8.「vs世界樹」
「ギイイイイイイイ!」
死んでいたはずの世界樹が、闇の力で強引に復活、〝モンスター化〟したとも言えるその黒く染まった異形から巨大な蔦が伸ばされて、俺たちに迫る。
「はあああああああああ!」
「やあああああああああ!」
「おらああああああああ!」
俺、アイシィ、そしてファイフィが正拳突きによって飛ばす衝撃波・氷柱・炎によって、俺たちは蔦を迎撃することに成功したが。
「ギイイイイイイイ!」
「「「「「うわあああああ!」」」」」
「「「「「きゃあああああ!」」」」」
騎士団と魔法師団の団員たちの何人かが、迎撃に失敗して蔦に捕まり、空高く持ち上げられる。
「そうはさせん!」
「助けるわ!」
「ハッ! 世話の焼ける奴らだね!」
俺たちが飛ばす遠距離攻撃によって、蔦を破壊・切断・焼き切り、落下した彼ら彼女らを他の団員たちがキャッチして救出する。
「まだ弱いですわね。復活したばかりだからかしら?」
高空にて小首を傾げるツーリに、アイシィが悲痛な声を上げる。
「お願い、ツーリ! 正気に戻って!」
だがしかし、その声は届かない。
「これで本来の――いえ、本来以上の力が出せますわね」
ツーリが手を翳すと、世界樹全体が漆黒のオーラに包まれる。
「さぁ、今度こそ全て殺し尽くすのですわ」
「ギイイイイイイイ!」
バッと手を動かしてツーリが号令を下すと、世界樹は再び蔦を伸ばした。
「はあああああああああ!」
「やあああああああああ!」
「おらああああああああ!」
俺たちは再度迎撃を試みるが。
「なっ!?」
「えっ!?」
「チッ!」
今度は全て弾かれてしまい、慌てて跳躍、何とか攻撃を躱す。
「もう貴方たちの攻撃なんて、効かないですわ」
勝ち誇るツーリに抗い、「そんなことないわ!」「舐めるんじゃないよ!」とアイシィとファイフィが攻撃を続けるが。
「「くっ!」」
やはり通じない。
硬化している?
それとも、防御魔法のようなものか!?
俺は、蔦による攻撃を避けつつ、必死に思考を重ねる。
手強いが、攻略出来なくは無いはずだ。
だって、〝大抵のものは拳で破壊出来る〟はずだから。
これが俺のモットーだ。三十年間、その信念でやって来たのだ。
まずは、試しに。
「はあああああああああ!」
ビッグブラックドラゴンを屠った巨大衝撃波をぶつけてみるが。
「無駄ですわ」
弾かれて、ダメージを与えられなかった。
それなら、逆だ!
「はあああああああああ!」
今度は、小さな衝撃波を複数飛ばしてみた。
「ハッ! 先生も焼きが回ったのかい? そんな小さな衝撃波じゃ――」
「いえ、師匠には何かお考えがあるに違いないわ!」
小さな衝撃波は、蔦にぶつかると。
「なっ!?」
爆発、破壊した。
「一体何をしたんですの!?」
混乱するツーリと対照的に、アイシィは冷静だった。
「そっか! 衝撃波を〝凝縮〟したんですね! その分見た目は小さくなったけど、破壊力は逆に上がったってことですね!」
「その通りだ。流石アイシィだな」
「えへへ。ご褒美に頭撫でて下さ――じゃなくて、私たちも続きます! やあああああああああ!」
「ハッ! あたいもやってやるさ! おらああああああああ!」
何かの誘惑を断ち切るかのように頭をプルプル振ったアイシィとファイフィが氷柱と火炎を凝縮した上で放つ。
「やったわ!」
「ハッ! 伝説の世界樹って言っても、大したことないね!」
迫り来る蔦を切断・燃やすことに成功した。
「こんなはずはありませんわ! ダダークさまに強化して頂いた私の力は最強のはずですもの! 世界樹よ、殺すのです!」
「ギイイイイイイイ!」
ツーリが再び命令すると、世界樹は、切断された部分から再び新しい蔦を伸ばして襲い掛かってくる。
「再生能力持ちか……厄介だな……」
このままじゃ、埒が明かない。
ツーリを何とか元に戻せれば良いんだが……だが、傷つける訳にはいかないし……
うーん……
「師匠! 師匠なら、ツーリを元に戻せるんじゃないですか?」
「いや、そんな無茶振りされてもな」
流石にそれは無理だよ、アイシィ。
俺はただのしがない田舎道場のおっさん師範だから。
あれ? でも……
「もしかしたら、出来るかも」
俺は、教え子たちの方に向き直る。
「アイシィ、ファイフィ。今からツーリを元に戻してみる。だから、援護してくれ」
「分かりました、師匠!」
「ハッ! 任せなよ、先生!」
俺はそこら中に伸ばされている世界樹の巨大な蔦の上を走り跳躍、上にある枝に着地するとともに再び走り跳躍、ということを繰り返して登っていく。
「煩わしいですわ! 死になさい!」
「ギイイイイイイイ!」
ツーリの指示で、世界樹が俺を捕まえようと、数多の蔦を全方位から伸ばしてくるが。
「やらせないわ! やあああああああああ!」
「ハッ! あたいの眼前で先生を傷付けられるとは思わないことだね! おらああああああああ!」
アイシィとファイフィの氷柱と炎によって阻止され、俺は更に上に向かう。
「ギイイイイイイイ!」
「おっと! はあああああああああ!」
オリハルコンと同程度の硬度を持つ〝種〟が複数飛ばされてくるが、空中で正拳突きを繰り出し、衝撃波で迎撃する。
頂上に到達した俺は、更に跳躍して、頭上のツーリへと迫る。
……妙だな……
……自由に空を飛べるはずなのに、逃げない……?
拳を構えた俺をその瞳に映したツーリは。
「貴方に、〝この娘〟を殺せますの?」
「!」
下卑た笑みを浮かべる。
そうか。
〝操られているツーリ自身〟が人質なんだ。
俺たちには、決して手を出せないと思っている。
「甘く見るなよ! 確かに俺はもうすぐ四十のおっさんだが、〝武闘家〟だ! 武闘家ってのは、〝拳〟で〝全部〟解決するんだよ!」
「がはっ!」
俺は、躊躇なくツーリの胸に正拳を食らわせた。
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