見上げると背中を向けて元にいた位置に戻っていく。


クラスメイトの笑い声が一斉に消えて静まりかえると金髪は額に血管を浮かび上がらせ立ちあがる、屈辱――そう屈辱を受けたのだ、名門に生まれ今まで敗北をしらなかった金髪が無様に鼻を叩かれ地面に転がった事実は屈辱でしかない。



「おぉ~怒ってる怒ってる」



「おっさん今からてめぇの歯全部折ってやる、覚悟しろ」



「ハハッなんだその台詞、餓鬼お前は強いんじゃない、強いと勘違いしてるだけだ」



金髪は剣術の腕はいいだろうがやはり子供、テツの安い挑発に乗り自ら先手をとり木刀で殴りかかるが……当たらない、怒りに任せて振ってるわけでもないのにかすりもしない。


テツは体を動かし避ける避け続ける、モーションが大きく避けるだけなら簡単だが問題は攻撃、金髪もだんだんテツの動きに慣れてきたのか振りを小さくし隙を無くしてくる、リーチで負けてる分懐は遠く攻め手にかけるが好機がきた。


当たらない展開に痺れを切らした金髪が自分から近づいてきた、近ければ当たるだろうとまさに子供の発想……まずは爪先で地面を蹴り腰に力を伝え腕を加速させ――



「オッ――…グゥ」



脇腹に突きさすように拳を入れると金髪の目が見開き口が閉じれなくなる、嗚咽を漏らし涎が口元から垂れて地面につく頃にはヨロヨロと後退していた、そしてここから残酷なショーが始まる、素手で顔面を切り裂くように殴りつけ脇腹も徹底的に叩く。


こんな子供にテツはツバを吐かれ脚で顔を踏まれたのだ、金髪の襟を掴み何度も腹に拳を叩きこむ、何度も何度も……最後は掴んでいた襟が破れ気づけば口から泡を吹いた金髪が首を力なく地面につけていた。



「なななな何やってるんですかテツ君!!」



茶色のストレートを揺らし朝見た担任の女性が駆け寄る頃には金髪は意識は消えており数人の体格のいい教師がテツを囲んでしまう、おそらく素手なら負けない自信があったテツだがここで我に返り両手を上げる。


テツはやりすぎた、生徒一人をタンカに乗せ運ばせるまで痛めつけてしまったのだ、首根っこを掴まれ連行されいき残った生徒達は目の前で起きた残酷な光景に顔から血の気が引いている。



「テツは凄いな、あんなの初めて見たぞ」



ニノが腕を組みサラッと言うと隣にいたエリオが声を震わせ言葉を出してくる。



「なななななんだありゃ!! テツが素手でエリート野郎をボコボコに……てか生きてるのかよ、おいテツは何者なんだ」



「交通誘導員だ」



「ハッ?]



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