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アベンジとベルカ騎士団本部隊が戦ってる時。

テツ達が必死に城門を潜り抜け戦いに身を捧げてる時。


世界の命運を決める戦いを握る魔王は薄暗い地下牢で胡座をかき一人の少女の前に座っていた。



「お前があの竜の子ねぇ~驚きだな」



何重にも巻かれた鎖に繋がれた少女――フェルは低く獣の如く唸り声を喉から魔王に向かい突き出すように吠える。竜の怪力をもってしても鎖は千切れなく手首に痣ができていく。




「竜の子なのに人間みたいな外見だな」



「竜はある一定まで成長すると姿を変えるんです。殺すなら今ですよ」



「だってよぉ~どうする我が愛しい妻よ」



褐色の肌に真っ白なドレスが輝く。肩を露出させスカート装備にすらなってないドレス一枚を着たイリアが腕を組み見下ろす。



「……おい小娘。お前は親の仇でどーあってもユウヤを殺すつもりなんだな」



「はい。更に言うと貴女もですよ魔女イリア」



フェルが怒りの表情から悪魔のような笑みに変えた瞬間に顔は蹴り上げられる。綺麗に整った顔は血の化粧で染められるが心は折れない。口の中の血を吐き捨てると蹴りを入れたイリアを睨む。



「たいした度胸だな小娘。剣を貸せ」



「イリア待て!!」



「ぬ」



無理矢理イリアを捕まえ下がらせると肩を掴む。



「ルーファス坊やの狙いはフェルだ。万が一に備えてこいつはとっておいた方がいい」



「フェルを逃がせば竜を敵に回す事になるぞ」



「おいおい十五年前に竜を倒したのは俺だぞ? 今は外で何万単位の戦いやってんだ切り札は多い方がいい」



ユウヤの言葉に納得はいかないが惚れた弱みか、子供がぐずるような声を出し離れていく。溜息を吐きフェルに向き直ると大きな痣を残し美人がだいなしの顔に近づく。



「フェルとかいったな娘。この戦いが終わったら遊んでやるから大人しくしてろ」



「魔王、貴方がこの戦いで敗れ私とやる前に殺されては困ります」



「……確かに言われてみれば。まぁ心配すんな、ベルカなんぞに負けやしねぇよ」



魔王は自信の塊のような男だった。頭の上から爪先まで黒で武装し三十代そこそこの老けた顔をしているが時折子供のような無邪気な顔を見せる不思議な男。とても魔王という大層な名を持つようには見えない。



「魔王様!!」



一人の傭兵が息を切らし走ってくると膝に手を当て呼吸を整えながら口を開く。



「ついに城内に侵入者あり!! 今は何人かで抑えてますがどれだけ持つか」



「ルーファスの野郎どんな隠し玉持ってきやがったかワクワクするな」



「その侵入者の中に……ニノ様が確認されました」



むくれてたイリアが肩をビクッと反応させ手で口を抑える。笑いが大きすぎて口で抑えたくなりイリアは声を殺し肩を上下させ笑う。



「そうか!! 俺の娘が部隊を率いてやってきたか!!」



「ククッあのバカ娘やってきたな!! ユウヤ私が出るぞ!!」



「ちょい待てここは父親だろうが!!」



火がついたように燃えあがるイリアは前に出て邪魔するユウヤを跳ねのけ牢屋から出ていく。



「私が腹を痛め生んだ子だ。ここは譲らんぞ」



二人の会話を黙って聞いてたがフェルは思わず口を開けてしまう。会話の中に聞き流せない事実があった。



「ニノさんが……貴方達の……子供ですって」



「なんだお前ニノの友達か。あいつ元気にしてたか」



「ぬ、確かに可愛い我が子だが、ここ数年会ってないからな」



今までで一番の力を振り絞りフェルは鎖を引き千切ろうとしもがく。今ままで見てきたニノの顔が全て脳裏によぎり力に変えていく。



「答えろ魔王!! どうして娘であるニノさんがベルカにいた!! なぜここに攻めてくる!!」



「あぁ~いきなりうるさくなりやがったなこの野郎が」



地下牢のほこりに汚れた銀髪を掴み動きを止めると息がかかるほどに顔を近づけていく。



「邪魔すんなよ小娘が。今はな親子同士の感動の再会すんだよ~寝てろ」



大きく振り被った拳を勢いに任せフェルの腹に叩きこむと先程まで騒がしかったフェルは言葉を失う。首はガクッと角度を落とし何度か咳き込むのを確認すると魔王も去っていく。



「おい待てイリア!! わかったジャンケンで決めよう」



「じゃんけん? なんだそれは。母と娘の感動の再会に邪魔をするな」



ユウヤとイリアはまるで娘と一緒にピクニックに行くような気分でどちらが最初に会うか言い争っていた。娘が殺しにくるとわかっていても親として嬉しくてたまらない……歪んだ愛の形で娘を出迎える。





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