追悼 森永卓郎氏の「生き様」に感銘を受けました
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
経済アナリストとして有名な森永卓郎氏への追悼回とさせていただきます。
森永氏の経歴を簡単に紹介させていただきますと、
1980年に東京大学経済学部を卒業したあと当時の日本専売公社に入り、経済企画庁に出向、独協大学教授、日本では「経済アナリスト」の先駆けとしてメディアで活躍されていました。
『年収300万円時代を生き抜く経済学』『年収120万円時代』『年収崩壊』『ザイム真理教』『こんなニッポンに誰がした』などのベストセラー著書を書き、闘病生活に入ってからでも執筆やラジオ番組で精力的に発信を続けられていました。
質問者:
前日までラジオ番組に生放送で出演されていたそうですから凄いですよね……。
筆者:
僕が森永卓郎氏を知ったのは高校生の時でした。
最初は「何か面白いこと言っているおじさん」という感じでしたが、
色々なことを知っていくうちに「的確に物事を突いているなという印象」をドンドン受けていった感じになっていきましたね。
それだけ先見の明があったのだと思いますね。
◇「年収300万時代」に本当になってしまった
質問者:
2003年に『年収300万円時代を生き抜く経済学』が発表された当時は「まさか」という感じがあったようですけど、
今現在派遣労働などで300万円以下の方は女性が50%以上、男性でも20%ほどいらっしゃると言うのですから、当たっていると言えますよね……。
筆者:
森永氏はアベノミクスが始まった当時、
「恩恵を受けるのは、(輸出製造業の)大企業と株価の上昇で潤う資産家だけとなる公算が高い。直ちに労働者の賃金が上がる環境にはない」
と指摘されていた通りこの期間内に株価は上がっても給与が上昇することはありませんでしたね。
質問者:
今も給料が上がっているのは大手企業の若手の一部の方だけみたいですしね……。
筆者:
最近の森永氏の発言では「日経平均株価が3000円にも2000円にもなる」という論調が「キワモノ」として話題を集めていましたね。
森永氏は「労働の対価以外は全部バブル」だという主張のようです。
先進国の経済は新興国を労働させることによって、マネーゲームで稼ぐようになっていていることから「膨れすぎている」と考え、
また購買力平価と言う指標ではドル円は90円ほどであることから「円高株安」になると考えておられるようです。
質問者:
実際のところどうなのでしょうか?
筆者:
僕の考えでは10年単位では流石に「日経平均3000円」というのは無いのかなと思います。
なぜなら各国ともに「財政赤字」という名の「信用創造」を行っています。
現金が巡れば預金に預けるよりも、株式などで運用しようという発想になってきます。
僕は「各国が財政赤字急速に返済する」状況で「仮想通貨など新しい投資対象が爆発的に力を付ける」という2つの条件が揃えば株価が大暴落すると思います。
しかしながら、日本や欧州みたいな「緊縮財政を善」としている国は世界を広く俯瞰すれば中々存在しないために、あったとしてもそこまで下がるのはもっと先の未来なのかなと思いますね。
森永氏の考えは「労働によって稼いだ対価」以外を評価しない、言わば「古典派経済学」などと呼ばれています。
僕は森永氏のこの考えに全面賛成はできませんが、
会社経営者(資本家)有利の現状で、「労働者に敬意」が払われなくなっていっている状況に警鐘を鳴らしているという点においては僕も同意できますね。
質問者:
確かに株式は実体経済を伴っていない「マネーゲーム」ではないか?
と言われるようになって久しいみたいですからね……。
◇「3大タブー」に斬りこんだ
質問者:
森永卓郎さんと言えばやっぱり「ザイム真理教」という言葉が流行ったことで再び脚光を浴びるようになりましたよね。
筆者:
そうですね。「3大タブー」と森永氏が主張していたモノの筆頭格でした。
僕も財政破綻するという「教理」とまでおっしゃる発想には脱帽しました。
実際のところ「カルト教団」にあたる財務省が「教理」にあたる「増税をしなければ円や国債が暴落しハイパーインフレが日本を襲う」というのを活用しています。
そして、「教団員幹部」にあたる政府や財務省を活用し、「教団員」にあたる一般国民からお金を毟り取っているという構図は全く一緒と言ってもいいですからね。
(場合によっては“壺”を買うために借金をしているというのも、借金をしてでも納税をする国民と似ています)
「ザイム真理教」という用語は財務省、行き過ぎた緊縮財政の異常性について上手いこと簡潔に伝えていた素晴らしい表現だったと思います。
こういうセンスのある表現をされる方が社会を引っ張っていくのだ――と思っていたので、まだまだ活躍していただきたかったですね。
質問者:
本当に惜しいお方でしたね……。
ジャニーズの問題についても斬りこんでいらっしゃいましたよね。
筆者:
これも「タブー」の2つ目でしたね。
森永氏は様々なテレビ番組に出演されていましたが、
「ジャニーズの問題は芸能関係者の誰もが知っていることだが、発言するだけで干される」というかなり露骨な状況だったみたいですからね。
そして、この問題はジャニーズだけの問題ではないような気がするんですよね。
女性アイドルグループや他の芸能関係の団体に「枕営業」は無かったのか?
マスコミは姑息にも「ジャニー氏本人の死去の後に、ジャニーズだけの問題」として取り扱ったことに不快感を僕は感じました。
質問者:
確かにそう言った不適切な関係は業界全体にあってもおかしくはない状況ですよね……。
残る「タブー」とされた1つは「123便墜落事故」についても斬りこんでいましたよね。
筆者:
森永氏は123便が墜落した後に「生存者を自衛隊が火炎放射器で焼き払った」などと主張されていました。これは流石に本当なのか? と疑問に残るところはあるのですがね。
しかしこの事故に関して謎が多いのも事実です。
墜落場所がすぐに分かっていた(付近住民の通報があった)のに中々救出に行かなかったのは何故なのか?
事故原因が未だに不明だったりすることについて検証があまりされていないのは異常とも言えます。
質問者:
あれほどの大事故ですぐに調査が終わってしまうのは不思議ですよね。
全容を究明するまで必死になるべきだと思いますよね……。
だからこそ、無用な憶測が飛び交ってしまうのだと思いますね……。
◇「生き方」に対して最敬礼
筆者:
事故検証だけでなく、コロナ対策の検証、経済政策の検証など色々なことに政府は不誠実だと思いますね。
利権や既得権益を守るのに必死なのだと思います。
話は戻りますが、僕は森永氏の「生き方」に関して大きく共感するところは多いです。
『年収200万円でもたのしく暮らせます』という著書の中では、
都市部から50キロ以内の「トカイナカ」に住むべきだという考えを示しています。
これは農作業をやりつつ都会へのアクセスを両立させたものです。
近年は物価上昇で農作物が大きく上昇し、中でもキャベツが2倍になったりもしています。
有事の際の食糧確保のために「家庭菜園をしながら仕事をする」と言った考え方はこれからの大きなトレンドになるのではないか? と僕は陰ながら思っています。
質問者:
それではなぜ都市から50キロ圏内なんですか? 「ド田舎」のほうが地価も遥かに安そうなのに……。
筆者:
これはまず、あまりにも田舎過ぎると「生活コスト(特にガソリン代)がかかりすぎる」というのが大きな要素としてあるようです。
また、田舎では未だに「人間関係が濃厚過ぎる」ことから移住してもすぐに「人付き合い」で挫折してしまう方が多いことから「田舎だけど都会に近いところ」が最良だと森永氏は考えているのです。
僕も資産に余裕がある方、住まいを新しく検討されている方にはこうした「トカイナカ生活」をお勧めしています。
質問者:
少しでも自給自足をして物価高に対応しようという事なんですね……。
確かに都市部では農作業できる場所もありませんよね……。
米やキャベツの値段が下がる見込みは薄そうですし、
農家の方々も苦しいでしょうから「優等生」と言われていた食品も上がっていきそうです。
そうなると、独特の生き方ながら時代の方が追い付いてきているというのは凄いですね……。
筆者:
森永氏は癌を告知されてからむしろ「輝いた」ようにすら僕は見えました。
失うものは何もないという、最後にやり遂げようという強い意志。
自分の伝えたいことを伝えて「魅せる」というその使命感、執念。
そう言った心意気に本当に感銘を受けましたね。
質問者:
亡くなられる前日まで、これまでで一番体調が悪いのにラジオ出演されていただなんて凄いですよね……。
筆者:
癌のステージ4を宣告されたという、人生の終わりが見えた心身が最悪になる状況でも、前向きに捉え、仕事量をむしろ増やされて「30連勤」もされたそうです。
これは並の精神力ではできないと思います。
僕はまだまだガタか来るような年ではないので体の悪いところは全くないですけど。
森永氏の最期を考えると、健康なうちから1日1日しっかりと生きて、
実力は無いながらも僕の中でのベストを尽くして発信をしていこうと思いましたね。
最後に。森永卓郎さんへ。
僕はあなたのお陰で経済や生き方など人生の様々な価値観が変わりました。
癌になってもユーモア溢れる笑顔や、タブーに斬りこむ精神力には大きな感銘を受けました。
本当にお疲れさまでした。ゆっくりとお休みになって下さい。