箱の中にとじこめられていたもの
その子供は、なぜか箱の中に入っていた。
どうしてそうなっているのか分からない。
物心ついた時から、すでにそうなっていたからだ。
箱の中には何もない。
子供が、一人いるだけだった。
だからその子供はいつも退屈していた。
遊び相手はいないし、遊び道具もないから。
しかし、箱の外の声が聞こえるため、子供は退屈に殺される事はなかった。
自分と言う存在は確かにここにいる、と思う事ができた。
箱の外には、様々な人間がいるらしい。
男性、女性、お年寄り、子供などなど。
子供は色々な人の話を聞いてそう判断した。
いつか出て、それらの人達と話がしたいと思ったけれど、その方法が分からなかった。
子供の退屈な日々は続く。
けれどある日、子供は気が付いた。
決められた回数箱を転がせば、箱が大きくなると言う事を。
だから、子供は箱の中であばれて、精いっぱい箱を転がした。
箱が大きくなれば、破裂して外に出られるかもしれないと思ったからだ。
外に対する憧憬は膨らみ、箱も膨らんでいく。
子供はどんどんあばれ、何度も箱を転がしていく。
やがて、十分に大きくなった箱は、ぱちんと大きな音を立てて破裂した。
とうとう外に出る事ができた子供は、外の空気を吸ってとても喜んだ。
そして、箱だったものの残骸を見つめる。
自分を長い間とじこめていたものだったけれど、愛着がわいていた。
だから子供は、箱のかけらを拾い集めて、小さな箱を作る事にした。
外に出られた自分をいつでも見守ってほしいと思ったからだ。