13.「vs水の精霊王女アクエ」
水の精霊王女アクエが生み出した超大型津波によって呑み込まれた俺たち。
水の勢いがすごくで、流されて離れ離れにならないようにと、ソイリィがそれまで以上にギュッと背中から俺にしがみつく。
「ごばぐばびばびべべ(どさくさに紛れて)ばばぎぼぎぎょぶび(私の師匠に)がびがびぶびべぶぼご(何抱き着いてんのよ)、ごぼごぼぼぶべぼ(この泥棒猫)!」
少し離れた所で、鬼のような形相でアイシィが、俺が背負っているソイリィをビシッと指差して何か喚いている。
うん、何言ってるか分からんが、何か怖いし、取り敢えず放っておこう。
一応、津波に呑まれる前に思い切り空気は吸い込んでおいたから、暫くは持つが、アイシィたちはそこまで息が続かないかもしれない。早いところ、何とかしないと。
と言っても、見上げると、水面は遥か上だ。
本来ここは荒野のはずなのだが、尋常ではない水量のせいで、一瞬で水中深くに沈められてしまった。
「急浮上するであります!」
俺と密着しているためか、魔力を通じてなのか分からないが、水の中なのにソイリィの声が聞こえたと思った直後。
おおっ!?
俺の足下に岩で出来た細長い板が出現、俺たちを一気に浮上させていく。
「ぷはぁっ!」
水面を突っ切り浮上、水の上に浮いた細長い岩盤の上に立つ俺に、ソイリィが説明する。
「以前異世界転生者に教えてもらったであります! これは〝サーフィン〟と呼ばれるものであります!」
彼女曰く、俺が乗っている板は、サーフボードと呼ばれるものらしい。
「大きいのが来るであります! 波に乗るであります!」
いや、おっさんにそんな無茶振りしないで! と思ったが。
「よっ!」
やってみたら、意外に出来た。
巨大な波が迫る中、まるで半トンネルのようなアーチの中を、両手でバランスを取りながら、俺は背中のソイリィと共に猛スピードで進む。
「このまま真っ直ぐであります! 出来るだけアクエのいる場所に近付くであります!」
「分かった!」
「ちなみに、感知魔法を使ってるでありますが、反応が一つじゃないであります!」
「分身したり出来るのか!?」
「いえ、そんな能力はあの子には――いや、まさか!? ……でも、それなら……」
俺の背中で、ソイリィが何やら思考する。
「……分かったであります! 恐らくアクエは、水の中に隠れるために、自身を透明化させた上で、身体を幾つかに分離しているであります!」
「分離!?」
「そうであります! 恐らく水中限定の能力だと思うでありますが、それなら、感知魔法への反応が大きかったり小さかったりする理由が説明出来るであります!」
「なら、でかい反応のところに行けばいいってことか!」
「ご名答であります! 恐らく上半身――の大部分がそこにあるであります!」
と、そこに、自身に近付けまいとするアクエの意思か、幾多の水槍が飛ばされてくる。
「はあああああああああ!」
正拳突きによる衝撃波で迎撃しつつ、アクエの上半身がある場所へ近付いていく。
「ここからは、また水中に入るであります!」
「分かった!」
息を大きく吸い込んだ俺たちは、水中へと潜った。
えっと……どっちだ?
おっさん、ソイリィのナビがないと迷子になっちまうよ。
って言いたくても、ソイリィからの声と違って、俺の声はソイリィに届かないんだよな。
「失礼するであります!」
「!?」
俺たちの身体が、それぞれ鎧のように薄い岩で覆われていく。
シュンッ
おおっ!?
どうやらソイリィは岩鎧を魔法で動かしているらしく、すごいスピードで水中を進む。
あ、何か俺にも感じ取れるようになって来たかも!
微精霊と小精霊のおかげか、はたまたソイリィと密着したことで出来るようになったのか分からないが、このまま真っ直ぐ進んでいった先にアクエがいることを感じ取れた。
と、その時。
「ギイイイイイイッ」
「「!?」」
いや、水の精霊王女だからって、そんなもんまで召喚出来るのかよ!?
突然目の前に巨大なイカのモンスターであるクラーケンが出現した。
くっ!
触手が次々と伸ばされ、襲い掛かってくる。
ソイリィ、ナイス!
それら全てを、ソイリィが岩鎧を通して身体を動かすことで素早く回避する。
はあああああああああ!
「ギャアアアアアアアアッ!」
超巨大ドラゴンを屠った時と同じく、力を溜めて放った巨大衝撃波によってクラーケンを撃破。
見えた!
アクエの上半身が姿を現した。銀色のサイドテールが水中で揺れる。
もう逃げられないと思った彼女が、自分で透明化を解いたのだろう。
他の場所へと飛ばしていた両腕と下半身もスーッと引き寄せられて一つになる。
俺が今、元に戻してやるからな!
そう思い、俺が近付いていくと。
キーン
「!?」
彼女の身体の中心部分に魔力が凝縮されていき、あまりにも圧縮されたそれは、眩い輝きを放つと同時に、今にも破裂しそうで。
〝自爆〟しようとしてるのか!?
させるか!
必死に俺は、彼女の魔力を〝感知〟する。
そこだ!
爆弾のように凝縮した魔力を起動するために使っている魔力の通路を発見、その通り道である腹部の右下に対して、正拳突きによる魔力を飛ばすことで破壊、阻止する。
驚愕に目を見開くアクエの胸に拳を叩き付け、〝闇の魔力〟を破壊すると。
「ぷはぁっ!」
あれだけあった大量の水が全て消失、空中に投げ出された俺たちは、落下を始める。
「……もう限界……であります……!」
「ソイリィ!」
魔力も呼吸も精神力も使い果たし、身体が離れた彼女に手を伸ばすも、届かない。
「師匠!」
「ハッ! 根性見せたじゃないか、ソイリィ」
「アクエ~、おかえり~」
俺たち三人を、それぞれアイシィ、ファイフィ、そしてサンダリが飛んできて空中でキャッチ、ゆっくりと地上に舞い降りた。
※―※―※
「アクエちゃん、猛反省っす! ごめんなさいっす!」
「この吾輩がまさか精神操作されるなどと、痛恨の極みであります! 謝罪申し上げるであります!」
アクエが頭を下げ、ソイリィは土下座していた。
「いや、俺たち全員無事だったし、お前たちは誰も殺してないんだろ? ここがだだっ広い荒野だったおかげで、一般人にも被害は無いしな。だから、気にしなくて良い」
その言葉に、だがしかし二人は、それでは気が済まないと、納得しなかったようで。
「こうなったら、アクエちゃん、身体でお詫びするっす!」
「吾輩、死んでお詫びするであります!」
「いや、二人ともやめろ。脱ぐな。そして自殺しようとするな」
服を脱ごうとするアクエを、「何師匠に裸見せ付けようとしてんのよ!? 私だってまだ見せてないのに!」と、意味不明なことを喚きながらアイシィが止めて、鋭い岩の破片を生み出して自身の首を掻っ切ろうとするソイリィをファイフィが「やめときな」と殴って止めると、「痛いであります!」と、自殺しようとした者とは思えない抗議の声を上げる。
「はぁ。もう、何なの、あんたたちは?」
その光景に、シスリアが深い溜息をついた。
※―※―※
「アクエちゃん、ビックリっす! あんたすごいっす!」
「また魔力貰って申し訳ないであります! でも、おかげですごく回復してきたであります! ツーリにもこの魔力を分けてあげたいであります!」
アクエとソイリィと握手する形で魔力を分けると、二人が顔を輝かせた。
「改めてちゃんと感知すると、こんなにも魔力量があったんですね、師匠! すごいです!」
俺がすごいっていうよりも、女神と微精霊と小精霊のおかげだから、褒めるなら彼女たちを、って感じだけどな。
まぁでも、どれだけ分け与えてもまだまだたくさんある感じがするし、ダダークに吸い取られたこの子たちの魔力が少しでも早く回復するなら、良かった。
明るい声で談笑する彼女たちを見て、俺がそう思いつつ微笑んだ直後。
「がはっ!?」
「ぐはっ!?」
「あっ」
「がぁっ!?」
「ぐぁっ!?」
「「!?」」
アイシィ、ファイフィ、サンダリ、アクエ、そしてソイリィの身体が、〝真横に一刀両断〟された。
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