表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

中編2

檻に触れることができる距離まで近づくと、倒れていた二つの白い獣人の片方が跳ね起きた。


「グルゥウウウゥゥウゥアアァァァッッ!!!」


「なんだぁ?てめぇ意外と元気あるじゃねぇか、人型のくせに言葉は喋れねぇのか?それとも喋る気がねぇだけか?檻の中から威嚇してもなんにもなりやしないぜ。」


((種族が分からねぇが恐らく子供か?白髪白尾の獣人なんか見たことねぇし、この薄暗闇の中で俺を正確に視認してやがる。魔力を使っている気配は無いが、この獣人の特性ってやつか?どうする?面倒ごとの匂いしかしねぇ、見捨てるか?))


サーリヤは平静を装いながら内心少し焦っていた。倒れていた獣人らしき人物がこちらを正確に見えていると思っておらず、魔力を用いた暗闇での視界の優位性が失われたからだ。


「次に威嚇したら、俺はお前らを見捨てるぞ。俺が喋る言葉がわかるか?お前らは何者だ。答えろ。」


((ぶち破れるならとっくにぶち破っているだろうから檻から出てくることはないだろうが、万が一がある。全身の身体能力を強化しとくか。))


自身の持つ魔力を更に使っていつでも逃げれるように己の身体能力を強化しながら、サーリヤは尋ねた。


すると白い獣人は唸るのをやめ、サーリヤをジッと見つめ始めた。


((魔力を使っているのを感じ取られている?警戒してやがるな、当然か。扱いを見るにどっかから誘拐してきた奴隷か。奴隷用の刻印はパッと見だと見当たらないがどこかにかあるのか?というか、もう片方の奴は生きてんのか?ずっと倒れたままだが・・・))


しばらくの間サーリヤと白い獣人は睨み合っていたが、ふと白い髪の毛の獣人が口を開いた。


「オレノ、ナマエ『ギルーク』コッチノ、ナマエ『ミルル』コトバ、ハナス、ムズカシイ、タスケテホシイ。ミズ、ホシイ。」


グルークと名乗った白い獣人は険しい表情を浮かべながら、たどたどしくサーリヤの質問に答えた。


「なるほどな。やっぱりこの周辺地域の奴ではないか。水は少しなら分けてやる。その代わり俺の質問に分かることだけでいいから続けて答えろ。お前らはどこから来た?どんな言葉をしゃべる?」


自身の荷物から水筒を檻の中に投げ入れながら、サーリヤは尋ねる。


「オレ、オーロウ***、イタ。ハナス、コトバ、****、*********、**、****。」


((オーロウ?聞いたことねぇ地名だな。話す言葉も聞き覚えがねぇ。相当遠い所から運ばれてきてるな。こいつらにそんなに価値があるのか?特殊な種族の獣人とかか?見た目は犬族の獣人に近いが・・・くそっ、わからん。))


「悪いな、そんな名前の場所は聞いたことがねぇし、お前が喋る言葉も分からん。」


受け取った水筒の水を浴びるように飲んでいたグルークは倒れてるミルルと呼ぶ獣人にも水を飲ませようと水筒を口にあてがいながら、サーリヤを見た。


「オレ、ナンデモ、スル。オマエ、ミルル、タスケテホシイ。」


そう言ってくるグルークを見ながら、サーリヤは考える。


((どうする?ソリに金目のものが見当たらない以上こいつらの所有者は魔物どもから逃げたか、金ごと魔物どもの腹の中か。荷物を失って生き残る確率はほとんどゼロだろうな。仮に運よく生き残って近くのオアシスに避難しているとして、こいつらを馬鹿正直に届けたところで運搬するだけで罪になる奴隷を砂漠地帯で密輸しているような商人からの謝礼なんざ期待できねぇか。ここで得体の知れない奴隷二人抱え込むなんざリスクでしかねぇ。やっぱり見捨てるか。))


そう思いながら、サーリヤはグルークと倒れたままのミルルを見る。


弱り切ったグルークとミルルを眺めながら、撫でるように吹く風にサーリヤは顔をしかめた。


「・・・・・・ッチ。しけた匂いだぜ。まったく嫌になる貧しい奴の匂いはよ。」


悪態をつくサーリヤに対して再びグルークの眼が鋭さを増す。


再び警戒している顔つきになったグルークを見ながら、サーリヤは自身の過去を思い出していた。


((馬鹿か俺は。親が戦争でくたばったせいで砂漠の町で干からびていくだけだった俺を横断屋の師匠が拾って育ててくれなかったら、こいつらのように死を待っているだけになっていたのは他でもなく俺だろうが。こいつらは過去の俺だ。ここでこいつらを見捨てて俺はこれから胸を張って師匠や仲間たちと酒が飲めるのか?たまたま見つけただけだが、それでも見つけちまったもんは仕方ねぇ。))


肺の中の空気を全て入れ替えるように大きく深呼吸をし、サーリヤは覚悟を決める。


「わかった。お前ら二人とも助けてやる。その代わり助けてやるのは次に立ち寄る中継地点のオアシスまでだ、そこからは好きにしろ。・・・何を変な顔してやがる。」


怒っているような、驚いているような何とも言えない表情をしているグルークを見てサーリヤは困惑した。


「ワカッタ。アリガトウ。」


助かる見込みを感じ取ったグルークと名乗る獣人はそう言ってぎこちない笑顔を浮かべた。

更新が1日ずれてしまいました。ごめんなさい。

次回(7月14日)こそ守ってみせますううううう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ