16.「拳で砕く」
「なっ!?」
「嘘……でしょ!?」
「ハッ! これはちょっと……笑えないね……!」
「大きい~」
天から落ちてくる〝大陸〟。
空は全て大陸によって埋め尽くされており、辺りは暗くなり、逃げ場はどこにもない。
どうやらダダークは、〝俺たちが暮らしているこの大陸〟を〝複製〟して〝逆さま〟にした上で、天から落としたらしい。よく見ると、山などの自然はそのままだが、流石に建物などの人工物や人間は複製出来なかったらしく、存在しない。そして、不思議な力が働いているのか、何故か池や川の水は落ちて来ない。
「てめぇらが圧死するところを、文字通り高みの見物させてもらうぜ。クックック」
術者本人は通り抜けることが出来るらしく、高空へと舞い上がったダダークは、逆向きになった荒野の地中へと溶けるようにして消えた。
このままじゃ、俺たちだけじゃなくて、この大陸に住む人たちが全員死ぬ!
迎撃するしかない!
「特大の衝撃波で! はあああああああああ!」
アイシィたちと共に地面に舞い降りた俺は、腰を落とし、雄叫びを上げながら、全身の力と魔力を後ろに引いた右拳に掻き集めるが。
「くっ! 足りない!」
みんなが〝膨大だ〟と褒めてくれた魔力量だが、それでも大陸を破壊するには足りない。
「師匠! 私の魔力を使って下さい!」
「ハッ! あたいのも使いなよ、先生!」
「サンダリの魔力~、コーチにあげる~」
「おおお! お前らありがとうな!」
アイシィ、ファイフィ、そしてサンダリが俺の背中に触れると、熱い魔力が注ぎ込まれてくる。
「アクエちゃんも協力するっす!」
「吾輩も尽力させて頂くであります!」
「おっちゃん、あたしのも使って!」
「私も協力させて頂きますわ!」
「おおおおおお! みんな、ありがとう!」
アクエ、ソイリィ、ウィンドニー、そしてツーリも俺の背に触れる。
更に魔力が体内に流れ込んでくるが。
「くっ!」
それでもまだ足りない。
相手は〝大陸〟なのだ。
巨大岩や山どころか、〝山脈〟ですら何回も破壊出来るほどのパワーが要る。
「師匠!」
「!」
大陸が俺たちに迫る。
非現実的且つ圧倒的な光景に息が詰まる。
何もしなければ、圧死するだけだ。
まだ足りないけど、一か八か、このまま放つしか――
と、その時。
ぽわぁ
「!」
微精霊と小精霊が姿を現した。キラキラと輝きながら、俺に近付いてくる。
かと思うと、その数が一気に増えてき。
ぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぽわぁ
「!」
集まってまるで巨大な光り輝く球体のようになった彼女たちが皆、俺の身体にくっついて。
「おおおおおおおおおおおお!」
常軌を逸する量の魔力が注入されて、力が溢れてくる。
これなら!
「ありがとうな、みんな! 行くぞ! はあああああああああ!」
俺は天から迫る大陸に向けて正拳突きを放つ。
と同時に、超巨大衝撃波が生じ、真っ直ぐ空に向かって飛んでいく。
「クックック。無駄な足掻きだ!」
上空から嘲笑が響くが。
「無駄なんかじゃない! 守ろうとするみんなの力を! 仲間を想うみんなの意思が込められてるんだ! 食らえ! はあああああああああ!」
眼前に迫った大陸に超巨大衝撃波が激突、一気に貫くと、その衝撃が端々にまで伝わって。
「何だと!?」
途方もなく巨大な大陸が粉々に砕け散った。
「チッ! だが、破壊したな、この超巨大な土と岩の塊を! 空から降り注ぐ土塊と岩塊で人類は滅亡だ! ヒャハハハハハハ!」
哄笑を上げるダダークだったが。
「はぁ!? どうなってやがる!?」
大勢の微精霊と小精霊に貰った特別な魔力だったからか、はたまた土の精霊王女であるソイリィの魔力も貰っていたおかげか分からないが、俺が願った通り、大陸は全て〝砂粒〟の大きさにまで細かく粉砕される。
「『偉大なる風』!」
更に、大量の砂が全てウィンドニーの最上級風魔法によって遥か遠くへと運ばれていく。
想像を絶する質量が全て消えた後、ダダークは、「馬鹿にしやがって! こうなったら、てめぇら全員俺様が直接殺してやる!」と、俺たちに向かって急降下してくるが。
「がはっ!? なっ!?」
途中で止まり、吐血する。
「俺たちの力で放った衝撃波、お前にも届いていたみたいだな」
「馬鹿な!? 無敵の防御魔法を破壊し、剰えこの俺様にダメージを与えやがったってのか!?」
ダダークが「だが、俺様が無敵なことには変わりねぇ! 俺様には再生能力があるからな!」と胸を張ると、吐いたはずの血が奴の体内に戻っていく。
この強さプラス、再生能力持ちか……
しかも、微精霊と小精霊たちは姿を消してしまった。
だが、今なら少なくともダダークは防御魔法は展開していないはず! 好機だ!
「はあああああああああ!」
「やあああああああああ!」
「おらああああああああ!」
「えいや~」
俺の衝撃波、アイシィの氷柱、ファイフィの猛炎、そしてサンダリの雷撃が放たれ、ダダークに食らわせることが出来たように見えたが。
「俺様は〝闇〟の精霊王ってことを忘れんなよ?」
ダダークだと思っていたものが黒く変色すると、ただの〝闇の塊〟へと変化し消滅、その背後に重なるように静止していた本物のダダークが姿を現す。
「お返しだ。『ジェットブラックブレード』!」
「くっ!」
虚空で回転するダダークから無数の漆黒刃が放たれ、俺は跳躍、仲間たちは舞い上がり、何とか回避する。
こうなったら、もう一度みんなの力を貰って、微精霊と小精霊たちの力も借りて――
「クックック」
俺の思考が、ダダークの嘲笑で遮られる。
「何がおかしい?」
「気付いていないのか?」
上空のダダークは、俺を見下ろすと。
「さっきてめぇらが俺様の攻撃から必死に逃げ回っていた隙を突いて、てめぇの大切な〝弟子たち〟に魔力を飛ばして、〝精神操作〟してやったんだよ! ヒャハハハハハハ!」
荒野に高笑いを響かせた。
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