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第93話『ミロハンの部屋』

 セタの胸に顔を沈めて、匂いを嗅いで

「はぁ~」と安堵の吐息をした後、


「ようは…。変な夢でも見たのね?」


 とファルは聞いた。

 セタはファルの髪を撫で、


『そんな感じで…。見知らぬ女性が…

 くっついたまま話しかけて来た…』



「隣にいる"私を"呼べばよかった

 のに…」



『うん…?

 隣には誰も居なかった…。それと…

 余計なことは何も言えない状態だった』



「………そう。でも、私は傍にいた。

 ただ…"少しだけ"離れた時間があった

 けど…。部屋の中には"変なこと"は

 何もなかったと思う」



『……その少しの時間は…

 どこにいたの?』



「…………ちょっとね。

 調べたいことがあって。

 屋敷内を回っていたの…」



『彼は…。ミロハンか…ここの

 従者には、見つからなかった?』



「…いいえ。不思議なことに

 誰にも見つからなかった…」



『ん…?誰にも…。誰も…

 居ない?』



「この屋敷の主人である、ミロハンも

 従者も…この階層には、泊まって

 いない感じ、気配が無かった…。

 多分、"下"に居るのよ…」



『下…?"地下の部屋"ってこと?

 確かに彼の両親は地下に籠もって

 いると言っていたけど…』



「"籠もる"のは別に構わないけど…

 大切なお客さん、婚約予定の人間に

 挨拶もしないで…。

 昨日は、一切出てこなかった。

 "おかしい"と思わない?」



『まあ…。でも、彼は、酷く不調で、

 気分が優れないから…と、理由を淡々と

 言っていた。

 もしかして、…アレは、嘘?』



「それを確かめる為に、探していたのよ」



『……あったの?部屋は?』



「…無かった。ただ玄関、台所らしき

 場所の勝手口から出ようと扉に近づくと…

 彼の従者が外で見張っているのが

 気配と物音から、わかった…


 守り、というより。中の人間を絶対に

 逃さないようにしている。

 …そんな感じね」



『………一人で食事を摂るのが

 彼の日常らしいから…。きっと

 いつも一人なのね…彼は…』



「………う~ん。それは…

 どうかしら?…昨夜の食事の

 際の"お話し"…覚えてる?」



『……うん。何となく…最後が

 アレだったから、

 あまり思い出したくない

 やり取り、内容だったけど…』 



「……彼が執着している対象(モノ)

 暗闇の中にある灯火として、

 私には、よく見えていたわ…」



『…………』



「さあて…。セタ"様"?

 この後、どうします?」



『どうするって…。余計な

 ことをするか、しないか…

 その選択なのだと思うけど…』



「うん…それで?」



『地下を…。彼の両親に…

 挨拶してみようかな…』



「うん…で。彼、ミロハンには

 …内緒で?」



『…………そこは、迷うけど。

 何だか、正直に教えてくれそう

 もないし…。

 ここまで…この村まで来てしまった

 ら…。もう、やるしかないよね…。


 余計なコト…

 "おせっかい"を…

 気になることがあるし…』



「……そう。わかった。

 察してあげるなら、黙って

 勝手に動いてみましょう…

 という作戦ね。


 親愛なる、セタ"様"に…。

 この私は、死ぬまで永遠に

 従います」




 ◆



 

 ミロハンの屋敷は、食事をする為の

 広間を中心にして、四方に廊下が繋がり、

 それぞれ、玄関、台所、主人の部屋

 客室とわかれている


 その客室…セタとファルが泊まっていた

 部屋を出ると、廊下には他に三つ扉があり、

 突き当りの奥には厠があった


『………部屋を一つ一つみていく?』



「……部屋は、鍵が閉まっている

 から無理よ。彼の部屋も、夜は

 閉まっていた…。中から物音や気配が

 無かったから…怪しいのはその部屋

 なのだけど…。鍵を開けるのは

 "私には"無理ね…」



『そう。………でも、ここの(あるじ)の部屋の

 鍵であれば、従者の誰かが万が一の為に

 持っていると思うけど』



「………うん。それはわかってるけど。

 私達がなんて言って、その鍵を貸して

 もらうの?」



『……理由。ね…』



「そう。理由……」


 セタとファルがその理由を考えていると…

 広間の方から、いい匂いがしてきた



「…この匂い、さらに奥

 …台所かな?」とファルがいうと、


 セタは『そうみたい…。ひとまず、

 行ってみる?』と返す



 ファルは「……そうね。でも、

 ちょっと待ってね…。考える…」


 ファルは一拍を置いて、


「…………うん。じゃあ、こうしよう。

 先に私が台所まで行って、確認をする…

 その後に、セタは広間から彼の

 部屋に入って。私は、そこにいる

 人間を、自分の部屋に戻らないように、

 足止めをするから」



『彼の部屋?…ミロハンの?…』



「うん。そうよ。

 …私の感が正しければ…だけど。


 台所にいるのは、従者ではなく、

 主人の方。…ミロハン。彼が居て、

 朝食の仕込みをしていると思う」



『………従者ではない?』



「うん…。昨夜の食事も彼が一人で

 運んできた…。従者が前もって

 作っていた可能性はあるけど…


 ここに着いてから、彼は食事までの

 間、ずっと席を外していた…


 それと、彼は特に、この村の

 "お肉"については、こだわりがある


 …その食べ方についても、流儀を

 持っていると、自分で誇らしく

 語っていた…。


 調理法も、こだわるなら…。彼が

 一人で行っている可能性が高い…」



『…わかった。でも、鍵が閉まって

 いたら…。彼の部屋には入れない…』



「…………その場合は、"何とか"

 して…。私は、彼の性格からして…

 扉が"僅かに"開いている…

 そんな気がするけどね…」


 セタはファルの言っている予測(コト)

 少なからずの疑問を持った…


 そんなセタを置いてけぼりに

 するように


「それじゃ…行ってきます。

 可能な限り、引き伸ばすので

 よろしくね♪」


 そう言うと、ファルは杖を片手に

 持ちながら壁伝い歩いていく


 そのまま広間を抜けて、よい匂いのする

 台所まで向かうと…

 ファルは開けっ放しになっている扉の

 出入り口から入る直前にセタに

 杖を僅かに掲げて合図をする


 ファルの後ろから、距離をあけて

 ついて歩いていたセタは…広間から

 ミロハンの部屋に向かった

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