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友達と馬鹿な話と少しエロイ話で盛り上がり、あの女子が可愛いだのあいつらが付き合ってるだの女子とも照れながら少しづつ話ていき――我がままは言わない、テツは自ら手放した学園生活を再び取り戻したかったが。


全ては幻想になる、休み時間が苦痛で授業中になると逆にホッとするがこれからの事を考えると不安になってしまう、友達どころの話ではない女子は完全に怖がり、男子に至っては目すら合わせない絶望的な状況。


そりゃそうだ、もし学生時代に33のおっさんがいきなり転校してきたらと思うと理由は嫌でもわかる、怪し過ぎるしなによりも怖いだろう、そもそもなんて話かけていいかわかるはずはない。




「はぁ~現実ってのは世界が変わろうともヘバりついてくるなぁ~ん」




頭にコツンと紙を丸めたゴミが当たる、とうとうイジメが始まったと思ったが紙を拾い上げ開くと何か書いてある『おっさん何者? 俺はエリオってんだ』と救いの文字が書いてある、飛んできた方向を見ると振り返った男子生徒が笑いかけてくる。


薄い赤毛に眼鏡をかけた男子が笑いかけてくる、まだ救いの神は存在していた、たぶんクラス1の変わり者だろう……こんなおっさんに迷いなく話かけてくるなんて普通じゃない、しかしその異常さが今のテツにとっては救いになる。


授業中は嬉しくて先生の話なんて聞いちゃいない、授業が終わるとエリオが教室が出ていく時に目でサインを送ってくる、テツももうなりふり構ってる場合じゃなくついていくと階段を上がりある場所に出た。



「いやぁ驚いたぜ、あ俺敬語苦手だがいいかな? 改めて俺はエリオでクラス1の変わり者だ」



雲と太陽が世界の半分になる場所――二人は屋上で向かい合う、運がよかったのか他の生徒はいなくテツはコンクリートの地面に座り込み空に顔を向けてとりあえず安堵の息を吐く、大切な第一歩を慎重にいかねばならない、エリオは活路になっていくはずだ、この学園生活でも大切な第一歩目の大切な友達に。



「ハハッそりゃそうだろうな、こんな怪しいおっさんに話かけるなんて普通じゃないなお前」



「言ってくれるねぇおっさん、まぁ大抵あってるのが泣けてくるが……ここのエリート気質がどうも肌に合わなくてな、元々落ちこぼれな俺にはな」



「どーゆ事だ、エリートと落ちこぼれが同じクラスにいるってのかよ」



エリオは懐から細い筒のような者を出し口に加え指先で触れると火がつく、これがテツが見た初めての魔法だった、口から煙出す姿からして煙草の一種だろうが世界が違うので何かまではわからない、屋上の手すりに両腕を乗せて空を気楽な顔で眺めながらエリオは教えてくれる、今現在ベルカ騎士学園での生徒事情を。



「いいか騎士になると考える奴は筋金入りのエリートか、勉強も出来ず他の学校に入れず落ちこぼれた俺みたいなのしかいないんだよ、勉強も出来ないって事は後は体で生きてくしかない……つまりは戦場で戦えってことだ」



「いやおかしいだろ、その理屈からするとお前のような歳で人生が決まっちまうって事になるぞ、そんな理不尽な事が」



「おっさん33って言ってたよな? そんな生きてきたのに今更何いってんだよ、ベルカどころか違う国でもこのシステムは変わらないぞ」



ここでテツはこの世界の厳しさを予感する、元の世界で考えれば高校生で一般企業につくか戦場へ出て傭兵にも似た暮らしになるかという選択を迫られ学力の能力で強制的に分けられるということだ、理不尽どころの騒ぎではない、この世界では常識なんだろうがテツには到底理解できる範囲を越えている。



「問題は次の授業で外での実戦訓練だ、エリートってのは見下すのが好きらしくてなクラスにもいるんだよ、美形で剣の腕もいい名門の子供が……性格は歪んでる最低野郎が」



「はぁつまり俺はこの縦社会のエリートと最下層が同時に集う面白すぎる学園に放り込まれたのかよ、おいエリオその胸糞悪い奴がどうしたって」



「次の授業になればわかるさ、テツって言ったよな? これは推測だが33にもなって学園にきたって事は俺が想像する以上に落ちこぼれなんだよな」



耳が痛い……この世界ではどうか知らないが元の世界では考える限りの落ちこぼれの要素を欲しいままにしてたテツだから否定は出来ない、エリオの問いに頷こうとすると鐘の音が鳴る、おそらくは授業開始の合図だろうと立ち上がりエリオと二人で屋上を出る。


そしてテツは縦社会の厳しさを身をもって知る事になる、その厳しさを知る場所は何の変哲もないグラウンドに似た広い砂地、生徒達が木製で剣の形を作った物を片手に持ち散らばっていく。


生徒同士が手に持つ木刀で打ち合う姿を見て授業内容を把握したがテツの回りには誰も近づこうともしない、まぁ当然の結果だと苦笑いしていると一人が近づいてくる、悪意のある笑みで敵意丸出しで。



「おいおっさん俺とやろうぜ、気になってたんだよなぁ~面白すぎるぜあんた」



金髪で整った顔、黙っていれば美形なんだが歪んだ笑みで大無しにしていく、屋上でエリオから聞いていたからすぐに察しがつき無言で木刀を構える、昔剣道部で見た真似ごとだが格好だけはつけてみる。


金髪はついに白い歯を見せるほどに笑い片手をダラリと垂らし近づいてくる、テツもいくら剣術の素人でも自分の間合いぐらいはわかるが……そこで重大な事に気づく、相手はエリートで自分は落ちに落ちてこんなわけのわからない世界にきた素人――



「ガッ!!」



気づく前に口の中で鉄の味が広がり奥歯がミシミシと悲鳴を上げる音が耳に入る、頬をあの堅そうな木刀で横殴りにされてテツの顔は一瞬形を変えてしまう、口の中を切ったらしく血が次々に溢れ出て何年ぶりかの痛さに戸惑っていると次の一撃で地面にひれ伏してしまう。


顔に足を乗せられ勝ち誇った金髪がツバを吐いてきた、最初何がされたのか理解できなかったテツだがさすがに気づき見上げると腹を抱えて笑う金髪がいた。



「ハハハハッ笑わせるなよおっさん~その歳で学園きたからどんだけ強いと思えば素人すぎんだろ~ハッハハハハハ!! おい皆ビビル事はねぇこいつ酷いぜ」



踏みつけられたまま顔を蹴られ転がりテツは大の字に空を仰いだ、夢見た学園生活なんてどこの世界にもなく現実という悪夢はいつまでも覚める事はなく……そんな考えをしていると自分の肩と拳が震えてる事に気づく。


なぜ震えているか? 単純だ、怒りという感情で全身が震えだし自然に立ちあがっていく、テツは数年だが自分の拳で飯を食べてきた誇りがあるが今その誇りを汚された、こんな成人にも達してない子供に。



「おい餓鬼」



怒りはテツをただの落ちこぼれではなくプロボクサーに姿を変えていく。




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