5.「vs氷の精霊王女アイシィ」
「俺とアイシィで模擬戦とか、もう必要ないだろ! 副団長が実力を認めてくれたんだから!」
「いえ、まだ不十分です! 私はまだ、先程の団員たちの失礼な態度を許していません! 団員全員が地に這い蹲って涙を流しながら『パーチさま、私が間違っておりました。今後は私の人生全てを――いえ、この命すら捧げます!』と誓うまでは、決して許しません!」
「それもうカルト教団だろ! 危ねぇわ!」
「何とか考え直して――」と、尚もアイシィに懇願しようとする俺だったが。
「おお! アイシィさまとパーチさんの勝負だ!」
「アイシィさま滅茶苦茶強いからな! S級ランクの団長ですらまだ一本取れたことないし!」
「でも、パーチさんも規格外だったぞさっきのアレ!」
「この勝負、一体どうなっちまうんだ!?」
うわー。
団員たちがめっちゃ盛り上がってる。
「パーチさん! 僕もパーチさんとアイシィさまの勝負、見たいです!」
ヴィンスまで目をキラキラと輝かせている。
っていうかお前、最初はツンツンしてた癖に、懐くとそんな子犬みたいな感じになるのな。
「はぁ。分かった」
「ありがとうございます、師匠!」
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
どうしてこうなった!?
精霊の王女と。しかも、一国の守護精霊と模擬戦とか。
おっさんには荷が重すぎるって……
※―※―※
「それでは行きます、師匠! はあああああああああ!」
腰を落とし右拳を引いたアイシィの全身から膨大な魔力が迸る。
我が弟子ながら、流れるような動きが美しいな。
十年前教えた時も、三人の精霊の王女たちの中で、一番形が綺麗だったからな。
ヴィンスは俺を舐めていたから、付け入る隙があった。
が、アイシィはそんなことは無い。
むしろ、俺を過大に評価してくれているため、全力で叩き潰しに来るだろう。
「まぁ、頑張るとするか……死なないように……」
同じく俺も腰を落として、右拳を引く。
「やあああああああああ!」
勇ましい声と共にアイシィが正拳突きをする。
「あ、そういう感じ!?」
と同時に、彼女の周囲に無数の氷柱が出現、猛スピードで飛んでくる。
武闘と氷魔法の融合という感じだ。
「師匠! どうか私の愛を受けて止めて下さい!」
「多過ぎて無理!」
迫り来る幾多の氷柱に対して、俺は左右の正拳突きを素早く繰り返す。
「はあああああああああ!」
それぞれの正拳突きから衝撃波が発生し、氷柱一つ一つを的確に撃ち抜き、相殺する。
「流石です! 師匠! では、どんどん行きますね! やあああああああああ!」
嬉々として再び正拳突きを繰り出すアイシィ。
「それ! ズルく! ないか!?」
こっちは一回の正拳突きで一個の衝撃波しか生み出せないのに、向こうはたった一度の正拳突きで大量の氷柱を放てるなんて。
まぁ、その気になればこの辺一帯を全部凍らせる、なんてことも出来るだろうし、俺を取り囲むように氷柱を出現させて、四方八方から一斉に攻撃する、なんてことも可能だろうから、俺に合わせた戦い方をしてくれているだけ、まだありがたいけどな。
「でも、このままじゃ埒が明かないな」
高速で飛ばされる氷柱、迎撃する俺、という構図は変わらず、戦局に変化はない、
そこで俺は、一計を案じることにした。
「拳の握り締め方、力の入れ方、打ち出す角度、姿勢を微妙に調整、あとほんの少しだけ捻りも加えて……」
「何をブツブツと仰っているんですか!? も、もしかして……プロポーズですか!?」
「うん、違う」
じゃあ、やるか。
上手くいくと良いが。
「はあああああああああ!」
まずはアイシィが新たに飛ばして来た全ての氷柱一つ一つを、〝粉々〟に破壊する。
文字通りあまりにも小さくなったそれは、〝氷霧〟となり、全ての氷柱で行われることで辺り一帯が真っ白になり、視界を奪う。
「目くらましですか!? 流石は師匠です! ですが!」
アイシィが、〝氷霧〟を突っ切って高速で近付く気配に対して正拳突き、氷柱を飛ばす。
「どうです、師匠!? 流石の師匠も、これは躱せな――」
「俺はこっちだ」
「!?」
〝氷霧〟を切り裂く〝衝撃波〟を囮にした俺が、逆側から接近。
「あ……参りました……」
アイシィの眼前で拳をピタリと止めた俺に、アイシィは降参した。
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
「スゲー! 良いもの見れた!」
「頂上決戦って感じ!」
「凄過ぎだろ! 鳥肌立ったし!」
盛り上がる団員たち。
「お師匠さま! すごかったです! 僕、感動しました!」
ヴィンスが目をウルウルさせて駆け寄ってくる。
いつの間に師匠に!?
「では、負けた私は師匠のものとなり、心身ともに捧げる、ということで宜しかったでしょうか?」
「うん、良くない」
何故か頬に両手を当て、うっとりするアイシィ。
本当、アイシィは冗談が好きだな。
まぁ、とにかく、何とか死なずに済んで良かった。
これで全部終わって――
「では、みんな! ここからは、師匠がみんなの戦闘能力をパパッと底上げするから!」
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
そうだ。
もう一つ問題が残ってたんだった……
俺は頭を抱えた。
お読みいただきありがとうございます!
もし宜しければ、ブックマークと星による評価で応援して頂けましたら嬉しいです!




