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エリックは武器商人だからそこそこ(かなり)強い

「よし、必要な分の素材は取れたかな。ありがとうドロシー、おかげで早めに集まったよ」


「ど、どういたしまして……」


 ジャックの店でお菓子を食べたあと、俺たちは鉱山にやってきて武器の素材を集めていた。ドロシーも色々と手伝ってくれたおかげでいつもより早く終われたや。


「それじゃあ帰ろっか。そうだ、今日の夜ご飯は何が食べたい?」


「……ま、また……シチューが食べたいな。い、良い?」


「もちろん! よし、んじゃ早く帰ろう」


「え、エリック……わ、私も荷物持つよ」


「ああ、これくらいいつも一人で持って行ってるから平気だよ。ドロシーは気にしないで大丈夫」


 素材を入れた袋が結構パンパンになっているので、ドロシーはそれを気にしてくれたんだろう。でも、いつもこれくらい一人で運んでいるし問題ない。ドロシーには今日素材集め手伝ってもらったし、これ以上負担をかけるのも悪いだろう。


「で、でも……」


「おっと、そこのあんたらまちな! 酷いことされたくなかったら荷物全部置いてけ!」


「は?」


 鉱山から出ようとしたところ、それを待ち伏せしていたのか数人ガラの悪い奴らに囲まれた。おそらく、俺たちが苦労して集めた素材を横取りするに加えて金とかを奪い取ろうとしているんだろう。戦争の影響で鉱山も人が増えたからな、こういう悪い輩もたまに見かける。


「……え、エリック……」


 声を震わせながら、ドロシーは俺の服をぎゅっと掴む。彼女がゴロツキたちに囲まれて不安になるのも仕方がない。ついこの間まで、同じような輩に散々な目にあわされてきたんだから。


 そんなドロシーを、このまま怖がらせるわけにはいかない。


「ドロシー、ちょっとだけ待っててな。すぐ片付けるから」


 ポケットに忍ばせておいた短剣を取り出して、ドロシーにそう声をかける。


「は! そんなちっさい剣で俺たちをすぐ片付けようだなんて、イキリにもほどがあるんじゃねぇのかぁ!? 野郎ども、やっちまえ!」


 ゴロツキたちは一斉に襲いかかってきて、数でゴリ押そうとしてくる。けど、俺は武器商人でもあり職人でもある。俺自身が強くなかったら一流の武器なんて作れっこないし、一流の戦士に武器も売れないだろう。


 俺が武器で名を挙げたのは、戦闘の腕もあってこそなんだよ。


「うわっ!?」


 考えなしに突っ込んでくるゴロツキを、ドロシーに危害が及ばないよういなしてすぐさま一撃を食らわす。そのあとに背後を取られそうになるが、そうしてくることなんてお見通しだから、思いっきり蹴りを入れてカウンター。すると他の奴らはそれを見て俺に攻撃することを躊躇したので、その隙に短剣で峰打ちを入れてやった。


「な、なんだよこいつ……つ、強すぎないか!?」


「俺は武器商人兼職人だからな。そこそこ強いんだよ」


「武器商人兼職人……お、おい、それって最近三億払って奴隷を買ったあの、【エリック・モンゴメリー】か!?」

「武器の金を払わなかった闇ギルドのリーダーをボコボコにしたって噂もあるエリックだと……!?」

「ど、通りで俺たちが敵わないわけだ! お、お前ら、逃げるぞ!」


 勝手に俺の正体に気づいたらゴロツキたちはそそくさと逃げ出してしまった。どうやら、俺がドロシーを三億で買ったことはこういう悪い奴らには知られているようだな。あと、闇ギルドのリーダーをボコボコにした話は……まぁ、そんなこともあったか。


 とにかく、ドロシーが無事で本当に良かった。


「え、エリック……!」


「おわっ!」


 ゴロツキたちがいなくなった途端、ドロシーは俺の元に駆け寄ってきて俺をぎゅっと抱きしめた。やっぱり、すごく不安だったんだろう。ここ何回かはああいう奴らに遭遇してこなかったから、大丈夫かと思ってドロシーを連れてきた俺のミスだ。しっかりと謝らないと。


「ごめんなドロシー、ここに連れてきたばっかりに危険な目にあわせちゃって……」


「そ、そんなのエリックが悪いんじゃない……。わ、私は……エリックとお出かけできて、楽しかったもん……」


「……ありがと、ドロシー」


「わ、私の方こそ……守ってくれてありがとう。エリック……すごく強くて……カッコよかった」


「そ、そう? ど、ドロシーにそう言われると……照れる」


 昔、武器職人として師匠に弟子入りした時に職人としてだけでなく、戦士としても散々鍛えられたからな。当時はなんでこんなことしないといけないんだよ……と思っていたけど、その甲斐あってドロシーを守れたから、師匠には感謝しかない。今度また会いに行かないと。


「さ、さて。それじゃあ家に帰るか」


「……ね、ねぇエリック」


「ん?」


「……ま、また……お出かけ、しようね」


 帰り際にそう、少し頰を赤らめながらドロシーが言ってくれた。まだまだ人に対する恐怖心もあるだろうけど、それでも一緒に行きたいと言ってくれたドロシーのためにも、またどこか、絶対に彼女が楽しめるところを見つけないとな。

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