12.「空中での戦い」
突如空中に現れたのは、アイシィだけじゃない。
「ハッ! あたいを殴るのかい、先生? 弟子に暴力振るうのは頂けないねぇ」
「コーチ~、サンダリを叩くの~? サンダリ~、痛いのヤダ~」
ファイフィとサンダリも出現していた。
何故ここに三人が?
いや、ちらりと眼下を一瞥すると、彼女たちは地上で戦っている。
ということは。
「そうであります! 吾輩が創った土人形であります! でも、これをやられたら、どれだけ歴戦の猛者であろうと、動揺するであります! 愛しい弟子を破壊なんて出来ないであります!」
三人の背後に控えるソイリィが、愉悦に満ちた声で種明かしする。
三人の見た目は全く同じで、声も喋り方も同じだ。
「師匠、大好きです!」
「あたいを好きにして良いんだよ、先生!」
「サンダリ~、コーチのこと好き~~」
弟子三人の土人形がそれぞれ両手を岩の刃に変えて抱き着こうとしてくる。
「愛する弟子に抱き着かれて死ぬであります!」
弟子三人の土人形が俺に迫り、ソイリィが勝利を確信して口角を上げた直後。
「…………へ!? どうしたでありますか!?」
土人形たちが動きを止めた。
「人形だからか、自分が致命傷を負っていることに気付くのが遅いんだな」
土人形たちの胴体には、偽者だと分かった瞬間に俺が正拳突きで放った衝撃波により、大きな穴が開いている。
「なっ!? 同じ顔で同じ声なのに!? 何の躊躇いもなくでありますか!?」
驚愕に目を見開くソイリィに、俺は叫ぶ。
「俺の弟子たちは、もっと可愛い!」
「!?」
ソイリィは「くっ! そんな訳分からない理由で攻略するなんて!」と、背を向けて上昇、逃げるが。
「逃すか!」
「!」
落下し始めていた俺は、土人形三体を思い切り蹴って大きく跳躍、ソイリィに迫る。
「『ギガントロック』!」
再び生み出された超巨岩を「はあああああああああ!」と、拳で砕いた俺は。
「これで終わりだ」
「ぐはっ!」
ソイリィの背後から拳を食らわせて、〝正拳突きによる魔力〟で背中を通して胸の中にある〝闇の魔力〟を破壊した。
「あ。どうしよう……ヤバいかも……」
脱力したソイリィをお姫様抱っこした俺は、かなり高空から自由落下し始めたことに危機感を覚える。
「吾輩に任せるであります! 助けてもらった御恩をお返しするであります!」
ダダークの精神操作が解除されて正気に戻ったソイリィが、ふわりと浮き上がると、俺の背後に回って、後ろから俺にしがみついた。
「ちょっと魔力を分けて欲しいであります!」
「おう、別に良いぞ。まぁ、分けられるだけあるのか分からんが、足りなければ、全部使ってくれ」
「冗談でありますか? 貴方の魔力量は、尋常じゃないであります! 足りないどころか、ちょっと頭おかしいんじゃないかってくらいあるであります!」
え? そんなにあるの、俺?
もしかしたら、あれかな。
女神の祝福とやらを受けていたみたいだし、三十年間ずっと微精霊や小精霊たちに好かれて、彼女たちが傍にいたみたいな話だったから、それでたくさんの魔力を貰ったってことか?
ただ、「頭おかしい」とか言われると、ちょっと傷付いちゃうから、気を付けてくれ、ソイリィよ。
実はおっさんって、見た目に反して意外にナイーブだったりするからさ。
ぽわぁ
「って、噂をすれば……お前たちか?」
ソイリィの力で、ふわりと地面に向かって舞い降りつつある中、俺の身体を無数のキラキラ輝く光たちが取り囲んでいるのが見えた。
「今まで俺を見守ってくれて、魔力までくれてありがとうな」
ぽわぽわぁ
俺が手を差し伸べると、手の平の上に何人か集まった彼女たちが、嬉しそうにクルクルと踊る。
「でも、もう一人元に戻さなきゃいけない子がいるからさ。今からまた戦闘で危ないから、安全なところに隠れていてくれ」
ぽわぁ
微精霊と小精霊たちは、〝分かった〟とばかりに明滅すると、円を描くように一回転して、姿を消した。
「着地するであります!」
地上に舞い降りてきた俺たちを、アクエの津波を必死に止め続けるアイシィとファイフィ、ゴーレムたちを全て倒したサンダリとシスリアが出迎える。
「流石師匠です!」
「ハッ! やっぱ先生の強さは次元が違うね!」
「コーチ~、すごく強い~」
「ふんだ! シスリアは褒めてなんかやらないの! むしろゴーレムたちの動きを止めていたシスリアに感謝すべきなの!」
ソイリィが俺に背負われている、という状況に気付いたアイシィは、「あんた――」と、指差しながら何かを言い掛けるが。
「みんな、注意しな! アクエの姿が消えたよ!」
ファイフィの鋭い声が遮る。
「アクエが、〝津波の中〟に〝自分自身〟を沈めているであります! 気を付けるであります! 中から直接津波を操った時、アクエの力は数倍に跳ね上がるであります!」
ソイリィが叫んだ直後。
「アクエちゃんの本気で、あんたたち全員死ぬっす!」
「「「「「!」」」」」
どこからか聞こえてきたくぐもった声と共に、〝海そのもの〟が現れたかと見紛うほどに巨大な津波が出現、アイシィが凍らせていた津波もろとも、俺たち全員を呑み込んだ。
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