第84話『抜け殻の運命に…告白を』
『頼む…!!!私を…。この憐れな
ニンゲン。取り残された存在の私を…
ノーラやイーシャのように…
"同じように"…してくれ!
頼むから…私も同じ世界に
連れて行ってくれ…
私もネムコになりたい!!!
どうしても…今のままでは
ダメなんだ…!
人間としての…非情な現実が
待っているんだ…!!!
頼む!!!
お願いだ!!!』
・・・
何とも言えない徒労感を、
"諦めの境地"と共に表情に
浮かべながら…
揺り椅子に腰を掛け、脱力しきった
体をダランと預けている状態のセタは…
手にナイフを持ち、本棚の頭に突き刺し、
歯ぎしりをして必死で懇願していた
"先程の自分"を思い出す…
("必死だった自分"は…今ここで
こうして無惨に死んでいるんだよ…
生きているクセに死んでいる
そんな心地だよ…)
だが、ここで、こうしている
"無様な自分"に対して…
外にいるであろう存在…。ノーラと
イーシャ…そしてディルベットは、
私のことを心配し、いつまでも
どこまでも、果てしなく、寄り添って
くれるのだろう…
その自分だけに与えられている、
予想される安堵の気持ちから…セタは、
フッと息を吐いて、
『なぁ…。ユーレイさん…』
と声を掛けた
シャーマンの女性の幽霊は、
セタの一部始終をみていた…
セタは彼女にあえてそれを
許した
彼女は、真実を知っている唯一の
存在だったからだ…
(なんですか?…セタ)
『やはり、無理だった…。
失敗したよ…。どうすればいい?
と、さっき独り言をオマエに
聞こえるように吐いたが…
答えはどこかに無いのだろうか?』
(……………言うべきか。
悩んでいたことがあります)
『…うん。それは、何だ?』
(答えになるかは、わからない…
そしてその真実も、わからない
ただの勘違いかもしれない…
それでも良いのなら…
伝えますけど………
どうします?)
『………そうだな。出来れば
教えてほしいな…。もう
私には何も出来ない……
ネムコになることも…。
自分が別の何かになることも…
あとは抜け殻の日々…
運命の通りにコトが進んで、
コトが決まるだけだ…。望んで
いようがいまいが、
そうなるのだろう…』
(…………セタは、ネムコではなく
ただの人間と…
婚約をするのですね?)
『ああ…。そうだ…。私は
ネムコではないからな…
ネムコとは結婚出来ない…
もう夢は破れた…
もう運命は、"人間側"として、
決まってしまった…
私は婚約をする…。別の村の主の
男だ…。まだ会ったことは
無いが、親父殿いわく、
どこまでも真面目で、
"マシな"人間らしい…
この村で暮らし、小さな動物を
一緒に飼うことを約束してくれた…
お前を狙っていたあの兄や
変態の弟ではない…』
兄は、シャーマンの幽霊に
恋をして失恋をしたダリス
変態の弟はセタを強引に
抱きしめてサラにボコボコに
されたドリスのことだ…
二人は隣の村の主の息子で、
兄の方はセタとの縁談相手となって
いたが双方にその気は無く、延期の
末、流れてしまっていた
(受け入れる、というヤツでしょうか?
…何とも、味気ない…
貴女らしくない、
セタらしくない…"安っぽい"
運命ですね)
『何とでも言ってくれ…
このまま…人間であり続けるのならば、
悪あがきをするような年齢でも
無いだろう…。もうとっくに
成人は過ぎているのだから…
身を固めるのが、この村の主の
娘の、"最低限"の役割だ…』
(はぁ…。そうですか…。
まあ…。そこまで言うのなら、
知ったことでは無いですね…。
この村とも、オサラバしよう
かと思います)
『……大好きな"ネムコ"が
いるのにか?』
(はい…。ネムコがいても、
以前の貴女はもういません)
『…"以前"に拘る理由が
あるのか?』
(ありますよ…。セタが好きだから
…。貴女が好きだから、
この村に居るのですよ…。
知らなかったのですか?
鈍感過ぎますよ…)
『……………何とも言えない
な…。どう返答してよいものか
…。わからない…
現世にはいないはずの…
存在、ユーレイには…
申し訳ないが……
わからない……。
その想いは受け取る、
受け留めるが…
許してくれ…』
(許すも何も…その通り、
わからない状態でいいですよ…
それ以上のものは望んでいません
から…。では、話を戻して…
先程の答えを…"気づき"を
お伝えします…。
覚悟は、いいですか?)
セタは幽霊の念押しの言葉に
小さく深呼吸をしてから、
ゆっくりと目を開けて
『ああ…。大丈夫だ…』
と返した




