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15.「vs魔王(闇の精霊王)ダダーク」

 空から嘲笑を浴びせるダダーク。


 見渡す限り、大勢のモンスター・人間の死体が折り重なり、正に死屍累々たる有様だ。

 皆、身体中に〝穴〟が開いている。


「ヴィンス!」


 アイシィが駆け寄るが、武闘団副団長の彼は既に事切れていた。


「誰か……生きている者はいないのか……?」


 祈るように呟いた俺が、戦場をフラフラと歩き回ると。


「……パーチ……さん……」

「!」


 消え入りそうな声が聞こえた。


 見るとそれは、俺が武闘団の戦闘能力を底上げした際に、「これならきっと、生き残れそうです!」と、喜んでいた小柄な少年ティージャだった。


「……来て……下さった……んですね……」

「ああ。……遅くなってすまなかった……」


 俺のせいだ!

 もっと早く来ていれば……!


「……せっかく……強くして……もらったのに……すいません……」

「何言ってるんだ! 祖国のために、戦士として立派に戦ったんだろうが! 自分を誇れ!」

「!」


 ティージャの瞳に、失われていた光が一瞬だけ戻る。


「……どうか……魔王を……倒して……ください……!」

 

 ティージャの頬を涙が伝う。


「ああ、任せておけ!」


 彼の手を強く握ると。


「……良……かっ……た……」


 安堵したように息を引き取った。


「クックック。別れの儀式は済んだか? てめぇら劣等種族同士の最期の語らいは実に滑稽で、笑いを堪えるのに必死だったぜ」

「!」

「こんな酷いことをしておいて、更にうちの団員や師匠のことまで馬鹿にして! 絶対に許さないわ!」

「ハッ! これほどのクズとはね! 躊躇なくぶっ殺せるってもんだ!」

「サンダリ~、悪いやつ倒す~」


 アイシィとファイフィのみならず、サンダリまでもが怒りで拳をきつく握り締める。


 あまりにも酷い惨状と侮蔑の言葉に、俺も頭に血が上りそうになる。


 けど、駄目だ!

 冷静に状況を分析しろ!


 じゃないと、恐らく――〝俺たち〟も〝一瞬で殺される〟。


 空から見下ろすダダークは、一人だ。

 精神操作していたであろうモンスターの軍勢は、全員死んでいる。


 そして、モンスターも人間も、みんなの身体中に開いた穴。

 何かで貫かれたのか? しかも、モンスターたちも巻き添えにして?


「クックック。仲間を失って寂しいだろ? 安心しろ。てめぇらもすぐに仲間のもとに送ってやる」

「!」


 ダダークが無造作に手を翳す。


 来る! 恐らく〝最短距離〟から!


「みんな、飛べ!」


 大きく跳躍した俺につられて、アイシィたち三人も舞い上がると。


「「「!」」」


 一瞬前まで俺たちがいた場所に、岩で出来た無数の巨大な棘が地面から生えた。


 荒野を覆い尽くす程の夥しい数の棘に、騎士団・魔法師団、全員S級まで戦闘能力が上がっていたはずの武闘団までもが全滅した理由が分かってしまう。


 ソイリィから奪った土精霊の力をこんな風に使いやがって!


 アイシィに抱き抱えられながら眼下を見ると、岩棘は更に伸びて迫ってくる。まるで獲物を求めるが如く。


「でも、それだけならそれ程の脅威じゃない! 今の内に術者を叩けば!」


 ダダークを睨み付けるが、アイシィが悲痛な声を上げる。


「師匠! 上もです!」

「!?」


 見上げると、空には数え切れない程の水槍がこちらを狙っていた。


「ハッ! 両側面からも来るよ!」

「後ろも~」


 左右と背後には、幾多の風刃が。


「そして正面には――」

「聖樹だ。〝魔樹〟と呼んだ方が良いかもな」


 朽ち果てたはずの世界樹が、再びその巨大な姿を現す。

 漆黒のオーラで覆われたその前には、硬化した数多の巨大棘、その最上部にはダダークが立っている。


「くっ!」


 精霊王女たちから奪った力が、俺たちを追い詰める。


「ヒャハハハハハハ! これが俺様の力だ! てめぇらも串刺しになって死にやがれ!」


 ダダークがパチンと指を鳴らすと、上下前後左右から同時に棘・水槍・風刃が襲い掛かる。


「俺は正面と上を!」

「私は左右を!」

「下やる~」

「あたいは後ろと、足りない所を!」


 素早く役割分担をして、猛攻を凌がんとする。


「はあああああああああ!」

「やあああああああああ!」

「おらああああああああ!」

「えいや~」


 俺は正拳突きにより衝撃波を飛ばし、俺を抱き抱えているアイシィは、両手の指を動かして氷柱を放ち、サンダリは少ない手数ながらも、一発一発の貫通力と破壊力を極限まで高めた雷撃を発動、ファイフィは手数の多さを活かした膨大な数の猛炎で、それぞれ迎撃する。


 みんなかなり頑張ってくれている。

 だけど。


「くっ! 数が多過ぎる!」


 必死に相殺しても、追い付かない。


 ここままじゃ――


 棘の群れに――


「呑み込まれて――殺される!」

 

 迎撃が間に合わず、世界樹の棘・水槍・岩棘・風刃が俺たちに届く寸前。


「何だと!?」


 あれ程あった棘・水槍・岩棘・風刃が全て消えていた。

 更には、世界樹も再度朽ち果て、崩れ落ちていく。


 振り返ると。


「フッフッフ。この水も滴る良い女アクエちゃんがやってきてやったっすよ!」

「吾輩も馳せ参じたであります!」

「ちっちゃいままだけど、あたしの魔法も気持ちもみんなに負けてないし!」

「アクエ! ソイリィ! ウィンドニー!」


 水・土・風の精霊王女たちの姿があった。


 更に。


「救って頂いた御恩をここでお返しいたしますわ!」

「ツーリ!」


 仲間たちから魔力を分けてもらったのか、力に満ち溢れた木の精霊王女もまた、空に浮かび、緑色のドレスの裾を摘まんでカーテシーを行う。


「アクエちゃんたちがアイツの力を抑え込んでおくっすから、その隙にあんたたちはアイツを倒して欲しいっす!」

「分かった! 任せておけ! ありがとう!」


 特にウィンドニーなんて、あんなに小さくなったのに、戦場に助けに来てくれるなんてな。確かに、他の子たちに気持ちで負けていないな。


「ちょっと! あたしちっちゃいんだから、巻き添えを食ったらぺちゃんこになっちゃうし! 早く離れるし!」


 前言撤回。やっぱ気持ちで負けとるやんけ。


 いや、でも――


「それで正解だ! その方が、俺たちも遠慮なく全力で戦えるからな!」


 ダダークを真っ直ぐに見据える。


「クックック。精霊どもの力を抑え込んだくらいで調子に乗るなよ? そんなものなんかなくても、俺様は最強なんだよ! 俺様が〝闇の精霊王〟であり〝魔王〟である理由を、その身体でとくと味わいやがれ! おらぁ!」


 ダダークが天に手を翳すと。


「貴重な体験させてやるぜ! てめぇらが住んでる大陸を〝逆さま〟に見るっていう体験をな!」

「「「「!?」」」」


 〝空〟から〝大陸〟が〝落ちてきた〟。

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