前編2
翌日サーリヤはハリールの拠点を訪れていた。
「ハリール、来たぞ。金と荷物をくれ。」
「こっちだ。ついてこい。」
ハリールの拠点を歩きながら、昨日聞きそびれてしまったことをサーリヤは尋ねた。
「しかし、なんだって途中で荷を降ろすんだ?マジュド帝国までって話なら依頼は東側の国から西側の国までの完全横断依頼だったんだろ?」
横断屋に対する依頼は主に二種類があり、砂漠地帯に点在するオアシス国家までの半横断依頼とオアシス国家を経由しながら砂漠地帯を踏破する完全横断依頼がある。中継の仕事を専門として受ける横断屋も居るが、それは短い距離しか荷物を運搬することのできない老いた横断屋か、まだ砂漠の地図を把握しきれていない半人前の横断屋だけだった。ハリールのキャラバンはどちらにも当てはまらない。普段は中継依頼など出さず、オアシス国家では補給目的でしか利用していないハリールの隊が、わざわざ手数料がかかる中継依頼をするのはなぜなのかサーリヤは疑問に思ったのだった。
「ここにたどり着く前に魔獣に襲われて、ラクダを何頭か失っちまったんだ。幸い欠員は出なかったがな。だから西に運ぶ分の荷物をここで降ろして誰かに引き継がせなきゃならん。俺たちは横断ルートを変更して、帝国を経由せずに南西に向かうからな。」
そうハリールは言うと木箱をサーリヤに受け渡しながら言った。
「なるほどね。それじゃ、今夜にでも俺は出発するぜ。帰ってまた会えたら、一杯やろう。」
「サーリヤ、気をつけろよ。最近はいつもより砂漠の魔獣どもが活発だ。お前さんは単独行動だから助けに来てくれる奴はいねぇぞ。」
「心配するなよ。俺の腕前は知ってるだろ?じゃあな。」
忠告するハリールに対し、そう言ってひらひらと手を振りながらサーリヤはハリールの拠点を後にし、セントラを出発するのだった。
前編2は物語の区切り上、短くなってしまいました。
作者は割と長くてボリュームのある本を好んで読むのですが、いざ自分が書く側に回ると難しいものですね。
次週は主人公サーリヤが砂漠に出るのでもう少し長めになるかと思います。
次回更新は10/31予定です。よろしくお願いいたします。