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第二夜~変わりゆくモノ

※カンナ視点です。温い微ero描写アリ・注意!!

 何がどうして、こうなった──?


 

「ほれ、腕上げろー」

「うぇっ、でも、あのっ」

「夏祭り行くんなら浴衣着たい、つったのはてめーだろうが。自分じゃ着れねーんだから黙って着せられてろ」


 確かに、言った。このまま夕方に神社で待ち合わせだと言うから、どうせなら浴衣でも着たいなぁなんて呟いたのだ。ホントに何気なく、ポツリと。それを聞きつけた凌司が、家にお姉さんの浴衣があるからと、あれやこれやと話す間もなく再びアパートに連れてきたのだ。


「今更恥ずかしがることでもねぇだろ。素っ裸だって見てんだから」

「だから、あんたはどうしてそんなにデリカシーないのっ!! 凌……香坂にとっては、もう終わったことだろうけどっ」

「凌司、でいい」

「──へっ?」

「さっきもだったけど、別に言い直さなくてもいいっての。それこそ今更だろうが」

「うっ……そうかもしんないけど」


 自分ばっかり、意識してる気がする。凌司は飄々としてて、相変わらずのポーカーフェイスで。私ばっかりまだ未練たらたらだなんて、悔しすぎるではないか。


「よし。そのまま後ろ向いて」

「あ、はいっ」

「ん、こんなもんか。──しっかし、出るとこは出たのに相変わらず細せぇのな、カンナ」

「なっ!? セクハラっ! どこ見てんのよ、このドエロ!!」


 何でだか浴衣の着付けまで出来てしまう器用な男……それこそ、別れることになったあの日だって、こうやって浴衣を着せてもらったのだ。あれから確かに、胸は成長したかもしれない──確かにそうなんだけど! それを着付けしながら指摘するとか、どんだけアホなんだコイツ!!


「俺がエロいのなんざ今に始まったことじゃねーだろ。ってかアメリカ男にでも揉ませたのかよ? あんだけ俺が育ててやろうとヤリまくっても、貧乳のままだったじゃねーか」

「誰が揉ませるかっ! いい加減エロから離れなさいよ、あんたは!!」


 他に胸揉ませるような男作るくらいなら、こんなに未練なんてある訳がない。そんな私の心なんて、凌司は知るはずもないのだから……仕方ないのだけれど。それにしても、やっぱり酷すぎるだろう、コイツのセクハラ発言の数々は! 何でこんな男のことを忘れられないんだ、私は。嫌いにもなれないなんて、どんだけベタ惚れ?


「んー。やっぱ、しっくり来るよなー。この感覚」

「はぁ~?」


 相も変わらず、人の話なんぞ聞く耳も持たないこの男。独り言のように呟いたかと思うと、残すは帯だけになった私の躯に腕を回し、背中からそのまま抱きついてきた。


「香水臭くもねェし、落ち着く」

「──誰と比べてんのよ」

「あ? 何、妬いてんの? つき合ってた時は他の女なんかどうでも良さげだったクセに」


 それは、凌司のことを信じてたから。絶対言えないし、言ったこともなかったけど。あの頃は、愛されてるっていう自信があったから他の女なんか関係なかったのだ。


「離して」


 巻きついていた腕が、何だか不穏な動きを見せ始める。気のせいかと思っていたが、今度は指までもが明確な意思を持って肌を撫でていく。


「……なぁ、ホントに誰にもこの乳、揉ませてねーの?」

「んっ……耳元で喋んなっ。大体、そんな暇なかったもん。仕事覚えなきゃなんなかったし、あっ、ダメ、やめてっ……」


 せっかく着付けられた浴衣の裾がはだけられ、スルリと太股の際どいところまで手が入り込む。


「──見違えた。一瞬、お前だって気づかなかった。あんまり色っぽくなってっから」

「りょ、凌司っ? ……んっ、ふぁっ!?」

「やべっ──限界」

「あっっ……」


 食らいつくように吸いつく、熱い口唇。こじ開けながら強引に入り込み、絡みつく舌先。好き勝手に、躯を這い回る指先。


「りょ、ーじっ。待っ、て。息、出来な……」

「待てねぇ。──もう我慢なんか出来っかよっ」

「えっ? あっ、やっ……ダメっ、そこはっ!」


 抵抗しなきゃ、という意思に反して従順に反応していく快楽に正直な躯。触れられること自体が久しぶりなこともあり、かつて覚え込まされた感覚を呼び起こすように──敏感に一つ一つ、反応を返してしまう。


「わ、りぃ……止めらんねー」

「あっっ、やっ、何でっ!」

「まだ、全部は言えねぇんだ。こんな事しながら言うことじゃねーのは分かってんだけど──俺を信じて、身を任せてくれりゃそれでいい」


 どういう意味なんだ、とか。ただヤリたいだけなんだろ、とか。言いたいことは全部、奪われた口唇の中に吸い込まれていく。

 そもそも、どうして私たちは別れることになったんだっけ──? 言われるがままに、快楽に身を委ねるうちに意識は遠のく感覚になり。次第に過去の記憶が呼び覚まされていくのだった。



『カンナ、俺と別れてくんねェ?』


 あの日、そう切り出したのは凌司だったはずだ。なら、別れる前と同じように、もしかしたらあの頃よりも愛しいモノを見るような瞳で私を見つめるのは──一体、何で? ねぇ、我慢出来ないって、どういう意味で?


 繰り返される愛撫に溺れ、その疑問も意識と共に白く塗り潰されていくのを、うっすらと感じていた。


→next ; 第3夜~浴衣と乙女心

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