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第7話『日蝕の日。これで"サヨナラ"』


 太陽をミアとするならば…

 その太陽をみることを遮る

 役目である影は…月となるのか?


 "皆既日蝕"が始まった…


 ブルウノス村の住人の殆どは…

 表に出て、太陽が月に隠れ、先程

 まで日照に覆われていた空が暗闇

 になる様子をじっとみていた…


 セタは部屋の中でノーラと一緒に…

 その傍らには口をぽかんとあけた状態

 の少女がいて…


 一緒にいるはずの男は、「俺はそんな

 ことに別に興味は無い」と意地を張って

 少女に伝えてしまっていた為、

 隠れてこっそりと別の空いている部屋か

 らみていた


 祈祷を終えて疲れていたサラは…いつも

 のようにクロの寝台にて眠っていて

 クロが起こそうとするも、起きてくれず

 クロは「はぁ~」とため息を付きながら、

 窓を開けてその暗がりになる様子を

 みつつ、視界にちらりとサラの寝顔を捉え、


「あとで後悔しても知らないよ…

 どうして起こしてくれなかったの?

 と言っても僕は義務を果たしたの

 だから、文句は言わないでね」


 と独り言を呟いた



 一方…


 絵描きのミアは外に出て、その様子を

 目に焼き付けつつ、麻紙に描こうと

 待機していたが


 神秘的な情景に「あぁー」と感嘆の

 声を漏らし、少し見惚れてしまい…その

 木炭をとる手は動かずに止まっていた


 陽が月に侵食され、その残された縁が

 光り…灯火を宝石にした指輪のような

 状態になる


 完全に陽がのみ込まれた


 ミアは木炭を握りしめながら立ち上がる

 と…「お前もみているの…?この様子を」

 と呟いた


 何も返答は無い…

 ミアはわかっていた


「一緒にみているんだよね…?」


「…………」


「一緒に見ようよ…。それでいいじゃない

 …。ダメかな?私の大切な"影さん"」


「…………」


 やはり返答は無かった


 それでもミアは続ける…


「もし、この日食が終わっても

 そばに居たいなら、居てもいいよ…

 私の傍にいて、私の視線を永遠に

 独り占めにさせてあげる…


 それでもいいの…


 でもね。…」


 ミアは少し悟りを開いた心地になり

 ながら…。うっすら微笑みを浮かべ


「帰る場所があるのなら、そうする

 べきよ…。きっと…。その方が

 幸せになれると思うの…」


「…………」


「だから…。これで"サヨナラ"」


「…………」


 日食が終わった…。眩しい陽の光に

 村人達が手で目を遮っている中…


 ミアの視線には影が見えていた…


 その影は新たに生まれ出た陽の光を

 和らげるようにして…

 そして…。ゆっくりと消えていった…


 ミアは「ありがとう…」と感謝を伝えた


 ミアは自分だけに与えられていた不思議で

 …そして大迷惑な現象が終わるのだろうな

 …ということを感じながらも、いいようの

 ない一抹の寂しさが残っていることに、


(人間って…。不思議で…。とても素敵)


 と…。心中にてつぶやき、自然とこぼれて

 いた涙を指先にて確かめ…「うん…」

 と一人納得してから、一息ついて

「んん~」と背伸びをしてから座り込み、

 木炭を持つ手を動かした


 ファルは思うところあってミアに

 ついて歩いていた


 そしてミアと一定の距離を置いて

 いつものように目を瞑って立っていた


("見守る"ことは永遠に出来ないのね…

 でも…。だいたいわかった…。この子は

 セタと一緒にいる権利がある……


 クロも純粋さを自然体で纏っている存在…

 絶対に悪い人では無いと…ハッキリと

 言っていたからね…


 それを許しましょう…)


「ふんっ、私ってば、ほんっ…と。

 偉そう…。彼女に比べて、純粋さの

 一欠片も残ってない」

 

 ファルは自嘲気味にそう呟いてから、自分

 のいる部屋に戻ろうと思い、その場を音も

 なく静かに立ち去った


 本当の意味で理解し、見守っていたのは、

 シャーマンの幽霊で、彼女はミアに取り

 憑いていた影が…消えていくのを確認し、


(これでよかったのかな?)


 と幽霊としての我が身の心情と重ね合わせ

 ながら少し複雑に思いつつ、この物語が

 "ミアの物語"として、いつか絵本が完成

 するのだろうか?をなんとなく想像すると

 寂しさを感じていた心が、少し楽しくなり


(まっ…。いいでしょう)と心中呟き

 セタのいる部屋の方にふわふわと戻って

 いった


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