第98話『"小さなケモノの感情"』
(ああ…そうか。僕もきっと…
求めていたんだ…。
君のように純粋になる
ことを…。いつも…。いつも…
最後は切ない。でも二人だけの…
最高の時間…瞬間。
あの懐かしい…光景を…)
過去と現在の様々な感情を
愛で想いながらクロはネムコに…
異世界の猫であるノーラとイーシャに
「ありがとう…」と感謝を伝えると…
感情の雫が頬を伝って落ちる
人間として生まれ変わって、
もうこの気持ちは変わらないと思って
いた。吹っ切れていた。振り切れて
いた。…はずだった。
でも…
この世界で、幸せに暮らしたいと
思うことはとても難しいことなんだ…
望んだ結果になることは不可能に
近い…。どうあがいても…
悲しんでも…。孤独の中に沈んで
息を止めてみても…
現状は…変わらない
想うことだけでは変えられない
事実があるんだ…
それでも…僕は…
誰かの為に生きないと…
ダメなんだ
そこは…昔から変わらない
◆
次の日、クロに
『どうだった?』とセタはネムコと
共に寝た感想を聞いた
「うん。ありがとう。
よく眠れたよ…。でも……」
『でも…?なんだ?…』
「いや…。そのね…。セタは
"誰かさん"みたいに少し寝相が悪いから
そこはちょっと嫌かも…」
クロは冗談をいった
『ああ、サラ…アイツもそうだった
な…。そこは悪しき習慣"影響だ"…。
それは…。"かわりに"謝って
おく。悪かったな』
セタも冗談で返す
少しだけの沈黙のあと…
クロは「もう永遠に戻らないでいいかな?」
といった。…というより、セタに
今後のことを委ねた
セタは『ふぅん…』と息をついて
何気なく自分の髪を手にとって
サラサラと放すと…
『好きにしろ…。
ただ"永遠に"、か…
は…。
明日でも明後日も、好きなだけ
時間を使って、考えて、自分で
結論を出す。最良を見つければいい…。
まあ、長居をしてたら、その答えの
前に。恐らくサラが迎えに来るだろ
うけどな…
ま、そんなところかな?』
クロは「わかった…。そうする」
と返して。「あのさ…セタは…」
とまだ寝ているネムコのノーラと
イーシャをみて…視線を戻して
「一緒に…この子達と同じように暮らす為に
ネムコになりたいと思ったでしょ?
でも…この子はね。ノーラだけじゃない
もうひとりのイーシャも…この子達はね…
こんなことを言うのは…。なんか違う
かも知れないけど………」
『なんだ?………クロ。躊躇わないで
言ってくれ』
「けど………間違ってるかも知れない
けど………。昨夜…ネムコが光って
たんだ…。で。触れてみると……
僕の勘違い、夢の中のこと。
だったのかも、知れないけど…。
僕が昔。外からみたら、こんな感じ
でいたからなのか?………」
『…………』
「この子達はね…。本当に望んで
いたのは…。ノーラの方は特に
そうみたいだけど…。
ネムコのことを大好きなセタ…
純粋に大好きになっていたセタと…
幸せに暮らしたかっただけなんだよね…
イーシャとはだいぶ違うみたいだよ…
この子が望んだものは…
手に入らなかった…。ノーラは…
違う…かな?」
クロの問いかけに対し、
セタは黙ったまま下を向いた
「きっと…"セタも"なんだよね…
"今は"ネムコとして生きているけど…
いつか二人が戻れる日が来るといいね…」
『……………うん。そうだな』
とセタは寝台の上に横になり、
ノーラとイーシャを撫でる…
撫で終わり…天井を見上げる
『ネムコと、この愚かな人間一人の…
誰もいないとしての独り言を言うと…な。
追い求めていた"モノ"は…
ネムコじゃないんだ…
ただ好きなモノを求めて、
幸せに暮らしたいと願って
いるだけだ…。私は…。
ノーラが戻って、イーシャも
戻って…。そうなれば…
何も考えずに一緒になるだけで…
充分なんだ…それで何もかも済むの
かも知れないな…』
「……伝えてみたら?
夜ね。二人が光る瞬間があるよ…
僕は偶然そのとき、二人に触れて
そう感じることができた…
きっとね。わかってくれると
思うんだ…。僕も人間に
わかって欲しかったもの…
"小さなケモノの感情"を…ね」




