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謝ることができて良かった


「まさかこんな簡単に連れ出せるなんて……」


 仕事を終えた後、俺はセシリアを帝国から連れ出すために彼女から言われた通りに動いた結果、誰にも気づかれることなくモンカ村までくることができた。帝国の警備がこんなザルなのは大丈夫なのかとこっちが心配になるくらいだ。


「今は戦争のせいで兵士の数もだいぶ少なくなっているから。それに、私は時々家出をするから兵士たちもまたかと思って探す気にもならないんでしょうね」


「え、えっと……セシリアさんは皇帝の娘なんですよね? 扱いが本当に雑すぎな気がするんですけど……」


「そうよ。そもそも今の実権を握っているのはディランだから、誰も皇帝なんか気にしてない。形だけの皇帝の娘なんか丁重に扱ったところで旨味なんてないもの」


「そ、そんなものなんですか……」


 なんだか俺が思っていた以上にディランの影響力は帝国の中で大きなものとなっているみたいだった。だからこそ、そんな相手に抵抗しようとしていたドロシーの凄さが今になってよくわかる。


「でも、あいつにそんな権力を与えてしまったのは私にも責任がある。あの時ドロシーを守れなかったことは……本当に、悔やんでも悔やみきれないわ」


「……じゃあ、ちゃんとドロシーに謝らないといけないですね」


「もちろん、そのつもりよ」


 そうして歩いているうちに、俺たちの家に着いた。


「エリック! おかえ……」


歩く音が聞こえてきたのか、家のドアが開いてドロシーが俺のことを出迎えてくれた。でも、隣にセシリアがいることに気づくと一気に顔が曇ってしまう。そして後ずさりして家の中に戻ろうとしていた。やっぱり、ドロシーとしたら帝国の人間であるセシリアには会いたくないに決まっている。


「待って、ドロシー!」


 だけど、俺はセシリアの覚悟を知っているから。きっとセシリアなら、ドロシーとのわだかまりを解消することができるはずだ。


「あなたを守れなかったこと、今でも後悔してる。私がディランの策略に気づいていればあなたがあんな目にあうこともなかったから。だから……本当に、ごめんなさい」


「…………」


 頭を下げて謝るセシリアのことを、ドロシーは黙ってじっと見続ける。


「でも、あなたは帝国側の人間全員が敵だと思っているかもしれないけど。私はあなたのことをずっと友人だと思ってる。友人として、あなたのことが大好きなの」


「…………だったら、どうしてすぐに助けてくれなかったんですか?」


 そして、ようやくドロシーが口を開いていった言葉は、刺々しいものだった。それもそうだ、奴隷として苦しい時期を過ごしていたドロシーとしたら、セシリアの言葉はどうしても軽いものに思えてしまうだろう。


「……そうね、そう思うのも仕方がないわ。でも、私も……あなたを助けようとしたの。証拠になるかはわからないけど……これ、見て」


 セシリアはドロシーの近くに寄って、腕をまくる。するとそこには、痛々しい大きな火傷の跡が残ったセシリアの腕が露わになった。


「せ、セシリア様……こ、これ」


「あなたを助けようとした時に、ディランにバレて拷問された時の跡。……こんなことで許してもらおうとは思わない。けど、これくらいされてもあなたを嫌いになんかならないって、証明だけさせて」


「……」


「ドロシー、セシリアさんは本当にドロシーのことを心配してくれてるんだよ。それは俺が保証する」


「…………私こそ、ごめんなさい。セシリア様がこんなことになっているなんて知らないで、一方的に憎悪を向けて……」


 セシリアの傷を見て、ドロシーはそれくらい自分のことを思ってくれたことに気づいたのか、涙を流しながら謝る。するとセシリアはぎゅっとドロシーのことを抱きしめた。


「全然気にしないわ。こうやって謝ることができただけで、私はもう満足だもの。本当に、エリックのおかげ。ドロシー、本当にいい人と一緒にいるのね」


「そ、それは……は、はい! エリックは、世界で一番かっこいい私の大好きな人……い、いや、そ、その……」


 ついさらっと俺のことをめちゃくちゃ褒めてくれたドロシーは、急に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして言い淀んでしまう。それを見てセシリアは俺の方を見ながらクスッと笑いつつ、こういった。


「本当に、ドロシーから愛されてるのねあなた」


「俺も、ドロシーのことを心から愛してますから」


 我ながら少しカッコつけてしまったかもと思う。それでも、ドロシーのことを愛しているのは本当だから。


「さて、そろそろ家の中に入ろうか。今日はセシリアさんも一緒にご飯を食べよう」


 そんなわけで、今日はゲストと一緒にご飯を食べることにした。

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