前編1
黄色の横断屋は運びたい始まります。週一更新予定です。
「おーーーい、誰か俺に仕事を回す気はねぇか?ラクダ二頭分までの荷ならどこでも運べるぜ。」
砂漠の国『セントラ』のとある酒場で薄く黄色ががった髪の毛に浅黒い肌の男、サーリヤは声を張り上げた。
砂漠地帯特有の乾いた熱気と熱気にあてられた客たちを見る。
喧騒の渦巻く酒場の中でサーリヤは酒を飲んで酔った頭で今後の行動を勘定していた。
((そろそろ仕事をしなきゃ酒を飲むための金がなくなっちまうなぁ。))
サーリヤは大陸の中央に広がる広大な砂漠地帯を渡り歩きながら荷を運ぶ職業「横断屋」を生業として生計を立てている。
砂漠の国に産まれ育ち、今年で27になるが周囲からの『やるときはやる男だが、基本は自堕落』という評価を自他共に認めていた。
サーリヤは幼い頃から冒険をすることが好きだった。そういった気性も相まって短い期間で危険な砂漠を横断し、金を稼ぎ、砂漠地帯に点在する国々とそれを取り囲む国々を訪れることのできる横断屋は彼にとって天職ともいえた。
そんなサーリヤに体の大きな男が酒に酔った赤ら顔でサーリヤの座る席の前にドカッと座り、声をかけた。
「おう。サーリヤじゃねぇか、有るぜ、お前さん向けの丁度いい荷物がな。」
人によっては腰が引けてしまうような獰猛な笑みを浮かべながら、深く低い声で体の大きな男は言った。
「ハリールか、あんたが回す仕事なら安心だな。で、どんな荷物だよ?」
同じ横断屋として生計を立てているハリールに声をかけられ、サーリヤは聞き返す。
横断屋にとって同業者とのつながりは何よりも大切だ。
信頼がなければ、同業から荷物を引き継いで運ぶ中継の仕事はもらえないし、何よりも面識のない人物との取引はこの砂漠地帯では騙し、騙されが日常茶飯事だからだ。つながりのない新規の仕事には常にリスクが付きまとう。そういった点で、そりなりに大きなキャラバンを持ち、客はもちろんのこと同じ横断屋達からも信頼の厚いハリールからの仕事はサーリヤにとって安心して受けれる仕事だった。
「東の大陸で作られているらしい珍しい形の刀剣だ。武器の収集家だっていう西側の貴族様が注文したんだと。これを西のマジュド帝国の砂漠地帯に一番近い交易所まで運べって依頼だ。交易所の奴に「ランス伯爵の荷物を届けに来た。」と言えばそれでいいらしい。」
「珍しい刀剣の荷物だぁ?自分で扱えねぇ武器をいくつも集めるなんざ貴族の考えることはよく分かんねぇな。まぁいいさ、その仕事受けるぜ。それで?中継手数料は?」
「払う。明日俺の拠点まで取りに来い。そん時に荷物も引き渡すからラクダも忘れるなよ。残りの報酬は交易所の奴が払ってくれる。」
「わかった。仕事の算段も付いたし、俺はもう帰るぜ。じゃあ、明日な。」
そう言ってサーリヤは酒場を後にした。
初めまして、作者のえあです。
黄色の横断屋は運びたいを読んでくださりありがとうございます。
作者の処女作であり、前作の「赤毛の錬金術師は溶かしたい」から来ていただいた方はまた会いましたね。とってもありがとうございます。
と、言っていも前作は1年以上前に投稿しているのでとんでもなく期間が開いていますが(汗)
まだ読んでいない方は是非読んでいただけるととても嬉しいです。
2万字程度の短編なのでサクッと読めます。
さて、前書きでも書きましたが、本作は週一回の更新を予定しています。
前作と同じく短編予定なのでさらりと読める物語になるかと思います。
作者のやる気につながるので作品がいいなと思ったらブックマーク、高評価お願い致します。
誤字脱字等も気をつけてはいますが、ありましたら報告していただけると幸いです。
それでは次話でまたお会いしましょう。