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最終日~永久不変

※凌司視点です。


永遠に、忘れられない夏になる──。




 考えてみれば、簡単に分かることだったのだ。最初から、この夏休みは仕組まれていたのだろう。きっと、いや絶対に。


「……りょーじ、顔が変だよ」

「何言ってやがる。自他共に認めるイケメン捕まえて言う台詞じゃねーだろ」

「自分でソレ言ってちゃ台無し!!」


 カンナは俺の軽口に反応してノリノリだ。ふざけているのも、完全にお見通しのようで。


「なーによ。レオンから、変なLINEでも来た?」

「……澪音が押し掛けて来た、ってLINEなら鈴屋から来てるけど」

「はぁっ!? あのバカ、レンちゃんにまで迷惑掛けてんの!?」


 激怒するカンナをそのままにして、鈴屋からのLINEの後に来た、カンナの父親からの留守電を、何となく内容が察知出来たが聴いてみることにした。



『やあ、将来の息子よ。夏休みは満喫しているかな? これも一つの任務だと理解してくれると有り難い。聡い君のことだ、もう全て分かっているだろうが敢えて言わせてもらおう。今回の同窓会を機に、カンナとの復縁は認めよう。だが、大変なのはこれからだ。これで君も晴れてエージェントの一員だ。大学在学中は任務をセーブしてやるが、手を抜くことは許さん。まあ、卒業出来なくならない程度には励んでくれたまえ。それと――カンナとのことを許しはしたが、さすがにまだ"おじいちゃん"にはなりたくないからな。そこだけは肝に命じておくことだ』


 ──しっかりと、釘を刺されてしまった。だが、これで堂々とカンナとイチャつける、ってもんだ。澪音はそれでも嫌がらせをして来るだろうが(面白がって)はね除けて見せるさ。

 いつの間にか、カンナも途中から留守電を盗み聞きしていたらしく。複雑そうに、俺のスマホと顔を交互に見つめている。


「……だとよ?」

「パパ、公認?」

「将来の息子、らしいからなぁ。逆に別れることにでもなれば、確実に俺はあの世行きだろ」


 笑いながらカンナの頭をポンポン叩くと、すかさず脛の辺りを蹴り返された。……地味に痛ぇんだけど。






 俺が晴れてエージェントとなった、あの夏から早数年。


「しっかし……夏が来る度に日本で同窓会ってのも何だかなァ」

「えー? 私は毎年みんなと会えて、めっちゃ嬉しいよ!!」


 どうやら、夏休みに同窓会をするのが習慣になってしまったようで。何処で任務をこなしていようとも、同窓会にはカンナと2人で日本に行くのが決まりになった。


「春に集まったばっかじゃねーか」

「あの時は結婚式だったから、バタバタしてゆっくり出来なかったもん。あ、そう考えたら、これって新婚旅行みたいじゃない?」

「やっすい新婚旅行だなぁ、おい。俺にしたら、ただの里帰りだっての」


 ──この春。そろそろ孫の顔が見たいと言い出した義父の一声で、俺とカンナはアッサリと夫婦になった。


 準備にじっくり時間を掛けれる程、暇な仕事をしている訳ではない俺たちだ……職権乱用とばかりに義父のコネを使いまくり、式場まで短期間で抑え。カンナの強い希望で、日本で結婚式を挙げてしまったのだ。


 それ以来の日本な訳だから、まだ数ヶ月ぶりなのだが……嫁さんは友人たちに会うのをとても楽しみにしているらしい。


「結婚式の皺寄せで、最近仕事忙しかったからなぁ……俺はのんびりさせてもらうから、お前は友達連中とゆっくり遊んでこいよ」

「何言ってるの! せっかく日本に来たんだから、凌司とだって遊びに行きたいもん。一応、その……新婚なんだから、イチャイチャしたいかな~なんて、」


 ほんのり頬を紅く染めて、気持ち上目遣いで、トドメのデレ攻撃。


「──俺を萌え殺す気かよ、ウチの嫁さんは」

「ふぇっ? だ、ダメ?」

「バーカ。駄目な訳ねェだろ? 何処でもつき合ってやるよ」


 俺の言葉に満面の笑みを浮かべると、そのままカンナは突進してきた。


「うわっ! あっぶねェだろ、後ろがベッドじゃなきゃ後頭部強打してんぞ」

「ごめん~。だって今、すっごい抱きつきたくなったんだもん!」


 全体重がのし掛かっているはずなのだが、その重みさえ愛しく思える。うん──こういうの、幸せっていうのかもしれない。


「ね、イチャイチャしませんか、旦那さま?」

「そーだなァ。お義父さんが孫の顔見たがってることだし?」



 俺たちの夏は、まだまだ終わりそうにない──。



※オマケ。カンナパパから一方的にらかかってきた電話を早く切りたいレンちゃん先生。


『なあなあ。男と女、どっちだと思う?』

「……今からジジ馬鹿かよ、裏社会最強とも言われる男が!」

『カンナちゃんに似た可愛い女の子が一番いいんだけどな、後継者を育てるとなると男の子も捨てがたいんだよね。まあ、凌司くんに似ても可愛い子には違いないんだけどー』

「ねえ、聴いてる!? もしもーし! 俺の話、聴こえてるーっ!?」

『何だ、私はまだまだ難聴になどなっていないぞ? 若いおじいちゃんなんだからな! あ、違うか。おじいちゃんになる、だったな~いやいや、気が早すぎたかな?』

「うん、すっげー早すぎると思います、俺」

『何だ、廉太郎。もしかして羨ましいのか? お前だって、まだ遅くはないんだ。子供作ればいいじゃないか。相手にゃ不自由してないだろう?』

「なーっ!? 人のこと、超遊び人みたいに言うのやめてくんない!? 確かに独り身が居心地よくて、いい歳して嫁も貰ってないかもしんないけどね! 教え子に先越されて焦ったりもしてたけどね!」

『ほう。焦ったりしたのか。ハッハッハ! お前も歳が気になるようになったとはな』

「もういいよ。何とでも言ってよ。結局何なの、ただの自慢電話なの、コレ!? もう切っていいっ!?」

『いい訳ないでしょう! まだまだ序の口だからね。そうそう、男の子だったらさせてみたいことがあるんだけど……』

「いっそ双子産んでくんねーかなぁ、栞菜」

『おぉっ!! それは名案だな!』

「あ~余計なこと言ったか、俺……』




ありがとうございました!

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