深淵の
『そうか…。ならば貴様は何を差し出すのかね?』
「…全てだ」
嘘だ。俺の全ては、少なくとも"ここ"には無い。
『ほう?』
「全てくれてやる!家族も!友人も!俺の持つ全てをだ!だから!ヤツらだけは!ヤツだけは!」
ははは。こんなもの。
こんなものもっと早くになくなればよかったんだ。仮初の絆なんて。"この世界"に生を受けた時点でそんなものは感じたことがなかった。
何もかも。
何もかも納得がいかなかったんだ。どうして俺がやらなきゃならないんだ。
<それが使命だからだ>
「違う!」
<お父さんやお母さんを!失望させたいのか!!>
「お前が…父だと!」
<お前は…生まれたときから"力"があって。正直羨ましいよ>
「お前に…何がわかる。俺は…俺は…」
最初から嫌だったんだ。"この世界"に来ることを望んだことは一度だってなかった。
<私は女神****>
「消えろ! …二度と…二度と俺の前に!」
<私は女神****>
「クソッタレが…消えろ!」
<私は女神****>
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ」
<私は女神****>
「…消えろ」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
<私は女神****>
<私は女神****>
<私は女神****>
<私は女神****>
「…やめてくれ」
<私は女神****>
「俺を帰して…くれ…」
<私は女神****>
「もう…ほんとうに」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…何もかも」
<私は女神****>
「…」
<私は女神****>
「…無くなっちゃえばいいのに」
クソッタレ。
こんな世界。
…クソッタレ。
『よろしい。ならば!キミは私達の…』
その日、世界は震撼した。新たな×××の誕生を。