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Chaos Odyssey Online 〜VRMMOで魔王と呼ばれています〜  作者: 暁月ライト


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死の宝珠

 この暗闇の向こうまで広がる軍勢。誰もが鎧を纏い、武器を持っているように見える。


「彼らは全員、ルファス帝国の兵士達ってところかな」


「間違いないと思います!」


 ガタリ。呑気に話していた僕らの前で、不死身の皇帝と呼ばれたジールが動いた。


「……これだけ、伝えておく」


 その生気の無い顔が僅かに口元だけ動き、掠れた言葉を絞り出した。


「破壊しろ……死の、宝珠を」


 赤い目が、ジロリと僕を睨み……その目から光が消えた。


「ッ、来ますッ!」


 殺気だとか敵意だとかを感じ取ったのか、エトナが叫んで僕の前に出た。


「クフフ、護衛は私にお任せください。貴女は攻撃と攪乱を」


「分かりましたッ! ネクロさんっ、アレ下さいッ!」


 僕は即座に意図を察し、魔力を消費しながら一言呟いた。


加速(クイック)


 途端にエトナの速度が何倍にも加速し、軍勢の中へと消えていった。次の瞬間、漆黒の斬撃が視界の奥で撒き散らされる。


「さて、ネルクス。この状況……どう見る?」


「恐らく、というか間違いなく……彼らは死の宝珠の支配下にありますねぇ。今、彼らに意思は無く、ただの操り人形と言った状態でしょうねぇ」


 ジール自身が言ってたように、死の宝珠を破壊する必要があるって訳だね。


「じゃあ、死の宝珠さえ破壊すれば彼らは自由になれるのかな?」


「ふぅむ……自由、とは言えなくとも少なくとも不自由な時間は終わるでしょうねぇ」


「随分、含みがある言い方だね」


 僕が目を細めると、ネルクスはニヤリと笑った。


「含みも何もありませんよ。彼らが死の宝珠から解放されたところで待っているのは先延ばしにされていた死のみですから、自由になれるとは言い難いでしょうねぇ」


 ……そもそも、さ。


「死の宝珠って……何?」


「一言で言えば極めて強力でリスクの高い魔道具、ですねぇ。それは膨大な魔力を定期的に支払うことを代償に使用者を不死身の体に変貌させますが、一度契約すればもう解除する方法は無く、不死身の肉体のままいつまでも魔力を払い続けなければなりません」


 ん? 一度契約して二度と解除されないなら魔力を払う必要なんて無いんじゃない?


「更に、一度でも魔力を支払い切れなければ……使用者は、この宝珠の一生の奴隷となります」


「あぁ……なるほどね」


 誰が作ったか知らないけど、相当性格の悪い魔道具みたいだね。


「皇帝ジール・ルファスは巨大な帝国の王という立場を利用し、死の宝珠を長らく正常に運用出来ていたようですが……戦争で追い込まれ、兵士達にもこの宝珠を使わせる以外の道筋を失ったのでしょう」


 なるほどね。だから、不死身の皇帝として何百年も帝国を治め続けることが出来たんだね。でも、結局最後は死の宝珠の奴隷になっちゃったって訳だね。それも、沢山の配下と一緒に。


「……結構、ろくでもないことしてるね」


 自分の配下にまでこんなクソ魔道具を使わせるなんて、だいぶろくでもない人物な気がしてきたけど、僕のやることは何にしても変わらない。死の宝珠の破壊だ。


「でも、問題はその宝珠がどこにあるのかって話だよね」


 現世にあるなんて話になったら、結構大変だ。


「少なくとも、彼が発していた言葉から察するにこの牢の中にあることは間違いないでしょうねぇ」


「……そうだね。態々破壊しろって頼んだってことは破壊は可能だってことだよね」


 若しくは死の宝珠が彼を操ってそう言わせたっていう可能性もあるけど、現世に死の宝珠があるならば態々そんな嘘を言わせる必要もないだろう。


「さて、我が主よ。作戦会議をしている余裕はそろそろ無いようですよ?」


 瞬間、頭上から視界を真っ白に焼き尽くすほどの落雷が降り注いだ。




 ♢




 真紅の巨人、グランは自身を囲む軍勢を前に今までに無いほど昂っていた。


「グオオ……ッ!」


 彼は巨人として生まれ、その圧倒的な力を育んでいく中で一つの望みを抱いていた。それは、その圧倒的な力を以って矮小な人間の軍勢を蹴散らすことだ。


「グオオオオオオオオオオオオッッ!!!」


 彼の体が燃え盛る。熱の鱗が煌めく結晶へと変わっていく。紅蓮に輝く巨人は、その巨人の膂力と爆炎の権能を存分に振るい、群がる不死身の軍勢を灰に変え、捻り潰し、蹂躙していく。


「グオオオオオオオッ!! グオォオッ!?」


 しかし、その至高の時間は突然終わりを告げた。目の前に現れた黒い鎧を纏った男によって。


「……」


 意思を奪われ言葉を話さない男は、巨人の顔面を殴りつけた後、黒い刃の大剣を構え、その虚な瞳で巨人の体を観察した。

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